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【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 3/4号」

PCE無事通過、ナスダック、S&P500が最高値、日経平均4万円接近
焦点だった米1月PCE(個人消費支出)価格指数は前月比+0.3%、前年比+2.4%(1月+2.6%)と市場予想通りの結果となった。短期金融市場が織り込む「6月利下げ」確率は約60&から67%にやや上昇した。

食品とエネルギーを除くコア指数は前年同月比+2.8%、12月の+2.9%から低下し、21年3月以来の低水準。サービス価格が+0.6%、モノが0.2%下落。エネルギーが1.4%下落、食品は+0.5%。個人消費は+0.2%だがインフレ調整後では―0.1%。個人所得は前月比+1.0%、賃金+0.4%。貯蓄率は3.8%(12月3.7%)。サービス価格では、金融サービス・保険+1.3%で、株高効果が出ている。

毎週木曜日発表の週間新規失業保険申請件数が今週は1.3万件増の21.5万件(市場予想21万件)と雇用関係が強くなかったこと、ユーロ圏主要国のインフレ率も順調に鈍化したこと(ドイツ前年同月比+2.7%。1月+3.1%、フランス+3.4%→+3.1%)も、インフレ低下ムードを支援したと見られる。

株式市場は月末要因もあってか、ナスダックとS&P500指数が最高値更新。半導体関連から買われ、エヌビディア+2%、AMD+9%、SOX指数+2.7%。そして翌日の日経平均は4万円に急接近。いずれも米利下げ先延ばし観測が後退したことによる。

日銀の高田創審議委員が「2%物価目標実現がようやく見通せる状況になってきた」と述べたことで、日銀マイナス金利修正観測が強まり、やや円高に振れた。のらりくらり発言の植田総裁より、財務省に近いとされる高田氏発言に市場が反応した格好。3月は金融政策会合が控えるので、駆け引き材料となろう。日銀の政策決定会合は3月18日~19日、米FOMCは3月19日~20日。

ビットコインETFに大量の資金流入
理由はよく分からないが、過熱感を吸引しているのは仮想通貨(暗号通貨)のビットコイン相場。27か月ぶりに6万ドルを突破、2月に入っての上昇率は40%を超える過熱ぶり。拍車を掛けたのは11日にスタートしたビットコイン現物上場指数ファンド(ETF)に大量の資金が流入したこととされる。最高値は21年11月の6万9000ドル台。

忘れられていた3月2日の連邦政府閉鎖期限は、またしてもクリアされた様だ。米議会指導部がつなぎ予算で合意と短く速報が流れている。他のインフレ要素としては、米12月住宅指数が前年比+6.6%(依然、在庫不足が押し上げ要因)、デンマーク海運大手マークスが「紅海の物流混乱、今年下期まで続く恐れ。コスト上昇」と警告。
27日発表の米1月耐久財受注は前月比6.1%減と20年4月以来の落ち込み(ボーイングの58.9%減が大きく影響)など、材料交錯。

27日、世界を駆け巡った「アップル、EV撤退、AI傾斜」報道は、アップル株小幅安、テスラ小幅高、エヌビディア小幅安の反応だったようだ。同日開催のアップル株主総会では言及されなかったようだが、2000人からの人が動くので、かねてからの噂は現実になった様だ。自動運転開発も既に止めていると見られる。

欧米の主要自動車メーカーは一斉に、「ガソリン車廃止、EV傾斜」計画を見直しており、皮肉にも株高に繋がっている。
中国・碧桂園が債権者に清算申請を申し立てられた。それが影響したか、28日の上海総合指数は-1.91%、香港ハンセン指数はー1.51%。春節明け後、強引とも見える上げ相場となっていたが、戻り限界か要注意。3月中旬の全人代終了まで持たない可能性がある。

対策は、空売り禁止、国家隊出動から不動産抑制策廃止、公共投資発動など様々な内容だが、27日、全人代常務委員会は国家機密保護法改正案を可決。「業務上の秘密」も対象となり、選別は現場で恣意的に行われるシロモノ。業績報告を本社にしただけで、摘発対象になる恐れがあり、外資系企業への逆風は一段と強まっている。不安定構図が続くものと見られる。

露大統領選後の攻勢、凍結資産売却など交錯
ジェイコブ・ロスチャイルド氏(第4代ロスチャイルド男爵)が87歳で死去した。ウィキペディアによると、モルガンスタンレー勤務後、1963年から英銀N・Mロスチャイルド&サンズ、1980年から投資会社RITを率い、積極投資で知られた。主な投資案件はサザビーズ、投資信託銀行ノーザン、NYマーチャント銀行など。80年代後半に投資案件の売却に動き、1987年ブラックマンデーやサッチャー・バブル崩壊を回避したことで知られる。

1992年ソ連崩壊後、ロシア・アメリカ投資会社に関与。慈善活動でも知られ、イスラエルには国会、最高裁などの建物を寄贈している。昨年11月に死去したキッシンジャー氏ほどは中国との関係は密接でない様だが、混迷深めるロシア・ウクライナ情勢や中東情勢に何らかの影響が出て来る可能性はあろう。陰謀論ではないが、ロックフェラー、ロスチャイルドの後退が、世界の混迷を深めているとの見方がある。

4-6月相場では、ロシア情勢が再び懸念材料となる可能性がある。3月露大統領選圧勝で基盤を固めたプーチン大統領は夏場に対ウクライナ大攻勢を掛ける(ゼレンスキー・ウ大統領は早ければ5月頃としている)可能性がある。

最近の攻勢は、北朝鮮、イランから数百万発の弾薬・ミサイルを調達したことが一つの要因。26日、プーチン大統領は「新世代の兵器を装備する特殊作戦部隊の強化」を表明した。ロシアの狙いは、スウェーデンNATO加盟で封じ込められたバルト海から黒海制圧に向けられていると見られている。オデッサまで黒海沿岸を領土化、場合によってはモルドバにも侵攻する可能性がある。ゼレンスキー・ウ大統領は小麦の黒海輸送困難になるリスクを警告している。小麦はエジプトなど輸入依存の中東支配への武器と見られている。

27日、イエレン米財務長官は3000億ドルといわれるロシア凍結資産の没収が喫緊の課題と踏み込んできた。前から言われてきた話だが、欧州が慎重姿勢(資産が欧州国債など中心で金融波乱警戒、ロシアの核脅しが増えること警戒)だったが、直ぐカナダが賛同。春のG7協議の大きなテーマになりそうだ。
ロシアからの民間企業撤退が続いている。英銀大手HSBC、仏食品大手ダノンなど。また、第三国経由での電子部品などの流れ、石油売買、資金供給などの規制強化の動きが強まっている。経済的締め付けが強まろう。

マクロン仏大統領がウクライナへの派兵案に言及、米英独、スペイン、ポーランド、チェコなどが一斉に否定する事態になっている。6か国がウクライナと安保協定を締結するなど、ウクライナ支援再構築の動きにある。市場の混沌観は続くと考えられる。

決算ラリー一巡、4-6月睨む攻防へ
年初からの累計で、日経平均は4銘柄(東エレク、ファストリ、アドバンテスト、ソフトバンクG)で約3000円押し上げられているそうだ。体感温度3万6000円と言われる所以だろう。資金移動の早い相場では、集中売買傾向は止むを得ないところか。

先導は米相場での「マグニフィセント7」の7枚柄(マイクロソフト、アップル、エヌビディア、アルファベット、アマゾン、メタ、脱落気味だがテスラ)。年初からは利下げ期待相場だったが、AI中心の決算ラリーに移行してきた。利下げが遠退いたことで調整を予想した向きには裏目となった。ところが前述したように29日発表の1月のPCE(個人消費支出)が予想通りだったため、利下げ期待が再燃、東京だけでなく欧州市場も軒並み高。

意外なことに、欧州でも集中物色が起こり、「マグニフィセント4」と呼ばれているそうだ。22日にSTOXX600指数は22年の過去最高値を更新したが、原動力は時価総額の大きい4銘柄だった。
4銘柄は、デンマーク製薬大手ノボ・ノルディスク(肥満症治療薬ウゴービで急成長。ただし副作用問題が出ている)、仏ブランド大手LVMH(ただし、時価総額トップの座はノボに抜かれた)、オランダの半導体製造装置メーカーASML、仏化粧品大手ロレアル。10年前のトップはスイス食品大手ネスレ、次いで製薬大手ロシュとノバルティスだったが、後退しているようだ。その当時の3銘柄が占めるSTOXX600時価総額でのシェアは7%、現在の上位3銘柄は12%と言う。

日本の決算ラリーは、東証33業種指数でみると、前月比上昇率トップは輸送用機器+15.3%。時価総額の大きいところで見ると、川重+24.79%、次いで豊田自動織機、トヨタ、デンソーとトヨタグループが続く。好決算に加え、EVよりハイブリッド、防衛関連拡大などの追い風が見直し要因になっていると考えられる。輸送用機器に続く業種は保険、証券、卸売、その他金融。忘れられていた業種が多いように見える。恒常的な空売りセクターだったかもしれない。

BofA(バンクオブアメリカ)によると、21日までの週で株式に150億ドルが流入。うち米小型株ファンドに51億ドルが流入、22年6月以降で最大と報じられた。債券ファンド、MMFにも資金流入しており、バックグランドの資金量は依然豊富。4-6月相場をイメージする谷間の局面かも知れないが、先行した大型株に売り買い交錯、買い対象拡大が焦点と思われる。

過熱エヌビディア相場から「AIで何ができるか」へ市場の関心は移行?
焦点のエヌビディア株は急騰後、急落も懸念視されていたが、今のところ高水準攻防のようだ。好決算発表を受けた22日は+16.4%、1日で時価総額2770億ドル拡大と米市場の記録を更新した。売買代金は約650億ドル、S&P500指数の約1/5を占めた。続く23日は一時約5%高の後、終値は+0.4%。一時、時価総額が2兆ドルを超えた(アップル、マイクロソフトに次ぐ)。波紋は広がり、22日だけで空売り筋の含み損30億ドル(空売り残高183億ドル相当。半導体株全体では43億ドル)、欧州株指数も半導体・IT関連中心に上昇し、22年1月の最高値を更新した。

エヌビディアの好業績はハイテク大手の開発ラッシュを投影したものと言え、今後は「AIで何ができるのか」が焦点になって来ると思われる。23日、エヌビディアやアマゾン創業者ベゾス氏等がヒト型ロボット開発企業「フィギュアAI」に出資と伝えられた。行き詰まっている自動運転技術、膨大なデータ処理分野などに広がる公算がある。
また、21日エヌビディアが米SECに提出した書類で「最大の競合企業は中国ファーウェイと初認定」と報じられ、中国ハイテク規制論が強まる可能性がある。

TSMCの熊本工場、日本の半導体復活へ弾み 24日に開所式

24日、TSMC熊本工場の開所式が行われた。米アリゾナ工場も建設中だが、ロイターは「日本政府の大規模補助金、優秀な現場スタッフなどが奏功」と伝えた。台湾半導体企業の日本進出は2年間で9社以上とされ、日本の半導体産業の裾野を大きく拡大している。TSMC第二工場は27年完工予定。九州経済調査協会は、21~30年での半導体関連設備投資は6兆円、10年間の経済波及効果は20.1兆円と試算している。

■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。

一般社団法人FLSG
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