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陽溜まりぐ~るぐる

島流し2日目

南国なのに朝は肌寒かった。
晴天なら冷え、悪天候なら湿気で暑苦しいそうだ。
まだ暗い時刻、生活の音がゆっくりと漂っている。
島の朝は早い。

すっかり陽が昇った頃、足元から水平線まで透き通る青の景色が広がっていた。
朝と違い、眩しいほどの陽射しが熱く照りつけていた。

外の芝生で、梱包された折り畳み式自転車の開封作業に取り掛かる。
暫くして、2つの小さな影が近づいて来た。
「なにしてるの?」と、訊ねてきた。
「荷物を開けてるんだ」「なに?」「自転車だよ」「ん?」「知らないの?」「なにそれ?」
と、不思議な会話が続いた。
乗って移動するものだと説明すると、「みんなが乗ってるやつか」と納得してくれた。

2人は私の周りをぐるぐるしながら、作業を見始めた。
私が自転車を組み立てている間、2人はたまに姿を消しては、またぐるぐるまわり、隣に座って私の仕草を見たりしていた。

陽射しは強く、汗をかいていた。

組立が終わり、立ち上がる。
「終わった?」と無邪気な声。「終わったよ」と言うと、2人は笑い、私の周りをぐるぐるまわった。

私が自転車を移動してる間、2人は離れた所で土を弄っていた。
定位置に停め、玄関に戻る時、「ばいばい」と声がした。2人に手を振り、扉に手を掛ける。
その時、眩しい程の陽射しがスッと軽くなった。
振り返ると、先程までの陽射しは遠くの沖合いに移動していた。
視線を落とすと、2人が居た地面に小さな花が咲いていた。

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