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猫の指も人の指も

指が6本のひと

フロリダはキーウェストにある、ヘミングウェイの家(現在はヘミングウェイ博物館として観光名所になっている)には6本指の猫がいる。
6本指の猫は、幸運を呼ぶと言われ大切にされている。

ネイルテックになってから一人だけ、足の指が6本あるお客さんがいた。
6本目の指は、未熟な指だった。
爪はなかった。でも突起物というよりは、明らかに指。
ぱっと見、意外と気づかない。
彼女も人々に幸運を運んでくれているのかな。

指が4本のひと

指がないとか、欠損しているお客さんは時々いる。
最近初来店したあるお客さんは、左手の親指が半分から先なかった。
そのことに気づかずに、ジェルオフの為小指から順にアルミホイルを巻いていて、5本目をやりかけてスカッと空振りしてしまい、気まずい空気になった。

この雰囲気のままで施術を進めるのは耐えられなかったので、わたしはあえて空気を読まずに
「私のおじさんもこれと同じ指なんですよね〜」(本当)と、なんでもない感じで会話をふってみた。
するとお客さんも気さくに返してくれて、曰く、2歳の時にドアに挟んで指が切断されたとのこと。その時の痛みを今も覚えているとか。

何がお客さんのツボだったのかはわからないけど、彼女はお会計で$30(料金のほぼ50%)もの破格のチップをくれた!
とにかく彼女にとって、提供されたサービス内容がハッピーなものであったのは間違いないので、良かった〜、失礼と思われなくて。と胸を撫で下ろした。

指がないひと

夏のある日の、親子連れのお客さん。
娘さんのアイデアで、シニアホームに住んでいる年取ったお父さんを、ペディキュアのために連れて来た。
娘さんはお父さんに会うために遠方から来ており、しばらく滞在中らしい。

お父さんは、片方の足の指が全部なかった。
糖尿病が悪化して、全指切断したとのこと。
知識としては知っていたけど、リアルで指を切断されてるものを見るのは初めてだったので、糖尿病の怖さを再認識させられた。

お父さんはネイルサロン初体験だったので、いろいろとめずらしがり、
面白がっていた。明るい方で、お店側のわたしたちも楽しかった。
足指はなくても、フットバスやマッサージで十分にサービスはできた。

秋になり、2回目は娘さんだけがお店に来た。
「お父さんはお元気ですか?」と聞いたところ、
亡くなったとのこと。
来店された時はとても元気だったので、ショックだった。
娘さんはそれっきりお店に来なかった。
おそらくお父さんの身辺を整理してから、地元に帰ったのだろう。
お父さんとの思い出を振り返るため、もう一度一人でお店に来られたのかな。