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メイキング|「Re:tune」リメイク #28 推敲:再推敲②

 お店の中は穏やかな時間が流れていた。大通りの喧騒も遠く、スピーカーから流れるクラシックも静か。コーヒーの香りとキッチンから漂う洋菓子の匂いで満たされていて、とても居心地が良かった。

【推敲前】

 「コーヒーの香り」という言葉が近くにあるのと、居心地がよく気が緩んでる描写は同じシーンで描いてるので、後半はカットしてもいいでしょう。

 お店の中は穏やかな時間が流れていた。大通りの喧騒も遠く、スピーカーから流れるクラシックも静か。

【推敲後】


 それは僕もそう思う。昨日の話もそうだったけど、哲学的というか、見てる世界が違うような感じさえする。

【推敲前】

 語尾がふたつ連続で同じ形になってしまうのと、「それ」「そう」と似た指示語が近いので書き方を「僕も思った」に変えましょう。

 それは僕も思った。昨日の話もそうだったけど、哲学的というか、見てる世界が違うような感じさえする。

【推敲後】


 ちょっと待ってて、と彼はいったん店に戻った。少し待つと電気が消え、着替えをすませたマスターが出てくる。看板をしまい、扉に鍵をかけてこちらに向き直った。

【推敲前】

 「ちょっと待ってて」に対して「少し待つと」と繋げると「そりゃ待ってたもんね」って感じになるので「少しすると」に変更して時間が経過していることを表現します。

 ちょっと待ってて、と彼はいったん店に戻った。少しすると電気が消え、着替えをすませたマスターが出てくる。看板をしまい、扉に鍵をかけてこちらに向き直った。

【推敲後】


 何かを言わなくてはと思って口を開くも、なにも具体的な言葉は出てこなかった。中途半端話な言葉だけを連ね、謝ることしかできない。

【推敲前】

 直前で「何も」という言葉を使っているので、ここの「なにも」は消したほうがいいかもしれないですね。

 何かを言わなくてはと思って口を開くも、具体的な言葉は出てこなかった。中途半端話な言葉だけを連ね、謝ることしかできない。

【推敲後】


「世界は自分に見えるところにしかないんだって」
 聴き慣れた声が、忘れるはずのない言葉が聞こえた気がした。

【推敲前】

 [彼女]の大切なセリフについては、前後を1行ずつ空けて強調してもいいかとしれませんね。それから、その後の描写として「聴き慣れた声」とありますが、ちゃんと話して彼女の声を聞いているのは数日前のことなので「慣れて」はいませんよね。「覚えがある」程度にとどめておきます。


「世界は自分に見えるところにしかないんだって」

 聞き覚えのある声が、忘れるはずのない言葉が聞こえた気がした。

【推敲後】


 昨日見た夢も気になる。いくら自分の中で考えを整理したかったとはいえ、あそこまで忠実に再現されるのも不思議だった。
「(でも、僕が知ってる結末じゃなかった)」
 彼女が教室で問いかけるところまでは同じだった。その後黒い影は立ち去り、彼女だけが残る。

【推敲前】

 直前に「でも、」を使っているため、重複しないように「あれは」に変更します。

 昨日見た夢も気になる。いくら自分の中で考えを整理したかったとはいえ、あそこまで忠実に再現されるのも不思議だった。
「(あれは僕が知ってる結末じゃなかった)」
 彼女が教室で問いかけるところまでは同じだった。その後黒い影は立ち去り、彼女だけが残る。

【推敲後】


 あれは、僕たちが話をしなかったという可能性だったのかもしれない。彼女の得た孤独感を他者に共有できなかったら。その結果は見ることができなかったけど、彼女はおそらく1人になってしまっただろう。表面上は華やかでも、内側に燻る暗い気持ちは決して消えない。

【推敲前】

 孤独の意味合いを強めるために「1人」は「独り」に変更します。

 あれは、僕たちが話をしなかったという可能性だったのかもしれない。彼女の得た孤独感を他者に共有できなかったら。その結果は見ることができなかったけど、彼女はおそらく独りになってしまっただろう。表面上は華やかでも、内側に燻る暗い気持ちは決して消えない。

【推敲後】


 表彰されたこともなければ集会もあまり積極的に参加してこなかったので、その辺の事情があまりわからない。
 おそらく最後のグループがテストの成績上位者なのだろう。

【推敲前】

 改行するほどのタメは必要なさそうなので、ここは繋げます。

 表彰されたこともなければ集会もあまり積極的に参加してこなかったので、その辺の事情があまりわからない。おそらく最後のグループがテストの成績上位者なのだろう。

【推敲後】


 駅まで歩いてを通り過ぎ、誰もいない通学路を歩く。思ったほど人通りはなく、怪しまれることもなかった。

【推敲前】

 どこを通り過ぎたのかが書かれていないため、「構内を」を追加します。おそらく何かの操作ミスにより消えてしまったのでしょう。

 駅まで歩いて構内をを通り過ぎ、誰もいない通学路を歩く。思ったほど人通りはなく、怪しまれることもなかった。

【推敲後】


 彼女の見た夢、僕が彼女と話をするという内容だったけど、僕がこの前見た夢の逆パターンのような気がする。ここまで夢の内容が似か寄るのも変な話だけれど、とはいえ僕の方は経験した出来事を再現しただけだから、彼女とは事情が違う。

【推敲前】

 言葉としては「似通う」が正しいようなので直します。

 彼女の見た夢、僕が彼女と話をするという内容だったけど、僕がこの前見た夢の逆パターンのような気がする。ここまで夢の内容が似通うのも変な話だけれど、とはいえ僕の方は経験した出来事を再現しただけだから、彼女とは事情が違う。

【推敲後】


「どこまでが私の世界なのか、っていうこと?」
「そうなのかな。そうなのかも。きみがここから出られなくて、他の人の声も聞こえないんなら、ここはきっときみの世界だろうし」
 そうだね、と彼女は呟く。少し考えてから言葉を続けた。
「でもきっとそれは違うかな」

【推敲前】

 「きっと」という言葉を2人とも似たタイミングで使用しているので、[僕]のほうを「多分」に変えます。

「どこまでが私の世界なのか、っていうこと?」
「そうなのかな。そうなのかも。きみがここから出られなくて、他の人の声も聞こえないんなら、ここは多分きみの世界だろうし」
 そうだね、と彼女は呟く。少し考えてから言葉を続けた。
「でもきっとそれは違うかな」

【推敲後】


 気になった点は以上となります。ページ数としては80ページ前後と、ややボリュームが出てしまいましたね。1ページあたりの文字数が少なめだからでしょう。
 全体の推敲が終わりましたので、次が最後の工程となります。タイトル決めです。


次(推敲:タイトル決め)→

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