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ポンポさん2・カーナちゃん感想

こんばんは、飛び亀です。

↓前回の記事↓で、ポンポさんシリーズ全般について語ったつもりでした。

が、ちょっと2作品ほど再読したところ、書き足りないなと思いました。
下の2作品です。

こちら、単行本化したポンポさんシリーズとしては、2つ目、4つ目の作品です。(「カーナちゃん」発売前に「オムニバス」が描かれていますが、まだ単行本化はしていないので)


おおよそのことは前回の記事で書いていますが、読み返すと、やっぱりポンポさん1の雰囲気に引きずられた文章だなぁと思います。
特にこの2作品については、1の空気感とは違う部分があるので、それだけ付け足したい。

ネタバレありありですのでご注意を。
今回は短めにサクッと、たぶん。

ポンポさん2について

主人公はジーンくんです。

1の主人公もメインはジーンくんなのですが、2はより明確にジーンくんの話だなと思わせます。もちろん、ポンポさんやミスティアさんをはじめ、他の人々のストーリーも交えながら、という点は変わりないですが。

ポンポさんシリーズ全体の特長として、夢を追う若者たちを描いていると前回書きました。
2もその路線ではありますが、続編としてジーンくんの夢の続きを描く中で、夢に向かうための自立に重きを置いているように思います。

1では、ポンポさんをはじめとした超頼りになる導き手たちのサポートがあって、ジーンくんやナタリーちゃんの夢がかなっていくお話でした。その暖かなユートピア感が、また感動を呼ぶのです。

一方の2でも、ジーンくんはサポートをこれでもかと受けます。
新たな仕事の紹介、失敗のフォロー、おじいちゃんとのコネ、脚本の書き方、資金、プロデュース……

ポンポさんやミスティアさんがジーンくんのためにしたことは、枚挙に暇がありません。が、それなのに2ではジーンくんが自立・独立していく印象が強い。

文字通り、シナリオ上ジーンくんがポンポさんの会社から独立するので、その影響もあるでしょう。けれど、それだけではない。
ジーンくんから動く場面が1と比べても多いのです。

冒頭でマックスストーム2監督を請け負う場面こそポンポさんの紹介ですが、監督や編集の仕事は(明るい世界に負けず)ジーンくんの意志で貫き通します

それが問題になって、ポンポさんに頭を下げさせる羽目になるわけです。

マックスストーム2の失敗を何だかんだポンポさんにフォローしてもらうわけですが、ペーターゼンの元へ行ってすぐ、ジーンくんは完全な自立を心に決めます
このことをコルベット監督は理解し、男の子だもんね、とか言い出しています。ちなみにポンポさんの方は、ジーンくんの心を本当に理解できないまま振り回されていきます。

その後、ジーンくんは自立のためにペーターゼンフィルムを辞めますが、結局ポンポさんに脚本の書き方を習ったり、お金を出してもらったりするわけです。

しかし、ここが大きなポイントです。
脚本についてもお金についても、ジーンくんは自ら頭を下げ、ポンポさんに助けを乞うています。

ジーンくんは、ポンポさんに育てられるだけの状況を抜けたのです。
ある種ポンポさんを使って、自らの成長の糧とし、作品の糧としたのです。

結果、彼はとんでもないことを成し遂げます。
ポンポさんを変えたのです。

1では完璧な導き手であったはずのポンポさんを変えた。
ニャカデミー賞よりとんでもないことをしたと言っても過言ではありません。


ポンポさんの変化については、ジーンくんの自立と並んで2のテーマになっていると思います。

そもそも、2では比較的序盤からポンポさんの役割、立ち位置が若干1とは変わっています。
1では本当に(お子様なこと以外)弱点もなく導き手としては完璧な立場にいました。ところが、2ではジーンくんのやらかし(マックスストーム2)あたりから雲行きが変わります。

ポンポさんは、人生で初めて(?)他人に頭を下げることになります。

その後も、ジーンくんの自立心をいまいち理解しきれず、キレ散らかしながらジーンくんに振り回されていきます

また、1で銀幕の申し子と言われたポンポさんに、映画に関する意外な「欠け」ポイントのあることが発覚します。端的に言えば、純粋に映画を見て感動したことがないということ。

ただまあ、幼少期から訓練されてきた作り手(映画人)としては「あるあるな話」だとして、ポンポさん本人はネガティブに感じていません。それがポンポさんらしさというか、このあたりの安定した強さは変わりない。

「まあ天才の孤独ってやつよね、ウヒヒヒヒヒ」
――ポンポさん

この一言がポンポさんの安定したキャラ性を形作っています。

では、結局何が変わったかというと、シンプルに純粋に映画を見て感動したのでした。ジーンくんのおかげで。


こういうピンポイントな人物の変化は、ポンポさんシリーズの特長かもしれません。読んでいって、大きくキャライメージが変わるってことがないのです。

キャラ性は大きく変わらないながら、ジーンくんは成長し、夢を叶え、ポンポさんを変えるまでの男になる。
最強プロデューサーでポジティブなお子様のままでありながら、ポンポさんは映画の楽しみを知る。

前回の記事で書いた等身大につながるとも思いますが、キャラの安定感を保ちつつ、若者の成長と夢を叶える過程を描いている作品。このバランス感がポンポさんシリーズの本当に良い点だと思っています。

うわぁ、ジーンくんクズだなぁ……
と思いつつ、それでも成功しているのを見て、我々は勇気をもらうのです。

「映画監督なんて人間として全部間違っていても良い映画を撮れるという一点において正しければそれでいいんじゃ」
――ペーターゼンさん

マジかよ、と思いつつ、ジーンくんを見て納得してしまいますね。


ただ、そんなジーンくんがあんなに優しい映画をつくれるっていうのは、意外と言えば意外ですね。あれだけ社会を捨てておきながら、彼の内面はピカピカというかキレイというか。すごいですね、映画が彼を育てたんだ。
実際、彼は人のことバカにしたりしないしね。優しい男。

また、ジーンくんはポンポさんを使うまでになったと先述しました。
しかしマックスストーム2を90分にしたり、Love Begets Loveにポンポさんの好みを意識して入れていたりと、実際にはポンポさん愛に溢れているのがかわいいところ。
ポンポさん側もジーンくんにブチ切れながら、ジーンくんに合わせた指導をしたりと、互いに信頼のあるやり取りが素敵ですね。

あとやっぱり。

「もし君の映画がつまらなかったら?」
「…………。そんな事はあり得ません」
――ポンポさん・ジーンくん

カッコ良すぎる。

全体的に2は話の展開が一本道じゃなくて、ワクワクするって感想です。

あとナタリーの新しい夢、いつか描かれるのでしょうか。楽しみ。

カーナちゃんについて

カーナちゃんについては、正直に言ってすごく感動しました

前回の記事でカーナちゃん本人について色々書きました。
明確に努力型として描かれながら、結局彼女が一番天才なんじゃないかとか。あとはカーナちゃんという作品が割に闇寄りだとか。

諸々書きましたが、そういうのは置いといて。
たぶん1を初めて読んだときと同等レベルの感動がカーナちゃんにはあります。個人の感想です。

これはもうほんとに、カーナちゃんという主役のぶつかる困難と、それと戦い続ける彼女の姿勢が作品通してずっと描かれているからに他なりません。


カーナちゃんは、自分の才能について自覚し、それについてそこそこ悩みを抱えている状態で話がスタートします。そして、そのまま最後まで進みます。(それが作品全体の闇寄り感の所以かしら)

主人公サイドとしては、ポンポさんシリーズで初の立ち位置です。
ジーンもナタリーもフランも、自分の才能については当初はあまり自覚がありませんでしたし、失敗しても何というか、きっちり凹んですぐ戻ってくるような人たちです。

一方のカーナちゃんは、だいぶ筋金入りのひねくれ方をしているので、問題を抱えたまま、凹んでいるのにそれを見せないまま爆走します。

映画作りから関わって、仲間を得て、少しずつ救われていくように見えたカーナちゃんですが、抱えたままだった問題は最後に爆発します。

それでも、女優とは思えない形相で乗り越えていくカーナちゃん。

前作「フランちゃん」で明白にモブだったカーナちゃんが、そうした努力を重ねて重ねて、クライマックスで1つの星になって輝く。


心に訴えかけてきます。泣けます。


SFだとか、まあデュラントくんも面白い奴なのですが。
やっぱりシンプルにカーナちゃんの視点で話を読むと、目標があって変わりたい、自分でなんとかしなきゃと思い立って、主役として目覚めたカーナちゃんの努力で全てが進んでいきます。2のジーンくんに近いかな。

でも、2のようなワクワク感よりは、ポンポさんシリーズで唯一かな、ハラハラ感で話が進む印象があります。カーナちゃん自身が鬼気迫る勢いで話を進めるので常に心配が先立ちます。

「でも……もういいんです。カーナの体なんてどうでもいいんです。この世の全てが知ったこっちゃないです」
「大事なのは…次のシーンを完璧に演じる事、だけです…」
――カーナちゃん

この子は、なんだかんだミスティアさんに近いタイプなのかもしれませんね。ミスティアさんはどう見ても感性型に見えますが、元はこういう努力型だったのかも。
もちろん努力の末、カーナちゃんにセンスが宿ったってのもあります。

とにかく、そんなハラハラさせられるからこそ、カーナちゃんが最後のシーンを迎える時に、こちらも一緒に泣きそうになるというか。

「最後のシーン、最後のセリフ。撮影が終わってしまう……」
「みんなでアイデアを出しながら脚本作ったの楽しかったな…」
「これでジレーネを演じる事ももう無くなるんだ。さみしいな……」
――カーナちゃん

この続きは、改めて原作で。
というか、ここの合間に入るポンポさんの語りも相まって、ポンポさんシリーズの中でもクライマックス感はすごい。

あれだけ死にものぐるいで機械的な演技をやってたのに、カーナちゃんに映画作りに対するこういう感情が宿ってたってのも優しくて好き。それが、スター女優としてのポイントの1つでもあるのでしょう。

目標であるフランちゃんが輝き続ける限り、カーナちゃんも引き続き自らの輝きを求めていくでしょう。彼女の今後も気になるところです。


でもナタリーちゃんの今後がやっぱり気になる。

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