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【レビュー】未知への挑戦の後押しとなる一杯『コーヒートークエピソード2:ハイビスカス&バタフライ』

 以前私のコロナ療養期間を支えてくれた『コーヒートーク』、本作『コーヒートークエピソード2:ハイビスカス&バタフライ』はその続編にあたります。発売からしばらく積みゲー入りしていたのですが、先日私がよく視聴する実況者さんが前作の実況を開始し、懐かしみながら観ていたところ、ちょうど続編がセールで最安値を更新していたためこのタイミングでの購入となりました。

 実は前作から開発に携わっていたモハメド・ファーミさんというクリエイターさんが発売を控えた段階で亡くなっており、その意志を引き継いでの発売になったというエピソードがあります。この情報は知っておくと本作を少しだけより楽しめるかもしれません。

発売日:2023年4月20日
プレイ機種:Switch
プレイ時間:約18時間

ーあらすじー
2023年、シアトル。あなたがバリスタを務める深夜しか開かないカフェ『Coffee Talk』があるこの街には、様々な種族が暮らしています。毎日やってくる顔馴染みのお客様たちにはそれぞれ抱えている悩みがあるようで……?インフルエンサーのサテュロス、ソプラノ歌手を夢見るバンシーを新たに加えた個性的なお客様達との会話を楽しみながら、ご希望通りの飲み物を提供したり預かり物を渡したり、『Coffee Talk』のバリスタにしかできない方法で、お客様に寄り添っていきます。

ーどんなゲーム?ー
毎晩やってくるいろんなお客さんが望んだ飲み物を提供するゲーム。前作はそれだけでしたが、今作は飲み物の種類が増えただけでなく、『預かり物』というお客さん同士でバリスタを通して物を渡すシステムがあります。本作ではストーリー分岐が飲み物だけではなく、預かり物でも発生します。何を渡すか渡さないかで、その後のお客様の展開が大きく変わるので責任重大です。


良かったところ

あのキャラ達にまた会える

 このコーヒートークというゲームは会話がメインのゲームです。それもあって前作を終えた段階でほぼ全てのキャラクターに愛着が湧いています。そのため、今作を始めて最初に嬉しかったのはまたみんなに会えることでした。さらに前作から3年経っているのはゲーム内でも同じようで、ある人は成長して一人前になっていたり、ある人達は人生の大事なイベントを控えていたりと、またそれぞれ新しい悩みを抱えていたり分岐点に立たされていたりしているので、前回との差を感じつつもその変化を嬉しく思いました。

となりのカップルの甘い空気に
当てられるハイドには笑った

 新キャラも出てきますが、付き合いが短いため、正直最初は「なんだこいつぅ!」と思うこともありました。しかしそこはやはりコーヒートーク。話を聞いてそのキャラ達を理解していくことでいつのまにか常連さんの一員になっていました。リアルな喫茶店もこういう感じに『いつもの人』を増やしていくのかな。

ゲーム性が増した

 前述したように今作は単純な飲み物提供ゲームではありません。「これをあの人に渡して欲しい」(誰かの落とし物だろうか?)とお客様に渡すべき物が出てきます。そしてそれを渡すかどうか、何を渡すべきか、誰に渡すべきかと様々な選択肢があります。その選択次第でお客さんのその後の動きも変わっていくため慎重にタイミングを伺う必要があります。前作に比べると一味違った面白さとシビアさを味わえるようになりました。私はお客さんが望んだ飲み物を作っただけで「やったー!!提供提供!!!」とAボタンを連打するおバカさんだったのでほとんどの預かり物を1周目で渡せませんでした(泣)何度提供後に後悔したことか……。

左側にあるのが預かり物
わりと忘れやすい(私だけ?)

彩りが増した

 今作は飲み物にブルーピーとハイビスカスが追加されました。ブルーピーはバタフライピーのことでチョウマメという植物の花びらを使用した青色の紅茶です。ハイビスカスは皆さんもよく知る南国の花で、花弁で紅茶を作ると赤〜ピンク色になります。前作では色付きの飲み物は抹茶のみだったため随分とカラフルになりました。レモンを入れるとpHが変わって色が変わるなど、リアルに感心しながら飲み物を作ることができます。女性は好きそうな見た目だと思います。私は好き。

ピンクもハートも可愛い

愛を感じられる

 これはキャラやゲームに対してもですし、制作スタッフから故ファーミさんに対してもです。新キャラが出てくるからと言って前作のキャラクターを誰1人として蔑ろにしてはいませんでした。前作のチルい雰囲気はそのままに、出番が比較的少なかったキャラが前面に出てきていたりとその采配は完璧です。ファーミさんに対しての愛を感じられるポイントは何点かあるのですが、言い過ぎるとネタバレになるので控えておきます。ただストーリーと関係ないところで言えるとしたら私がグッときたのはスタッフロールでしたね。

気になったところ

実績解除が大変になった

 前作にもトロフィーシステムのような物があったのですが、全部解除しても10時間ほどで済みました。しかし今回はトロフィー数が倍以上に増えています。これは前述した預かり物システムによるストーリー分岐が大量に増えたことが原因と思われます。ストーリー関係の実績を解除するにはやはり周回が不可欠です。私は1周クリア後に攻略サイトを見ながら進めたため最小回数3周で済みましたが、ノーヒントで全回収するとなるとかなりの試行回数になりそうです。前作がのんびりマイペースで進められるところを気に入ってたぶん、今作の実績解除に必死になってしまう仕組みは私にはマイナスに感じました。

実績は全部で53個
なかなか大変!

実績解除のために見たくないものを見たり、やりたくないことをやらなければいけない

 1周目はなるべく望まれた飲み物を提供して、渡すべき物を出すと思います。そうするとストーリーは全体的に良い方向に進みます。しかし実績を解除するためにはその反対を見る必要があります。そう、望まれた飲み物を出さない、渡すべき物を渡さないルートです。これがキツい。何がキツいって既に1周目である程度みんながいい感じになる流れを見てから、わざわざ上手く行かないように立ち回らなければいけないんです。すでに愛着が湧きまくっているキャラ達に「これ注文と違うんだけど?」「渡すべき物を渡さないやつもいるしな」と言われてとても心苦しいですし、ほとんどのキャラがほんのりバッドエンド的な展開になります。実績解除のためとはいえ、そういう展開はあまり見たくなかったかなぁ。

ごめんて

総合:★★★★☆(4.2)

 そもそも私は以前はあまり海外産のゲームをすることがなかったのですが、コーヒートークはそんな私に新しい選択肢を与えてくれたゲームです。焦らず、ゆっくり、雰囲気を楽しみながらプレイできるこのシリーズが本当に大好きで、またバリスタとしてみんなと向き合えることがとても嬉しかったです。エピソード3があってもおかしくないよね、と勝手に期待までしてしまいます。

 今作は前作と比べると良くも悪くも複雑になったと感じました。ストーリーも分岐ができ、飲み物の種類も増え、提供時には預かり物も気にしないといけない。前作のようにボーーっとプレイしていると取り返しのつかない展開になってしまいます。その少しだけ忙しくなったというところをつい前作と比較してしまって大変だなぁと感じつつも、様々な物語を自分なりに眺めることができたり、いろいろと推理しながら進めていくのは楽しかったところでもあります。自分の行動次第で今後が変わるようになったので、これまで以上にお客さんの人生に関わっているという実感もありました。

 多少忙しなくはなりましたが、でもやっぱりこの雰囲気、このキャラ達が好きなことには変わりないので、また続編が出るなら私はまたここでバリスタをしたいです。コーヒートークでしか味わえないチルさってのがあるんですよ…(ドヤァ いつものお客様と語り合い、彼らが望んだ物を感じ取って提供できる、そんな素敵なバリスタを演じたい方は、ぜひ前作も含めこの作品を遊んでみてください。


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