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母に感謝を伝えられない私は「母の日」にお花を送ることにした Part1

いつからだろう。母と話すのが少し照れくさくなったのは。
小さい頃からずっと一緒にそばにいた母。尊敬している人を聞かれたときは、必ず母の名前を口にする。

母の偉大さに気づいたのは、新卒で上京し、一人暮らしを始めたことがきっかけだ。実家では帰宅すると、温かいご飯が用意されていて、洗濯や掃除、あらゆる家事を母がすべてやってくれていた。

私が実家にいた頃、母の手はいつも荒れていて、ずっとおなじ洋服を着ていた。自分の服を買えばいいのに、子どもの服ばかりを買って、私たちが喜ぶ姿を見て微笑む。私はまだ母親になっていないため、母の気持ちがわからない。いつか結婚して、子どもが生まれたときに、母の気持ちがわかるのだろうか。

はじめての一人暮らしは、とにかく大変だった。自炊はおろか洗濯機の回し方さえ知らない。スーパーで買い物をしたときは、たまごをエコバッグの下に入れると割れにくいだとか、海苔は意外と値段が高いだとかそういう豆知識を教えて欲しかった。

上京するまえに、母からいろいろなことを教われば良かったと本気で後悔した。それと同時に、家に帰宅したときに、ご飯が用意されていた日常のありがたさを感じた。

一人暮らしをはじめて、もう1年がたとうとしている。まだ母のように上手く家事をこなせない。すこししか成長していない自分に嫌気が差す。いつになったら母に追いつくのだろうか。きっとこのペースでは一生追いつくことはできないだろう。

わからないことは素直に母に聞けばいいのに、なんだか照れ臭くて、インターネットで家事の方法を検索している。母の味にはまだ遠く及ばないけれど、母の得意料理である肉じゃがを作れるようになった。

世の中は便利になった。実家に帰らなくても、母とビデオ通話ができるようになったし、2週間に1回は母から「ちゃんとご飯を食べてる?」とLINEが来るようになった。いつまでも子ども扱いしないでほしいと思うものの、この先あと何度母とこうしてやりとりができるんだろうと考えると、母のお節介すらも愛おしくなる。

GWのため、久しぶりに実家に帰省することにした。ちなみに去年は1度も帰省していない。なにかと理由をつけて、実家に帰省しない私を母はどう思っているのだろうか。新幹線に乗って、実家の最寄り駅に着いた。改札を出ると母が待っていた。去年よりもすこし白髪が増えたような気がする。これはビデオ通話ではわからなかったことだ。

「ゆうちゃんおかえり〜!元気してるんか?」
「先週ビデオ通話をしたばっかりだよ?そんなに変わるわけないやん」

東京に上京してから関西弁を使う機会はほとんどなくなった。東京では関西弁を話すたびに「うわ、関西弁だ」と、たくさんの人が喜んでくれた。最初は関西弁を誇らしく思っていたのだけれど、数回おなじやりとりが続くとさすがにもういいよと言いたくなる。だから、私は東京では関西弁ではなく、標準語を話すようになった。

母の関西弁を聞くたびに、関西に帰ってきたんだと安堵するし、素の自分に戻れたような気がする。久しぶりに会った母は新しい服を着たり、ネックレスをしたりしている。週末は福山雅治のライブに行くらしい。私がこれまでに見た覚えのない母がいま目の前にいる。これまでどれほど我慢をしてきたのだろう。

大阪の実家で暮らす家族はすこし変化はあるものの、いつもどおりゆったりした日常を過ごしている。安心感を覚える一方で、刺激がいっぱいの東京に帰りたくなる自分がいるため、複雑な気分だ。

実家に着いた。一人暮らしの部屋もいいけれど、自分の部屋も悪くない。誰も利用していないこの部屋はきっと母が掃除をしているのだろう。押し入れの中には卒業アルバムがあった。アルバムの裏には友達からのたくさんの寄せ書き。「我等友情永久不滅」だとか「3仔1」だとかいま読み返すと、恥ずかしくなる当時流行った言葉がずらりと並んでいた。

「あんたの反抗期はいまでもよう覚えてるわ」
「ちょっともう昔の話だからやめてよ」
「塾に行くと言って友達と遊びに行ったり、ご飯よって言ってるのに無視したり、ほんまに典型的な反抗期やったもんな」

あの頃は若すぎた、と思いたい。いまでも十分に若いのだけれど、学生時代の話をされるとその場から逃げたくなる。誰にでも人には話したくない恥ずかしい過去があるはずだ。ふと母の手に視線を落とす。あいかわらず手は荒れたままだ。変わっていない部分もあることにすこしだけホッとした。

その日は母の手料理を食べて、リビングでテレビを観たり、母と父と他愛もない話をたくさんした。突然、睡魔に襲われたため、自分の部屋に戻り、ベッドに潜り込む。疲れがあったのか、いつの間にか眠りについていた。

HANARIDAとは

大切な人に花を贈るきっかけを作るD2Cブランド。
「花以上にマイナスイメージがないものを見たことがない」という発見から、HANARIDAは生まれました。
心をほっこり温める淹れるフルーツ「咲茶」や、プロのフラワーアーティストが手がける「ドライフラワーフレーム」など、暮らしに花をそえる商品を販売中。ご購入は公式サイトから。

公式HP:https://hanarida-official.com
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