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英語が好きな人の進路について

 伊藤 翼さんという方が記事で私を取り上げてくれました。ありがとうございます。

 その記事で仰っていた、「英語が好きだけど、翻訳家だけが生きる道ではないよ。将来のすすむ道はたくさんあるよ」というメッセージについて、まあそんな気はするけれど私は実際どう思っているんだろう?と思ったので、英語や翻訳についての自分のエピソードや考えを書いてみることにしました。
 伊藤さん、新たに記事を書くきっかけを下さりありがとうございます。


翻訳家にどれくらいなりたかったのか

 私は「将来の夢」を欲しがっていました。
 
 大学の英語劇サークルで字幕翻訳と出会った時、「これなら今までの人生と比べて一番頑張っても良さそうだ」と思ったので「翻訳が何より好きだ」「翻訳家になりたい」と言うようになりました。
 そう言っておけば何も無い自分に何かあるような気がしたので、嘘ではないのですがそういい続けることにすがっていたというか。

 字幕翻訳家から産業翻訳家(特定の専門分野での翻訳)に目標を変え、化学分野の通訳者さんに相談した時に「産業翻訳をやりたいなら翻訳したい分野で一回就職した方がいい」と言われたので、就活して化学業界に就職しました。
 
 すると1年目の仕事のない私は化学関連の書類の和訳や英訳を頼まれるようになり、「あ、もう夢叶ったじゃん」という状態に早くもなりました。

 しかし3年目くらいで本業の営業が忙しくなり、そんな中で大量の和訳を頼まれた時に「面倒だな」と思い、他の英語が得意なメンバーに回すことにしました。その時「え、私翻訳そんな好きじゃないんじゃん」と気づき、ショックでした。アイデンティティが揺らいだ気がして。好きなものが本当に何も無くなった気がして。

英語ができるから何をするのか

「英語と仕事」というテーマだと、真っ先に思いつくエピソードがあります。

 私が社会人2年目のことです。海外の取引先との会食があり、取引先の外国人、私、英語が得意ではない先輩数人で食事をしたことがあります。私が通訳しなきゃいけないんだな、と思って緊張していると、先輩の一人が外国人の方に熱心に話し始めました。

 その先輩の女性は普段はクールな印象でしたが、この時は一生懸命に、恥をかなぐり捨てて身振り手振りを交え、何度も何度も必死にカタカナ英語で外国人に話しかけていました。自分の好きな商品のこと、相手の国の市場について、自分が今企画している商品についてどう思うか、などを自分の口から伝え、自分で相手に質問していました。
 相手の外国人の方は優しく頷きながら耳を傾け、ゆっくりと何度でも、真剣にその先輩とコミュニケーションを取っていました。私の通訳は必要ありませんでした。この先輩には、英語が上手くなくても絶対に自分の口から伝えて自分で聞き出したいことがあるのだ、と思いました。そしてその熱意は相手にもビシビシと伝わり、その方も何度同じことを繰り返すことになってもその先輩に向き合って、真剣に言葉を届けていました。

 英語が喋れるはずの私には、その外国人の方に自分の口から伝えたいことが、一つもありませんでした。私はまだ仕事をしていないのだな、と気づきました。

 日本では英語が「外国語」だからなんかすごく見えるのであって、英語が喋れる人を英語が通じる人が見たら、私達日本人から見た「日本語が喋れる人」と同じです。言葉が通じるのは大事なんだけど、じゃあその言語で何がしたいのか、何の分野で他者とコミュニケーションを取りたいのかが大事だと思います。

 私は英語を勉強しましたが英語で話したい話題は特になく、英語→日本語に直した時の違いや表現の幅に一番興味があったので「翻訳」を自分の専門性だと自称していました。
 通常、英語が得意になっていくと日本語に変換する作業は邪魔になるため、翻訳家を志す人間は「英語が好きな人」の中ではそんなに多くはないのではないかと思っています。

英語が好きな人が将来進む道について

 英語が好きで得意な人には、将来の進む道はたくさんあると思います。でも「英語ができる」は日本で言うところの「日本語ができる」と変わらないので、英語を使って何をしたいのかも考える必要があるんじゃないでしょうか。
 
 ただ、私も含めて「何がしたいか」を自分の意志で決定するのは難しいので、環境がそうさせるからとりあえずやってみる、というのも立派な経験やキャリアになると思います。アルバイトで外国人のお客さんが来たから自分が進んで対応するとか、会社で英文メールのやり取りが必要になったから頑張ってみるとか、外国人らしき人が道に迷っていそうだから話しかけてあげるとか、何でもいいから「英語で何かする」ことが「英語を使う道に進む」ということの第一歩なんじゃないでしょうか。

 英語に関して私が何か偉そうに言うのであれば、「英語を使って何をしたいのかを考えてみよう。思いつかなかったら強制的に英語を使う環境に身を置いてみよう」になります。

 ちなみに私がやりたがった翻訳(英→日)は日本語の勉強が凄く重要なので、英語だけが上手くなりたかったらはっきり言って無駄だし邪魔だと思います。「この字幕ステキ」「このセリフ、私ならこんな日本語に訳したい!」みたいな日本語表現オタクの方はどうぞ。

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