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【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 2/19号」


日経平均の上げ幅が一時700円を超えたことを示すモニター=2024年2月16日午前
©産経新聞社より

ミニ過剰流動性相場、3月以降の米金融政策の行方注視
日経平均の過去最高値更新が指呼の間となってきた。16日には史上最高値の38915円まで、あと50円まで迫ってきた。NYダウとの絶対値差逆転を伴うかも知れない。
1989年のバブル相場時、最終局面で「品薄25(日経平均採用の小型株)の相場」とか言われたことを思い起こさせるような集中物色相場に過剰流動性相場の匂いが漂う。15日の日経平均454円高の時は値下がり銘柄数の方がかなり多く、この日のNT倍率は14.72倍(16日は14.66倍)。従来の14倍前後だと、TOPIX2600ポイント×14倍=36400円ぐらいの肌感覚と見られる。
過剰流動性は何処から来ているか。

かねてから指摘してきたイメージは、
①中ロ分断の冷戦構造
②米ボストン大学が分析した「62途上国が全面的債務危機」でグローバル投資が萎縮
③脱炭素の失敗が増え、ESG投資が逆流
④つれて「投資銀行」が不振で、ダブついた資金が証券市場に流入
⑤昨年3月の米地銀破綻(環境投資の失敗が主因)でFRBが緊急融資
⑥利上げ・利下げ論議が中心だが、日欧も量的緩和姿勢維持
⑦ここへ来て中国が大量資金供給を行っている
などが考えられる。

米FRBの地銀危機緊急融資は1年、3月で期限が切れる。新たなNYCB(コミュニティバンク)危機などが伝えられ、どうするのか注目される。
パウエル-イエレンのFRBラインはトランプの台頭を許したくないであろうから、証券市場の波乱は避けたいところ。3月19-20日が次回FOMCだが、その前の3月7日、パウエル議長の米上院銀行委員会での半期に一度の議会証言が注目されると見られる。返済厳格実行なら、ある程度証券市場は圧迫されよう。

ウクライナ復興議論が活発化してきた。読売新聞は農業支援にクボタ。ヤンマーなど6社が農機や先進機材投入の動きと伝えた。穀物価格の下落で米大手ディアは業績下方修正している業界環境だが、イメージが変わるか注目される。フランスは抜け目なくウクライナと2国間安保協定署名、2億ユーロの基金設立。

まもなくロシア侵攻3年目に入り、戦闘終了が望ましいが、グローバル化維持からも曖昧な流れが加速しそうだ。15日、世銀、国連、欧州委員会、ウクライナ政府は「ウクライナ経済再建費用、10年間で4860億ドル」と試算した。余談だが、国連はガザ復興に200億ドルと試算した。奉加帳は日本に回って来る。
日英が四半期GDPでマイナス成長だった。内需の弱さをカバーするドライバーとして、”復興需要”が注目される可能性があり、量的緩和策維持の大義名分になる可能性がある。

インフラ投資は柱になるか?
今週19日、東京で「日・ウクライナ経済復興会議」が開催予定。昨夏頃からバイデン米大統領が「日本にカネを出させる」と選挙演説で述べてきた案件で、岸田政権のバイデン追随案件として評判は悪い。少なくとも数兆円規模と囁かれており、軍事支援できない日本に地雷除去、がれき処理などの復旧、農業支援からデジタル化、電力・交通インフラ支援など幅広い案件を俎上に乗せる意向とされる。企業も200社以上が意欲を示すとされる。

もっとも、ウクライナでの戦闘が終結しないと話にならない。ロシアの占領地域現状維持で和平交渉との観測記事も流れるが、和平推進で選挙戦に臨みたいバイデン大統領の意向が強いとされる。米議会はカネを出さないので、日本に圧力を掛けていると見られている。

2月1日、EUは540億ドルのウクライナ支援を決めたが、日米のこの動きに対応したものと見られている。軍事支援を含むと見られるが、経済支援を前面に出している。

1月12日、世界最大の資産運用会社ブラックロックが米投資会社GIP(グローバル・インフラストラクチャー・パートナーズ)を125億ドルで買収を発表。この後、散発的ながら運用機関のインフラ投資の動きが続いている。

中東最大級の投資会社インベストコープは運用するインフラ資産を今後5年間で倍増の100億ドルにすると発表。米投資会社KKRは急成長するアジア太平洋地域のインフラ・エネルギー部門に投資するファンド向けに64億ドルを調達したと発表。投資家は公的年金、政府系ファンド、保険会社、寄付基金、資産運用会社など。投資案件は再エネ、電力・公益事業、上下水道、デジタルインフラ、運輸など。中心と見られるインド地域に対しては、欧州自由貿易連合(EFTA:ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン、スイスの4か国加盟)が市場アクセス改善に1000億ドル投資(15年間)する意向。

既に1500億ドル相当のインフラ資産を持つブラックロックのCEOは「世界経済が様々な構造転換によって再構築されるなかで、インフラは最も活気に満ちた長期投資機会の一つだ」と狙いを述べている。

新たな中ロ分断時代、中国の一帯一路失敗、インフラ設備の老朽化、インド太平洋を軸とするグローバル化推進、単純なESG投資の失敗とグリーン投資は推進の並立、金利ピークアウト観などが背景と考えられる。

ファンドではないが、日本ではTSMCなどの半塔体関連大規模投資に続き、米アマゾンが27年までの5年間で149億ドル投資(アマゾンウェブサービスのデータセンター投資など)を表明。投資に連動するインフラ強化が注目されている。インフラ投資は息の長いテーマになる公算がある。

米CPI予想上回り利下げ期待後退、NY波乱の様相も
13日の日経平均1066円高は、東京エレクトロン、ソフトバンクGの2銘柄で506円分を占めた。
2月上旬の米市場のメタ、エヌビディアなどの急騰手法が東京市場にも押し寄せた印象が強い。結果、NT倍率(日経平均/TOPIX)は14.53倍。14倍前後のイメージから大きく乖離した。決算ラリーの一種と見られ、持続性に疑問があるが、売り方は総崩れと見られ、荒っぽい展開を余儀なくされよう。米株とのキャッチボール市場であることを示したので、米株動向に振られると見られる。

米1月CPI(消費者物価指数)が市場予想を上回ったことで、13日の米株は総崩れとなった。総合CPIは前月比+0.3%(市場予想+0.2%)、前年同月比+3.1%(同+2.9%)、食品とエネルギー除くコア指数は前年同月比+3.9%、12月から横ばい(同+3.7%)。

当初は「FRBの利下げシナリオを変える公算は小さい」と観測されたが、米債利回りが上昇、2年債は4.645%、10年債は4.312%水準。つれて金利先物市場での利下げ開始時期予想は5月から6月に後退、ドル全面高となった。

1月CPIの伸びの大部分は、前月比で住居費+0.6%、医療関連サービス+0.7%、航空運賃+1.4%など。NY都市圏が+1%と22年6月以来の大幅な伸びで、全米で最も物価が高い都市に打撃、市場参加者の体感を強めた感がある。
折から強い冬の嵐に見舞われており、積雪18cm予想が出ている。電気料金が前月比10%近く上昇しており、インフレ警戒ムードを強めていると見られる。

先週のインフレに関する経済指標の発表後の利下げ確率は5月のFOMC が前週の60%から38%に下落している。6月の確率は81%だが、17日のブルームバーグによると、サマーズ元米財務長官は、最新のデータで明白に見られる根強いインフレ圧力は米金融当局の次の行動が利下げではなく、利上げになる可能性を示唆しているとの考えを示している。筆者も市場コンセンサスの5月、6月利下げに対し警戒感を持っていた。
だが、サマーズ元財務長官の言う「利上げ」の可能性は全く市場に織り込まれておらず、その可能性が出てきたら、今年最大のサプライズになることは間違いない。

13日の半導体関連の調整には、欧州最大の半導体関連株・蘭ASML株が一時7.1%急落したことも響いたと見られる。誤発注説が出回ったようだが、アムステルダム証券取引所は否定した。終値は3.1%安。新手の売り仕掛けかも知れない。

NY市場では、再びNYCB(NYコミュニティバンク)株が5%超急落、KBW地銀株指数も5%超下落。利下げ期待が遠のいたことで、商業用不動産市場の不振が続くとの見方。S&P不動産株指数は1.84%下落。
方向感を決める材料とは思われないが、高値圏にあるだけに荒っぽい展開が続くものと見られる。

■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。

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