メイキング|「Re:tune」リメイク #29 推敲:タイトル決め
3.6 タイトル決め
もともとの「Re:tune」というタイトルは、「世界の再調律」という意味でつけていました。ループする世界を正すためにその状態をリセットしよう、といったイメージがあります。今回は世界の孤立とその過程についてを考察する目的もありましたが、物語として形に残すからには名前が必要でしょう。
でも私、このタイトルを決めるのがとても苦手なんですよね。キャラクターの名前を作る時もそう。その物語がどのように受け取られるかはまだ決まっていないのに、こちらのエゴでその在り方を決めてしまうようで戸惑ってしまいます。とはいえそうも言っていられないのでちゃんと考えますが。
タイトルをつけるにあたり、それを読んだだけでこのお話がどのような物なのかを把握してもらう必要があります。かと言って文章のように長いタイトルは好みではないので、情報は絞っていきたいです(not for meというだけで、文章のように長いタイトルを否定するものではありません)。
まずはこのお話のポイントを整理しましょう。単語をいくつか抽出していきます。
世界からの孤立
教室でのひととき
夢のような出来事
もう元には戻らない
でもこれだけではタイトルにはしきれないですね。「世界からの孤立」は[彼女]の話ですし、[僕]はそれに巻き込まれただけですので使用は難しいです。ましてや、それは作中で詳しく解説しない裏テーマのような物なので、この状況ではあまり適さないかもしれません。
教室での2人の会話はこの物語のキービジュアルでもあります。原文でもその多くを割いて描写していますし、リメイク後も何度かに分けてその光景を描いています。これはイメージとして使いやすいかもしれませんね。
「夢のような出来事」は主に[僕]視点のものになります。普段できないような特別な体験、ということですね。それと同時に、[彼女]が望んだ結末でもあります。夢を通じて孤独を回避できるかもしれない可能性の一つとして、実現を願っていましたし。これも使えるかもしれません。
孤立した後の世界については「もう元の状態には戻らない」という性質を持っていますが、これをタイトルに活かすのはちょっと難しいですかね。やるとするなら最後に句点をつけるくらいですが、世界の発展はないにしてもこの2人の存在はまだ続いていくので、いまいちしっくりこないところではあります。
上記を踏まえ、まずは教室のイメージと夢の雰囲気を合わせてみましょうか。
教室は主に色を使って表現するといいかもしれませんね。窓から夕陽が差し込んでオレンジ色に満たされている様子は、「蜂蜜」や「琥珀」で表現してきました。「黄昏」もイメージに近いですね。
試しに「琥珀色」+「夢」の組み合わせでで既出作品がないか調べると、いくつかヒットするものがありました。インスパイア元ではないのに似た名前をつけるわけにもいかないので、これは使えませんね。同様に「蜂蜜色」+「夢」の組み合わせも多くヒットします。こちらの方が創作で使われているようですね。これもタイトルにはなり得ないでしょう。
「夢」を別の言葉に替えてみます。「希望」「願望」「希」「願い」「想い」のような『この先なにか素敵なことがあってほしい』という意味は寝ている時に見る「夢」とは異なりますが、[彼女]や[僕]にとっても「この時間が訪れれば(続けば)いいのに」という「願望」はあるので、その方向性で言葉を組んでみてもいいかもしれないですね。
ふと、琥珀の生成過程を調べる中で思ったことがあります。樹液が長い年月を経て化石になるのであれば、それは世界から孤立してしまったと解釈することもできるのではないでしょうか。色としての「琥珀」ではなく化石としての「琥珀」とみれば、その中にいる2人は宝石の中の虫のように閉じ込められ、孤立し、先がないことを表現できるかもしれません。色については、「蜂蜜」ではなく「琥珀」にしましょう。
「琥珀色の◯◯」や「◯◯の琥珀」の形にするとして、あとはその空欄を埋めるだけですね。「夢」にまつわる単語を組み合わせようとも思いましたが、なかなかしっくりきません。
本文での描写を振り返ります。
これをうまく纏めてタイトルにしてしまいましょう。「琥珀色の教室」はどうでしょうか。重複を避けるために検索しても、同じ形で発表されているものはなさそうでした。これは使えますね。
キービジュアルとしてのあの空間、世界から孤立してそこから発展しない様子を込められたのではないでしょうか。ちゃんと決められてよかったです。
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