#41【写真でお散歩】ニューヨークで一番好きなガーデン、ウエイブ・ヒル (Wave Hill)のフラワーガーデン

画像1 こんにちは。 梅雨明け、まだですね。 梅雨のないニューヨークでは、6月、7月が真夏で、今年はかなり蒸し暑いという話です。 今回は、過去の写真の中から、ニューヨーク市の北部、ブロンクス区にあるウエイブ・ヒル(Wave Hill)というガーデンのご紹介です。明治維新よりも前、1843年、ここはニューヨークの弁護士、モリス夫妻の別荘になりました。ハドソン川沿い、この辺りに別荘を、と船で探していた際、モリス夫人が、「稜線が波打っている(wavy)ように見えるわ」と言ったのがWave Hillの名前の始まりです。
画像2 その後、数人のオーナーの手に渡っていくうち、家屋や庭がどんどん改築、改良されていきました。 社交の場、サマーハウスとして使われていたこの家には、チャールズ・ダーウィンも訪れ、作家のマーク・トゥエイン、幼少時代のルーズベルト大統領が夏休みを過ごしたところ、としても知られています。 1960年代より、ニューヨーク市の持ち物として管理されるようになりました。 ここを一躍有名にしたのは初代、園芸部門のディレクターだった、マルコ・ポーロ、ストゥファーノ氏の功績です。 では早速見て見ましょう!
画像3 ウエイブ・ヒルは、ガーデンの他に、自然、アートにも力を入れている、ゆるめの教育施設です。 私は、もっぱらガーデン、植物、を見に行きます。入場したら、まずここ、”フラワーガーデン”へやってきます。グレーがかった水色の入り口は、温室と栽培場、その奥は園芸スタッフのオフィスです。 フラワーガーデンは、小さな14の花壇に分かれ、色別のテーマに沿って植栽されているものもあります。コテージ風の木の組み方で作られたフェンスで囲まれています。元々、ローズガーデンだったそうです。今でもいくつかのバラは残されているようです。
画像4 ガーデンの中心には、コンテイナーに植えられた植物が飾られています。コンテイナーの色と形と植栽、これだけでも、来た甲斐があるというもの。この時は、背が高くてほっそりしたジュニパーでした。 奥に見えているのがハドソン川の対岸、ニュージャージー州です。
画像5 温室への道と垂直に交わっている通路の両側奥にはベンチが置かれているので、ちょっと休憩。邸宅のゲストになった気分です。 ハドソン川を背に、西側のベンチに座って、東側のベンチを見ているところ。
画像6 後ろを振り返ると、アジサイ、そして、緑の芝生、その向こうにハドソン川とパリセイドの稜線。 ウエイブヒルのオーナーの一人は、パリセイドの景観保存協会の役員をしていたので、この眺めを保存するために尽力したそうです。 ありがたい話です。
画像7 アジサイ、といえども侮ることなかれ、です。 マルコ・ポーロ(と私たちの間では呼んでいました)が選ぶ植物は、簡単に見つからないもの、色や形が珍しいもの。それを絶妙なテイストで組み合わせるのが、マルコ、です。知識とセンス、彼のキャリアのイメージは、個人的には、イギリスのベス・シャトーとクリストファー・ロイドを足した感じ、です。 「植物好きのパラダイス」と異名をとる、このガーデンには、彼の全てが詰まっています。
画像8 こちらが今、座っていたベンチです。 パリセイドの向こう側に沈む夕日、秋の紅葉、吹き渡る風、など、ブロンクスにいることを忘れてしまいます。 この近所は、大邸宅も多く、皇后雅子さまのお父様が国連にお勤めのころ、お住まいだったアパート(日本のコンドミニアム)もあるんですよ。
画像9 フラワーガーデンを入ってすぐ、まっすぐ温室へ向かわず、右に曲がって小さな道を歩きます。 真ん中のお楽しみはとっておくんです。そして、何度もグルグル回るんです。
画像10 刻々と変化するガーデンは、行ってみないと、何が咲いているかわかりません。その日のお天気や光の具合で、印象がすっかり違います。 「今日行こうか、明日行こうか」、勘と運を頼りに出かけます。この日のハイライトは、ここでした。 オリエンタルポピーと、クラリセージの共演です。  でも、よーく見ると、オーケストラのように重要な出演者たちがいます。
画像11 あ、少し日が陰りました。シャッターチャンスです。 手前の部分は、赤と紫色がテーマの花壇です。銅葉、赤、珊瑚色の花なども見えます。
画像12 例えば、こういう風にスモークツリーの銅葉をバックにして濃いピンクのポピーの花を引き立ててあります。
画像13 赤と紫の花壇とその後ろに見えるベンチ。植物以外のストラクチャー(建物、壁、ベンチ、フェンス、小道などのハードスケープ、それに大きな木など)があってこその花壇です。
画像14 向かい側の花壇は、青とモーブ系です。 クラリセージ (Salvia sclarea 'Piemont')、ペンステモン(Penstemon digitalis 'Husker Red') 、ラークスパー(千鳥草)もあります。 ポピーも薄いクールピンク。それにオーナメンタルグラスが風になびき、涼しげです。
画像15 別の小道を歩くと、そこはシャートルーズ(蛍光のライムイエロー)色と緑。 少し日陰になるので、葉物も多く使われています。
画像16 ハイドレンジアとアイビーの、白、薄い緑、シャートルーズ、緑、のグラデーションが素晴らしいです。
画像17 ジャスミン(Jasminum officinale 'Fiona sunrise)の黄色と、薄いバイオレット色のアジサイ。
画像18 ラミアム (Lamium)の黄色、カンパニュラの薄いブルー、そしてアケリージア(Aquilegia)のタネの茶色が大人の色合い。
画像19 薄桃色のハイドレンジアと、柔らかいピンク色のバラ。いつの間にか、ピンク色のセクションに移っています。
画像20 アスティルビのように見えますが、これはアルンカス(Aruncus dioicus)の品種でしょう。 「うちはこんな珍しい植物使ってます」っていう主張が全くないくせに、その当時、他では見ることのない珍しい植物や品種が盛り沢山で、拍子抜けするほどに、ひょこっとそこに植わっているのが、ウエイブ・ヒルなんです。 植物園ではないので、全てにラベルがついているわけではないのがちょっと残念です。 でも、実は株の根元に小さなメタルのタッグが刺さっているんですけれど。。。
画像21 ただの、ピンクのアキリア(Achillea)なんです。でも、なぜか目を引くんです。それもそのはず。 この頃、バイブルとして人気を博した宿根草の本の中で、’コロネーション・ゴールド’、という銀葉でレモンイエローのアキリアが紹介され、どこへ行ってもそればかりだったんです。
画像22 一株だけを他に混ぜるのは案外難しいのですが、ウエイブ・ヒルだけは、なんでもありで、素晴らしい。マルコ・ポーロが全ての植物の選択に目を光らせているようでいて、スタッフも好きなものを選んで買って良いのだそうで、この自由感が、ガーデン全体に出ています。
画像23 アプリコット、オレンジ、のセクションは、別の時期にフォーカルポイントになりそうです。 この日は、デイリリー(Hemerocallis、ヘメロカリス)と赤紫のアイリスのコントラストが見られました。
画像24 以前のオーナーが育てていた20種類以上もあるというクレマチスのコレクションも、その多くが今だに健在です。 奥のモーブ色は、1800年代の品種、'Perle d'Azur(パール・ダジュール)、手前の手裏剣(古い!)のようなクレマチスは、(C. x triternata 'Rubromarginata' トライテルナータ、ルブロマージナータ)で、こちらも1800年代からある品種だそうです。 さて、この辺で、このフェンスの中のガーデンを出て、裏手に回ります。ここだけじゃないんです。まだ先があるんです。
画像25 温室、オフィスの北側の壁にも楽しみは続きます。 ちょうどアジサイが咲いています。
画像26 このブルーのペイント、植物と相性がいいんでしょうね。なんでも良く見えます。 これはハイドレンジア ’グレイズウッド(Grayswood)'。
画像27 テッセンです!レトロモダンな感じです。
画像28 小倉遊亀という日本画家の絵を思わせるスッキリした輪郭。 壁に張られた針金のフェンスにうまく合います。
画像29 ハニーサックルのオレンジと、このブルーグレーのペイントの また似合うこと。こんな難しい色を組み合わせるのも、マルコ・ポーロ、です。 なんだか歴史の教科書に出てきそうな名前ですけれどね。
画像30 そんなに広くないガーデンなのですが、見どころが満載です。 次回は、フラワーガーデン以外のエリアを見る予定にしています。 最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。

サポートありがとうございます。