3分小説 『朧月よ、朧月よ』 #シロクマ文芸部
「朧月よ、朧月よ」
『おぉ、どうしたんだ?』
ぼくが問いかけると、すぐさま返事が届く。
「黄色いお花みたいなものがちりばめられたケーキを売ってるお店はどこにある?」
『うーむ、難問だな……』
「どうして?」
『あのケーキが売られているのは3月8日だけなんだ』
「え、そうなの?」
慌ててカレンダーを見ると、もう一週間も経っていた。もっと早く気づけば良かったという後悔とまだ叶えられるチャンスを考える。
「朧月よ、朧月よ」
『なんだい?』
「そのケーキはぼくでも作れる?」