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【レビュー】滅びの力を持った少女が世界を救う話『EASTWARD』

 今回は『EASTWARD』のクリアレビューです。

 初めて本作を認識したのはYoutubeのゲーム紹介動画。あまりに緻密で精巧なドット絵に一目惚れして長い間積みゲーリストに入っていました。いつプレイするかは未定だったのですが、今年の10月9日にSwitchOnlineのいっせいトライアルに登場し「元々遊ぶつもりだったし、無料で全クリできたらお得じゃん!」とプレイすることにしました。コーヒートークも積みゲー入りからのいっせいトライアルの流れで、それをもう一度しようとしたんですね。実際にプレイを始めてみるとその濃密で深い作りに感動し、思わず寄り道したり写真を撮ったりととにかく進まない。そうこうしているうちにトライアル期間があっさり終了してしまい、その後のセールで購入に至りました。作品のボリュームによってトライアル期間を調整して欲しいけど、本来はセールス目的だから仕方ないですよね。まんまと販売戦略にひっかかりました(笑)でもこうでもしないと本当にいつやるんだってレベルで放置してしまうのでいい機会でした。

 お話の大筋は、地下の炭鉱で働く髭面で寡黙な男『ジョン』がある日地下で見つけた謎の少女『珊』と一緒に様々な冒険をするお話。いろんなところで色んな人々と思い出を育むのですが、この世界にはシステム化された滅びの運命があり、それに珊がどうやら関係しているようで事態は思った以上に重く深い方向へ向かっていきます。では詳しいポイントを見ていきます。


良かったところ

ドット絵のクオリティが高すぎる

 まずはやはり私が一目惚れする要因となったドット絵の素晴らしさから。

 えっ…ドット絵ってこんな細かく打つものもあるの!?と本当に感動しました。ぱっと見ドットってわからん……。草木のゆらめきやキャラクターの表情までしっかりと表現されています。また、ドット絵にしてはおそらく等身が高い方なので動きもすごくリアルでスムーズです。下の動画は珊がワクワクした時のモーション。表情と動きで珊の感情がよくわかります。

ストーリーが壮大

 本作の見た目に一目惚れしたので、内容に関する情報を何も入れずにプレイしました。プレイ前の予想としてはジョンと珊の2人がいろんなところを旅していろんな問題を解決するんだろうな〜、という感じ。しかし実際に進めてみると想像以上に重い!暗い!規模がデカい!ゲームスタート時にいた小さく狭い地下世界から、最終的にとても広く遠くまで旅をすることになります。ただ地上世界が見たかっただけだったのに…。もちろん明るく楽しいシーンもたくさんあるんですが、だからこそ、その後の展開がつらくなってしまうことがありました。グリーンバーグ編の最後で呆然としてしまったのは私だけではないはず。どうして……。でもこの心に大きな衝撃を与えることがストーリーで重要な『深さ』なのかもしれません。

章ごとに出てくる文章
(未プレイの人にはほぼわからない内容)
読むとざわつく心を整理できた

随所に感じる日本リスペクトに思わずニヤリ

 本作は上海の会社が作っているそうなのですが、遊んでいるとところどころで日本を感じられるポイントがあります。それは作中に登場するものでもですし、ゲーム性自体でも感じられます。

銭湯もあった
お風呂上がりはやっぱりコレだね
ミヤザキ……ハヤオ…
ド、ドラクエだ…!!

 何かの情報で本作にはジブリやMOTHERに影響を受けていると見かけたのですがその他にもいろいろと影響は受けていそうです。主人公の女の子の名前『珊』と作中で出てくる恐ろしい現象『タタリ』はおそらく『もののけ姫』かららしいです。他にも個人的には大好きな『ゼルダの伝説』っぽさも随所に感じられました。本作で出てくるダンジョンが謎解きで進行していたり、武器を状況に応じて持ち替えながら進める様子は携帯ゲーム機版のゼルダそのものです。だから余計とゼルダファンの私に刺さるところがあったのかもしれません。

鍵をゲットしたら掲げる様子もゼルダライク
思わず脳内で流れるご〜ま〜だ〜れ〜♪
こういう画面も携帯機時代のゼルダにありましたよね
何かを最初の方で取り逃がしてる、悔しい

 じゃぁゼルダの模倣かといわれると全く違う楽しみ方がありました。本作は主人公が2人、そしてそれぞれにできることとできないことがあります。そのため臨機応変に操作キャラクターを切り替えて進めていきます。2人は基本的に一緒に行動をするのですが必要に応じてプレイヤーの任意のタイミングで別行動させることもできます。どこで誰が何をすべきなのかを考えながら進めていくのはとても歯応えがありました。

別行動中珊は不安そうな顔をする

単調ではないゲーム性

 基本的にはフィールドを武器や能力を使って進めていく感じなのですが、それらを必要としないアドベンチャーパート、劇中劇のような感じで登場するRPGゲーム『大地の子』、タイミングよくボタンを押したり連打したり、シューティングやまさかのスニーキング要素のあるものまでと様々で最後までいろんな方法で楽しませてくれました。

珊が夢中になっている『大地の子』
初見では絶対にクリアできないし
まさかの2周目展開があるらしい
急に避けゲーも始まる
バレずに行きたいけど結構難しい

気になったところ

ストーリーが深すぎるが故に全容を理解しきれない

 とっても深くてしっかり練られたストーリーだったのですが伏線回収がされていなかったりわかりづらかったりしてクリア後に「ん?アレってどういうことだったん?」と思うところがまぁまぁありました。元々日本のものではないのでローカライズの関係でそうなっている可能性もありますが、プレイ後に考察を調べてみても他のゲームほど確信を持っての考察が少なかったように思えます。独特の世界観だったのでその理がしっかりと理解できていればもっと納得できたかもしれませんがそこまで詳しい説明もなく。結構序盤から伏線を散りばめまくるのでおそらく2周目で「そういう意味だったのか」と思える部分は多そうです。

画面のチカつきが激しめ

 このゲームは始める前にこんな注意書きが毎回出ます。

日本人はあのアニメが頭をよぎるかも

今まで私は他の作品でこういうのを見たことがなかったのですが、そこまでなの…?と身構えながらしてみたところ、確かになんか危なそう。特に最初の方は地下にいるので暗い中での光の点滅でちょっと自分も目が疲れる感じはしました。イベントシーンのエフェクトもなんですが、敵にダメージを与えると白く点滅するんです。それが暗いダンジョンだとより眩しさが際立って危うさを感じました。しかし、最後の方では慣れてしまったのかあまり気にはなりませんでした。もしかしたらテレビプレイの方が眩しさを感じるかもしれません。特に4Kは白の表現が優秀と聞いたのでもしかしたら。(うちは違うけど)

ゲームがよく落ちる

 ゲームを進めていると突然ゲームのアプリケーションが落ちてしまうことが多々ありました。頻度は割と高めで場面転換に弱い印象です。オートセーブがこまめに入るのでそれで大損害を受けるまでは行きませんでしたが少々ストレスを感じる頻度です。ゲーム終盤あたりは携帯モードで遊んでいたのですが、なぜかその時は全く落ちませんでした。お悩みの方は携帯モードでのプレイをお勧めします。

総合★★★★☆(4.5)

 終始「これが…インディーズだと……?」と驚きっぱなしでした。このクオリティをセールで1300円くらいで遊べたのはお得すぎます。ストーリーやゲーム性など全てにおいてが高水準でした。これならボリュームをもっと増やして伏線回収をしっかりすれば本当にメジャーゲームに劣らない作品になりかねません。

 ゲーム内に称号要素(トロフィー的な)があるので、今後それをやり込むことも可能なのですが、前述した『大地の子』が非常に癖のあるゲームでクリアに苦労しそうなんですよね。ゲームは『ムジュラの仮面』のように数日間が繰り返される世界で、7日で世界が滅ぶようになっています。それまでに仲間を集め、装備を揃え、魔王を倒す必要があります。初見ではどこに何があるのかわからないので何度もプレイする必要がありますが、一応一部プレイ内容は次回に引き継がれますし、現実世界のアイテムでゲームに影響するものもあります。そんな感じでちょっとシステムが複雑。それを2周か…。さらに画像にあるようにファミコンモチーフなので世代でもなければファミコンゲームに興味もとくにない私からするとノスタルジーより不便さを感じでしまいなかなか意欲的になれず……。そういう経緯から称号のコンプは今回は見送ろうかなと考えています。(もしかしたら時間をおいてするかもしれませんが)

 プレイ中はことあるごとに胸に少しモヤッとした不穏な感じを抱えていたのですが、最後の2人の戦いやそしてそれを終えた先の世界を見た時、たとえ意味が全部わかっていなくても私の心は清々しいほどにすっきりしていました。最後はちゃんと救いがあるので、ぜひエンディングまでプレイしてほしいです。インディーズゲーム、侮れないなぁと感じた作品でした。この会社の今後の作品にも期待したいです。


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