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醜い嫉妬

フォロワーに商業小説を書いている人がいる。
過去に大流行した二次創作同人を通して知り合った。彼女は精力的に活動しアンソロ主催などをしていた。私はどちらかというと買い専で、書き手としてはオン専だったが歳が近く、また住まいも近いということで親しくなった。お互いにそのジャンルから離れても世間話をしに茶をしばく仲だ。
お互いに働き先をざっくり教え合っている。彼女は副業OKの会社に勤めていて、様々な副業をしている。作家はそのうちの1つだ。
私は彼女にずっと嫉妬している。
私も商業デビューすることをずっと夢見ていたが、夢敗れて同人からもほぼ撤退している現状だ。私は努力ができなかった。出版社と自分をつなげる行動も起こさなかった。彼女は好きなことをコツコツ続けた結果現在を勝ち取っている。それができたこと自体を妬ましく思っている。
彼女の周りにはいつも人がいる。何の脈絡もなくマシュマロで人生相談が送られてきたりする。同人誌やpixiv投稿物の感想をたくさんもらっている。ジャンルが変わっても、主たる事業所が変わっても、いつもいつも。
私のところには義理マロしか来ない。体調不良で長期間仕事を休まざるを得なくなったときも誰も心配してくれなかった。同人誌を出してもpixivに渾身の一作を投稿しても感想なんて来ない。
ある日、彼女がポリコレの話をした。すると長文のマシュマロが複数来た。つまり誰かが彼女の呟きを読み、筆を執ろうと心を動かしたということだ。
ちなみに私は該当の発言に対してそうなんだ。と思った。この時点で同じ土俵に上がれていないので蚊帳の外からメラメラしていた。
私が彼女の新刊を買ったことを写真つきで報告してもスルーしてマロを返しているのが許せない。
どうして出会ってしまったのだろう。
どう考えても釣り合う2人ではなかった。
親しくならなければ私は彼女の読者でいられた。同じジャンルにいる間は。その後は顔も名前も知らない近隣住民の1人になれた。
一体何が彼女の興味を駆り立てたのか。私と親しくなりたかったのはなぜか。
聞けやしない。
ちなみに彼女は私の働き方に対して肯定的だ。彼女は総合職だが私は専門職。仕事はいくらでもあり、職場が嫌になればいつでも転職ができる。それだけのスキルもある。そろそろ年齢的に追加で資格を取った方が箔が付くが、それがなくても十分現場でやっていけている。
職業人として私は評価されているらしい。お互いにないものねだりをしている。
しかしどんなに仕事ができたって本は出せない。
出版社からは見向きもされない。
同僚からは慕われてもフォロワーにとってはたくさんいるうちの1人にしかなれない。
私にもっと創作力があったら、政治への関心が高かったら、人間的な魅力があったら、彼女と対応でいられたのだろうか。
定期的にモヤモヤする。でも顔を合わせたら学生時代の友人と接するときのようになる。世間話と仕事の愚痴を美味いもので流し込む。
私にはそんな奇妙な友人がいる。彼女が腹の底でどう思っていても、私達を表す言葉に友人以上のものが見つからないのだ。

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