マガジンのカバー画像

はじまりの物語 第1稿

24
(非公式) なんのはなしですか サイドストーリー。noteの路地裏に迷い込んだら🐍に出会ってしまいまして、蛇のはなしを綴っています。とりあえず勢いでかいたものは一旦ここに保管。つ…
運営しているクリエイター

#あるヘビのお話

はじまりの物語 ⑳井戸

はじまりの物語 ⑳井戸

冷たい水は気持ちが良かった
一葉も手ぬぐいを濡らしてきれいに身を清めた

社に入り今度は膳の用意をする
朝と夕だけの質素な食事だ

御仏の御蔭いただきます
一葉の声に達吉も一緒に合掌する

少しばかりのあわやひえ、裏で取れた草を混ぜて
かゆにしたものを丁寧に箸をつかって食べた

丁寧な所作である
望めば先程の道風のようにもなれたであろうに
出自のせいか それとも自ら選んだ道か

膳を下げると
一葉

もっとみる
はじまりの物語 ⑲ 水脈

はじまりの物語 ⑲ 水脈

旅 とはなんだ

”京で少し用事を済ませたら
 東の方へ旅に出たいのだ”

一葉のコトバを反芻する
京の街
そうだ かの者と過ごしたあの裏通り
今はどんな様子なのだ

見に行こう いや見てほしいんだ
一葉は真剣な顔で蛇に向かっていった

その時、道風もあわてた様に声を出した
おおっと もう参内の時間だ
また来る、首尾よく行きそうか また教えてくれ

また窮屈そうに身をかがめて戸口をでると
ジャリジ

もっとみる
はじまりの物語 ⑱ 神鹿の杖

はじまりの物語 ⑱ 神鹿の杖

龍 りゅう

それがこの姿絵の中の我の名前か

近頃、水辺に訪れた者たちが不思議に
気分が軽くなるという噂が聞こえてきてね

魑魅魍魎の類なら直ちに成敗との沙汰をきいて
あの父から伝えきいた人の『重い』を汲み取る
ヘビに違いない、
そういって同行させてもらったんだ
こうみえて道風はいまや朝廷の神護院のホープだからね

あの夜の君
その身をよじりながらも
隆々と月に向かって立ち昇る姿

これ以上ない

もっとみる
はじまりの物語 ⑯ 薬

はじまりの物語 ⑯ 薬

一方、もう一人の祖父は典薬寮で学んだあと
宮中に医術を施しに参内しつつも
相変わらず裏通りの医師(くすし)として
衆生とともに過ごしていた

父は、母との縁があったとき
境内に住まいを設け薬房も任されるようになった
色々な薬草の芳香が入り混じる
一葉は薬房に入るのもその香りを嗅ぐのも
嫌いではなかった
生来の好奇心も手伝って色や形、匂いで
薬の効能やその作り方を理解するのに
そう時間はかからなかっ

もっとみる