見出し画像

詩小説 『ガラスの手』 #シロクマ文芸部


 ガラスの手を今年も軒先に吊るす。


 夏祭りに飲んだラムネ。
 おまえは炭酸が苦手だったが
 せっかくだから、と口にふくむも
 あんまりにも情けねぇ顔するもんだから
 思わず笑ったら、機嫌を損ねられて
 あんときは焦ったもんだよ。

 せがれたちが産まれてからは
 瓶の中でカランコロンと
 転がるビー玉をなんとかして取ろうと
 躍起になったこともあったな。


 そんなラムネの瓶を
 細かく砕いて高温で溶かし
 息を吹き丸くふくらませ

 おまえとラムネを飲んで以来
 ずっと集め続けていたビー玉を
 わしとおまえと倅たちの五人分を
 指のように紐でくくりつけた

 ガラスの手製の風鈴を
 吊るすようになって幾年か。


 そんな不恰好な風鈴を眺めながら
 わしもそろそろおまえへのところへ
 いく年か、と思いを馳せる。


 今年の夏も暑くなりそうだ。
 おまえのところはどうなんだ?
 そろそろおまえに逢いたいよ。

 たとえどんな姿のおまえでも
 もう笑ったりはしないから。


 駆け込みガラスの手。私も炭酸は苦手なのでラムネはあまり飲んだことがありません…
ただ、あの中に閉じ込められたビー玉には、何とも言えない風情があって惹かれますね。
風鈴のイメージは、手というよりとクラゲに似てるかもしれません🤔

※通知が溜まってるのに、なかなか追い付けてなくてすみません🙏💦

この記事が参加している募集

#スキしてみて

527,181件

最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。よろしければ、サポートいただけますと大変うれしいです。いただいたサポートは今後の創作活動に使わせていただきます!