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【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 1/8号」

雇用統計で3月利下げ観測後退か
24年第1週の米株は昨年末の好調が続かず下落。スタートは3日発表された昨年12月のFOMC(連邦公開市場委員会)の議事録にある。
12月13日のFOMC後の会見でパウエルFRB議長は利下げ時期を議論したという発言をしたことで年末の米株を支えてきたが、議事録では、参加者全員が金利見通しを示した程度で、パウエル議長の発言はイエローカードに匹敵する。年初からの市場は昨年のパウエル発言で3月には利下げが始まるとの市場の読みを覆すもので、5日発表の雇用統計が市場の3月利下げ見通しをキープできるか注目されていた。

 結果は非農業部門の就業者数は21万5千人、予想の17万5千人を上回り平均自供の前月比+0.4%と予想の0.3%を上回った。結局、賃金インフレの鎮静化までには達しなかったようで、米労働市場は底堅く3月の利下げ観測がやや遠のいたようだ。10年国債の利回りは再び4%を超えてきた。

国内は混乱多発、不透明地合いでスタート
1年の計は・・・と言うが、元旦震度7の能登半島地震、2日日航機と海保機衝突、3日北九州駅前火災(場所は違うが22年から3度目)など、混乱のスタートとなった。年始恒例の展望や予想は話題から消えた。能登半島は余震が500回を超えており、依然要注意の状況が続くと見られる。

能登半島地震による企業への影響

正月休暇もあって昨日までに企業からの発表はないが、産業界への影響が注視材料。焦点は村田製作所(6981)と思われる。
本社は京都だが、石川、富山、福井に生産拠点を持つ。石川県では穴水町、七尾市、羽昨市に、富山県で氷見市に工場があり、震央に近い。工場に被害が少ないとしても、従業員の被災、通勤困難などが影響する可能性がある。

積層セラミックコンデンサーで世界シェア4割持ち、他の電子部品でも有力メーカー。米アップルの有力サプライヤーの一つで、2日の米株市場でアップル株3.6%下落のキッカケになった可能性がある(報道では、バークレイズなどが弱気の見方を示したことによる)と思った。ちなみに、村田製作所の4日の株価は、最初の値段が付くまで売り気配だったが、前日比5.11%安で始まり、2.84%で引けた。

米株はナスダックを中心に下落から始まった。BofA(バンクオブアメリカ)の3日付リポートでは「23年S&P500種24%高の波に乗ったのはヘッジファンドで、リテール投資家は波に乗れず売りに回った」。11-12月のヘッジファンドのやや強引な押し上げ相場が一服、1-3月相場は利益確定、売りから入った可能性が考えられる。要因は、やや先走った米長期債利回り低下が一服したこと(3日の10年債利回りは4.1%まで急上昇した後3.909%に急低下するなど乱高下気味)、レバノンでハマス幹部が殺害され、ヒズボラとの緊張が一気に高まっていること、ウクライナ戦争で双方の応酬が激化していること、中国情勢は依然不透明などが挙げられる。

一般的には、雇用統計や物価統計での米インフレ動向見極め、12日のJPモルガンから始まる10-12月決算での選別、1月30-31日のFOMC攻防に向かうと考えられる。13日には台湾総統選があり、緊張が高まるリスクもある。中東情勢などの予想外の展開が無い限り、基調はボックス相場と見て置きたい。
新たなポイントに浮上してきたのは、凍結ロシア資産約3000億ドルの没収とウクライナ戦費への転用論議。資産がどういう形態にあるのか不明なので、売り材料なのか買い材料なのか分からないが、欧米の戦費負担、日本の復興資金負担の懸念感が緩和される可能性がある。2月に向けて議論される方向。
余談だが、奇跡のJAL機の約400人脱出、1日で新幹線回復などの日本の復旧力を称賛する声が海外で高い。日本人の給与や労働生産性には反映されない要因だが、日本悲観論はそれ程高まらないと思われる。

中国不動産企業の格下げ、不動産警戒はさらに強まるか
能登半島地震の比較対象は1995年の阪神・淡路大震災。当時とは自衛隊出動など復旧対策に隔世の感があるが、7階建てビルの倒壊は神戸三宮のビル倒壊を、輪島朝市大火災は神戸長田の大火災を、道路大渋滞は倒壊した高速道路の横で大渋滞していたことなどを思い起こさせる。
珠洲市の耐震化率51%(全国87%)と報道され、耐震化の遅れ(もっとも、新潟市西区の新興住宅地で液状化が報道されており、耐震化だけで防げるものではないが)、高齢・過疎化が特徴となりそうだ。輪島を中心に能登半島の繁栄は江戸時代の北前船。それ以来の建物、慣習も残っていると見られ、産業・社会構造の変化も課題になりそうだ。

被害総額は8000億円規模との推計(野村総研)が出ている。東日本大震災の16.9兆円(内閣府)の5%ほど。規模は小さいが、当面は復旧・復興対策の動向が注目され、景気下支え要因と考えられる。遠い目線で阪神・淡路大地震では対策一巡後の97~98年に金融・不動産不況が噴出したパターンが思い起こされる。

韓国で建設不動産苦境が表面化している。建設業界16位のテヨン(泰栄)建設が昨年末にワークアウト(再建手続き)を申請、年明け株価(一時18%安)、社債(額面の62%取引)が暴落している。最大債権者は韓国産業銀行(KDB)だが、金融信用不安に発展するか要注意。もともと韓国の経済・金融構造は脆弱。金利上昇の余波、中国経済不振の影響を受けやすいと見られている。景気動向論議で隠れた要素と考えられる。

格付け会社フィッチが中国の不良債権管理会社4社を格下げした。一貫性を欠いた政府支援で財務パフォーマンス、資本構造の悪化懸念を理由に挙げた。不良資産処理能力の低下が投影されていると見られる。ブルームバーグによると、中国地方政府のLGFV(資金調達事業体)は今年93兆円規模の債券償還期限を迎えると言う。昨年比13%増。LGFVは地方政府に代わって、道路、港湾などのインフラ資金を借り入れる機関。景気対策を打つどころか、LGFV救済に追われる可能性が高い。中国人民銀行は昨年末、複数の政策銀行に低コストの500億ドル(7.1兆円)規模の資金注入を行ったが、懸念抑制には至っていない。

米GS、モル・スタ、UBSなど10の金融機関が「中国の住宅建設不況、24年も好転せず」。中国の不動産投資は22年、23年とも8%前後のペースで減少している。見方は5~10%程度で意見が割れているが、政府が有力な手立てを打てるとは見ていない。少なくともGDPを1%ポイント程度引き下げると見られている。

■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。


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