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メイキング|「Re:tune」リメイク #27 推敲:再推敲①

3.5 再推敲

 さて、最後に本の形にしたときに配置や文字の切れ方に違和感がないかをチェックします。今回利用するのは創作おTipsさんが公開している「文庫A6ぬりたしなしテンプレver2-1」です。デフォルトの設定では41字×16行ですが、個人的な読みやすさを見て42字×15行で読んでいきます。本文を流し込み、細部をチェックしていきます。改めて表現も調整していきましょう。英数字については全角に、記号類も縦書きに対応させます。


校舎からは生徒達の気配が薄れ、音楽室から吹奏楽部の演奏が鳴り止む頃。運動部はグラウンド整備を始め、今日のプレーを自慢しあっていた。
 そんな遠くの声が、どこか別世界のことのように思える。

【推敲前】

 ここは改行するほどのタメは必要なさそうなので繋げます。

 校舎からは生徒達の気配が薄れ、音楽室から吹奏楽部の演奏が鳴り止む頃。運動部はグラウンド整備を始め、今日のプレーを自慢しあっていた。そんな遠くの声が、どこか別世界のことのように思える。

【推敲後】


──まるで僕らが取り残されてるみたいだ。

【推敲前】

 い抜き言葉になっているので修正します。

 ──まるで僕らが取り残されているみたいだ。

【推敲後】


「えっと、その。明日提出するプリント、忘れちゃって……」
 はは、と乾いた笑いを出しながら、足早に自分の机に向かう。
 目当ての紙を手にすると、踵を返して教室の出口へと足を踏み出した。

【推敲前】

 「乾いた笑い」という表現とその言葉の使い方が不適当かもしれません。「曖昧に笑いながら」に変えましょう。
 その後の文章についても調整します。自分で行動を決定しているので、「向かった」の方がいいかもしれません。続く文章でも「紙を手にし、」にした方が主観的になりますね。ただ、その後の行動を[彼女]によってキャンセルされるため、「足を踏み出す」に変えた方がいいかもしれませんね。

「えっと、その。明日提出するプリント、忘れちゃって……」
 はは、と曖昧に笑いながら、足早に自分の机に向かった。
 目当ての紙を手にし、踵を返して教室の出口へと足を踏み出す。

【推敲後】


「でも、その……。キミが見てない部分を僕が見ていたら、それは存在することにならないかな」

【推敲前】

 「……」があると文が長くなってしまうので削ります。

「でも、その。キミが見てない部分を僕が見ていたら、それは存在することにならないかな」

【推敲後】


「僕だけじゃなくて、キミと一緒によくいるクラスメイトたちが見ている視界を重ねていけば、ひとつの大きな世界にならないかな」

【推敲前】

 続くセリフでも「〜にならないかな」というフレーズがあり重複してしまうので、「〜になるんじゃないかな」に直します。

「僕だけじゃなくて、キミと一緒によくいるクラスメイトたちが見ている視界を重ねていけば、ひとつの大きな世界になるんじゃないかな」

【推敲後】


 そんな笑い方もするんだ、と驚いていると、彼女はおもむろに立ち上がる。教卓の中からチョークを取り出し、黒板に向かった。かつ、こつ、と文字が浮かぶたびに白い欠片が落ちていく。

【推敲前】

 文章の流れが変なので、「立ち上がった」にしましょう。それに合わせて「向かう」に直します。その後も文末を「落ちていった」に変えましょう。また、2文目の句点はリズムを良くするために「て」に変えましょう。

 そんな笑い方もするんだ、と驚いていると、彼女はおもむろに立ち上がった。教卓の中からチョークを取り出して黒板に向かう。かつ、こつ、と文字が浮かぶたびに白い欠片が落ちていった。

【推敲後】


 衝いて出た言葉に彼女の顔が明るくなった。恥ずかしくて顔が熱くなるのが分かる。

【推敲前】

 ここは現在進行形で変化しているので、「恥ずかしくなって」の方が正確かもしれませんね。

 衝いて出た言葉に彼女の顔が明るくなった。恥ずかしくなって顔が熱くなるのが分かる。

【推敲後】


 色を使い分けながら、先ほどと同じような円を重ねている。数学の時にやった集合の図みたいだった。

【推敲前】

 文字の送り方で読みにくくなっているので、「集合の図のようだった」にしてもいいかもしれません。「の」が重なるのが少し気になりますが。

 色を使い分けながら、先ほどと同じような円を重ねている。数学の時にやった集合の図のようだった。

【推敲後】


「私はね、より正確な、純度の高い世界、という視点で考えるなら、この3人で重なってるところが正しい世界なのかな、って思う。私の世界は認識できる範囲だけど、その中でもひときわ確からしいのはここ」

【推敲前】

 「ひときわ確からしい」という表現はあまり見ないので「最も確からしい」に変更しましょう。それに合わせて「その中でも」を「その中で」に変えて「も」が続かないようにします。

「私はね、より正確な、純度の高い世界、という視点で考えるなら、この3人で重なってるところが正しい世界なのかな、って思う。私の世界は認識できる範囲だけど、その中で最も確からしいのはここ」

【推敲後】


でも、僕に考えられる世界のこととはなにかが違っていた。

【推敲前】

 ここはひらがなである必要はなさそうなので、一部漢字に直します。

でも、僕に考えられる世界のこととは何かが違っていた。

【推敲後】


 そろそろ帰らないと。
 席を立ち、自分の机へと向かう。置きっぱなしだったプリントを手に取り、彼女の方へと向き直った。
「そろそろ、帰ろうと思うんだけど……」

【推敲前】

 近い位置で「そろそろ」が被っていたので「もう帰らないと」に変えます。

 もう帰らないと。
 席を立ち、自分の机へと向かう。置きっぱなしだったプリントを手に取り、彼女の方へと向き直った。
「そろそろ、帰ろうと思うんだけど……」

【推敲後】


 いつもは足速に通る廊下をゆっくりと歩いた。この特別な時間を終わらせたくない。

【推敲前】

 「足速に」だと結構スピード出てそうなので「足早に」へ変えた方がいいかもしれません。他の部分もすべて「足早に」なので、それに合わせます。

 いつもは足早に通る廊下をゆっくりと歩いた。この特別な時間を終わらせたくない。

【推敲後】


僕のことを見てくれるかな、とも期待したが、全くそのそぶりもなかった。

【推敲前】

 ひらがなである必要はなさそうなので漢字に直します。

 僕のことを見てくれるかな、とも期待したが、全くその素振りもなかった。

【推敲後】


 いつ行こうか。そんなことを考えながら、その日は過ごした。
 放課後になり、それぞれが部活や勉強で教室を出ていく中、僕は彼女の動向を探っていた。

【推敲前】

 ここは一行空けたほうが時間の経過がわかりやすいかもしれないですね。

 いつ行こうか。そんなことを考えながら、その日は過ごした。

 放課後になり、それぞれが部活や勉強で教室を出ていく中、僕は彼女の動向を探っていた。

【推敲後】


 半開きになった扉に手をかけ、ゆっくりと中に入る。ドアを閉めると、ちりん、と鈴が鳴った。

【推敲前】

 一文字浮くのが気になるので、文を少しだけ長くします。「小さく鈴が鳴った」としましょう。

 半開きになった扉に手をかけ、ゆっくりと中に入る。ドアを閉めると、ちりん、と小さく鈴が鳴った。

【推敲後】


 とはいえ初めての場所で緊張していたのだけれど、他の人に邪魔されずすごせるのは想定していなかった。少しだけ心が緩んでしまう。

【推敲前】

 ひらがなである必要はなさそうなので漢字に戻して「過ごせるのは」としましょう。

 とはいえ初めての場所で緊張していたのだけれど、他の人に邪魔されず過ごせるのは想定していなかった。少しだけ心が緩んでしまう。

【推敲後】

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