![マガジンのカバー画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/144213682/f4b2b98fb5b0ec1b3f2ed9c49467267f.jpg?width=800)
(非公式) なんのはなしですか サイドストーリー。noteの路地裏に迷い込んだら🐍に出会ってしまいまして、蛇のはなしを綴っています。とりあえず勢いでかいたものは一旦ここに保管。つ…
- 運営しているクリエイター
#あるヘビのお話
はじまりの物語 ⑳井戸
冷たい水は気持ちが良かった
一葉も手ぬぐいを濡らしてきれいに身を清めた
社に入り今度は膳の用意をする
朝と夕だけの質素な食事だ
御仏の御蔭いただきます
一葉の声に達吉も一緒に合掌する
少しばかりのあわやひえ、裏で取れた草を混ぜて
かゆにしたものを丁寧に箸をつかって食べた
丁寧な所作である
望めば先程の道風のようにもなれたであろうに
出自のせいか それとも自ら選んだ道か
膳を下げると
一葉
はじまりの物語 ⑲ 水脈
旅 とはなんだ
”京で少し用事を済ませたら
東の方へ旅に出たいのだ”
一葉のコトバを反芻する
京の街
そうだ かの者と過ごしたあの裏通り
今はどんな様子なのだ
見に行こう いや見てほしいんだ
一葉は真剣な顔で蛇に向かっていった
その時、道風もあわてた様に声を出した
おおっと もう参内の時間だ
また来る、首尾よく行きそうか また教えてくれ
また窮屈そうに身をかがめて戸口をでると
ジャリジ
はじまりの物語 ⑱ 神鹿の杖
龍 りゅう
それがこの姿絵の中の我の名前か
近頃、水辺に訪れた者たちが不思議に
気分が軽くなるという噂が聞こえてきてね
魑魅魍魎の類なら直ちに成敗との沙汰をきいて
あの父から伝えきいた人の『重い』を汲み取る
ヘビに違いない、
そういって同行させてもらったんだ
こうみえて道風はいまや朝廷の神護院のホープだからね
あの夜の君
その身をよじりながらも
隆々と月に向かって立ち昇る姿
これ以上ない
はじまりの物語 ⑯ 薬
一方、もう一人の祖父は典薬寮で学んだあと
宮中に医術を施しに参内しつつも
相変わらず裏通りの医師(くすし)として
衆生とともに過ごしていた
父は、母との縁があったとき
境内に住まいを設け薬房も任されるようになった
色々な薬草の芳香が入り混じる
一葉は薬房に入るのもその香りを嗅ぐのも
嫌いではなかった
生来の好奇心も手伝って色や形、匂いで
薬の効能やその作り方を理解するのに
そう時間はかからなかっ