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大人になってからも「趣味」続いていますか?

会社員だと、新入社員や就職活動中の学生に向けて自己紹介をしてほしいと言われることがあるだろう。入社以来しばしばそのような場に登壇している私にとって、年々難しく感じることがある。それが、「趣味」の記入。

新入社員や学生は私の「趣味」や「特技」を知ったところでなんの得もないのだが、どういうパーソナリティの先輩がいるか、自分と似ている/気が合いそうな社員がいるか、を知るための項目なんだろうと思う。

この質問が年々辛くなってきた私から、大人の皆さんに問いかけたい。
大人になってからも、「趣味」続いていますか?

学生時代の私は「多趣味」だった

もともと「無趣味」だったわけではない。むしろ私は典型的な「サブカル」「多趣味」だった。

映画好きを自覚して10余年。
小さい頃から続けていた習い事のヴァイオリンと習字。
バンドサークルに所属し音楽も大好き。BlueNoteに行ったり。
高校時代にどっぷりハマったミュージカルや宝塚に行ったり。
旅行が大好きでひとり旅も嬉々として行ったり。
銭湯が好きで都内の浴場を回っていたり。
雑誌を読むのが好きでバックナンバー閲覧目当てで出版社でアルバイト。
パリっぽい雰囲気を愛し、おしゃれな女性になりたいと思っていた。
趣味とは言わないが英語の勉強も結構楽しんでいた。

学生時代にロクに恋愛をしていなかった私は、文化人である自分を愛し、様々なコンテンツに触れることを心から楽しんでいた。

社会人になって「失った」もの

なぜ「多趣味」の学生だった私が、趣味を聞かれるのが怖い大人になったのか。
実を言えば、上にあげた私の趣味は、別に嫌いになったわけではない。
頻度は下がったものの今でも映画や音楽、演劇や雑誌が好きだし、自分を型作っているものだと思う。旅行や銭湯だって大好きだ。コロナ禍で数年間どこにも行けずつらい思いをしたが、コロナ禍が落ち着いてから早速海外にも出かけ、旅好きは健在だ。

私が「失った」のは、趣味ではなく「趣味だと無邪気に言う自信」なのだ。
胸を張って趣味だと言えなくなったその後ろめたさから、自分の好きなことと少し距離ができて、数年のうちにかつて大好きだったことも「趣味」と言っていいのかわからなくなった。

「趣味」マウントへの疲れ

私が自分の好きなことを胸をはって「趣味」だと言えなくなったのは、「趣味マウント」への疲れが原因だと思う。

「私の方があなたよりその分野に詳しい」
というあからさまなマウンティングは世の中結構多い。
特に、私のようなサブカル界隈の生息者にとっては日常茶飯事だ。

映画や音楽を好きな人は無邪気に言いがちだ。
「まだあれ観ていないの?」
「あ、これ知らない?すごく良いのに!」
「フローラちゃんも好き?今度語ろう〜!」

私はド文系大学生の寄せ集めのような会社に入社したことが逆にアンラッキーだった。相手はマウントをとっているつもりもないだろうが、だんだんと、こう言った話題がしんどくなってしまった。
時代の風潮も「オタクが強い」になったのもアンラッキーだった。詳しいこと、ひとつに特化している人ほどキャラが立ち、良いとされるように感じてしまう。

自己紹介に並ぶ「映画鑑賞」「音楽鑑賞」「海外旅行」
他人と比べて飛び抜けて詳しくない限り、ありきたりでつまらない自己表現だと感じるようになってしまった。

誰かと競争するために観たり聞いたり読んだりしているわけではないのに。
自分がその行為を楽しめれば良いだけのことなのに。

結局、「好きなこと」を純粋に楽しめず、気がついたら自分でも「趣味」と自信を持って言えないほど距離ができてしまった。

他人軸では「趣味」を楽しめない

最近仕事のストレスで体の不調を感じるようになってから、自分がいかに他人軸で生きてしまっているかを感じている。
私が「趣味」欄を自信を持って記入できないのも、自分の「好き度」を他人との比較で自信を持とうとしていたからだ。

好きなことを楽しむことに人との比較はいらない。「趣味」は自分だけのもので良い。他人軸の呪縛から離れた時、ようやく私の中に「趣味」が戻ってきてくれるような気がしている。

30代になって「趣味がない」「趣味を見つけたい」と言っている友人が心なしか増えているような気がする。
仕事が忙しく、趣味、プライベートに割く時間が学生時代よりも減っている人が多いだろう。

もし私と同じように、好きなことはあるけど、「他人に比べて好きと言うほどでもないから」「他の人ほど没頭していないから」趣味がないと感じている人がいたら、ぜひ私と一緒にその認識を変えてほしいなと思う。
好きなことを、割いている時間や知識量を気にせずに、堂々と好きと言える大人になろう。少なくとも私は、そうなりたいと思う。


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