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サイレント撤退

何冊も同人誌を発行したカップリング(以下、ABとする)から撤退することを決めた。
ABの歴史は20年ほどあるが現在は斜陽気味でメンバーも凝り固まっている。しかしこの夏のジャンルオンリーでイベントが企画されるなど、界隈はゆるやかに盛り上がっている。
私はそのイベントの企画主から嫌がらせを受けている。
企画主とはSNSで知り合い10年ほどが経つが、最近私に対する無神経な言動が目立つようになり、我慢できずやめてほしい旨を伝えたこともあった。
決定打となったのは突然のことだった。私がABでの活動とは別に制作しているオリキャラのデザインを無断で改変したイラストを企画主が作成しSNSに投稿した。これには猛抗議をし投稿を削除させたが、そこに至るまで長文のやり取りを要し非常に疲弊した。
私にとってオリキャラは大切な存在だった。かれこれ5年近く活動をともにした相棒であり私の分身でもある存在だった。
企画主はオリキャラ創作をしたことがなく、事の重大性をいくら説明しても理解してくれなかった。それでも、私との縁切りは嫌とのことで謝罪があった。
正直なところ注意喚起に価すると感じたが、企画主を注意喚起したら参加者が嫌な思いをしてしまうのではないかと思った。感想はもらえずとも発表した作品を温かく迎え入れてくれた界隈に恩を仇で返すような真似はしたくないと思い注意喚起を見送った。企画主にも今後同じことを他の人に繰り返さないことを約束し、私はこの件を水に流すことにした。
信頼できる友人に話を聞いてもらい、カウンセラーにも相談し、オリキャラを蔑ろにされた痛みと付き合っている。

私は現在別アカウントを作ってCDで活動しており、ABの創作を発表するアカウントはよろずアカウントと化している。
去年の冬の新刊を出してから思うような創作ができず、机に向かっては挫折するのを繰り返していた。
トラブルのあと、いつものように進捗が芳しくない報告をSNSに投稿したところ企画主からDMが来た。
私の新作を楽しみにしているとのことだった。
AB以外に興味がないのに白々しいなと感じた。同時に猛烈なプレッシャーを感じ怒りを覚えた。
そのとき私はCDを書いていた。CDは書けば反応がもらえるし同志たちと交流も弾む旬なカプだ。自己満足と割り切らないといけないABとは違う。
まだ本にしていないABのネタはあるが企画主には見せたくない。ならば書かなければいい。そう思ったとき、ABから撤退しようという気持ちが生じすぐに固まった。もう潮時だ。私は感想がほしいからもうこのカプにはいられない。
立つ鳥跡を濁さずと言う。去り際は美しくなければならない。私は黙ってpixivの投稿作を非公開にしBOOTHの該当ページを削除した。そして手元にある同人誌の在庫をすべてまとめて翌日のゴミ回収に出した。
もしゴミの日が数日後だったら迷いが生じていたと思う。
ゴミをまとめている最中と、回収場所に持っていったときと、ゴミ収集車が去って寂しくなった回収場所を確認したときに涙が出た。頑張って作った本だった。誰かに読んでもらいたかった。
私に売り切れるほどの技量がなかったのが悪い。部数を刷りすぎたのが悪い。そういうことにした。
本当は同カプ者を全員ブロ解したいが、そうするとバレてしまいそうでやめておいた。代わりにAB関連のワードをミュートしてABの話題が目に触れないようにした。
今日もサイレント撤退を悟られないように当たり障りのない投稿をしている。

いままで本を手に取ってくれた人たちには心から感謝している。
この先は本を自ら処分することがないように一層部数を絞っていきたい。また、処分する際も後腐れなく気持ちよく手放せるような心持ちでありたい。

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