漫才「ラブコメ」

「ちょっと聞いてほしい話があるんだけど」
「どうした急にそんな改まって」
「これはまあ〜」
「なんだよ何でも聞くよ、教えてよ」
「いや、これは俺の友達の話なんだけど」
「友達の話ね」
「友達には好きな人がいるらしいんだよね」
「好きな人!ああ恋愛の話でしたか」
「その友達はその人のことを思うと胸が苦しくなったりさ」
「うんうん」
「遊びに誘いたい!って思っても断られるのが怖くてなかなか誘えないらしいんだよね」
「あーこれはありますよね、恋愛の一歩目はなかなか勇気がいります」
「どうしたらいいかな」
「えっ?」
「いや、どうしたらいいのかなって」
「どうしたらっていうのは」
「いや、遊びに誘うべきかどうかって話だよ」
「友達の話だよね?」
「あ!あ、そうそう友達が!友達がデートに誘うべきかどうかって話だよ何言ってんだ当たり前じゃないか友達だよ友達友達」
「ああそうだよな」
「うん」

「これラブコメとかの漫画でしか見ないやつだ!」
「ラブコメ?」
「ラブコメで女の子が好きな人の相談をするときに使う手法ですよみなさん!」
「何の話してんの?俺の相談に乗ってくれよ」
「俺のって言ってるー!」
「早く相談に乗ってくれよ」
「お前の、友達のだよな?」
「え?友達の相談って言ったしやめろってマジで人の真剣な相談茶化すのはお前そういうとこあるよなほんとにな」
「早口で怒ったーー!!!!」
「いいから相談に乗ってくれって友達の」
「倒置法使ってる!んで何だっけデートに誘うんだっけ?」
「おま、まだ付き合ってもないのにデートとかそんなお前デートだなんてお前いい加減お前、お前〜!」
「照れてる!!」
「で、デート…遊び!遊びな!遊びに誘いたいって話なんだよ」
「まあいいや、遊びな。誘いたいんだよな?」
「うん」
「友達が?」
「友達が!」
「水族館とかどうよ、あれは何もしなくてもいいし楽しいよ」
「あんな暗いとこ2人でいたら緊張するよ友達が」
「距離を縮めるチャンスじゃん」
「いや、暗いのはこないだ体育倉庫に2人きりで閉じ込められたときでもう懲りたんだよ」
「はっ?」
「あ、友達がな!」
「いやそこじゃない、お前体育倉庫に閉じ込められたの?」
「だから友達が!」
「いや友達としても!中高生の友達いんのかお前」
「そりゃいるだろ!恋愛と友情に年齢は関係ないし」
「わりと恋愛にはあるだろ!体育倉庫閉じ込められてその友達はどうだったんだよ」
「え、いや、そ、その、結局生徒会長がすぐ駆けつけて開けてくれたから大丈夫だったんだけどさ」
「生徒会長…?」
「それからその子もそうだし、生徒会長もなんか俺のこと避けてる感じなんだよ」
「なんでその子と生徒会長がお前のこと避けるんだよ」
「ん?いやだってそりゃ」
「やめろ!友達の話だよな?」
「え、だから友達がだよ俺さっきから友達がって何回も」
「わかったわかった!俺が聞き間違えた!はい!もういいから続けよう!」
「わかればよろしい」
「うぜえな!その友達はすげえ毎日がラブコメみたいだな」
「そうなの?俺はそのラブコメ…?ってのがよくわかんないけど」
「生徒会長メガネかけてる?」
「え!お前なんでミユキのこと知ってんの?」
「それで言うとお前もなんで知ってんだよ!」
「いや生徒会長」
「ミユキさんは幼なじみとかじゃないよな?」
「あ、あいつは幼なじみっていうか親同士が仲いいだけっていうか…」
「お前すげえラブコメだな!その認めない感じも!」
「あいつ俺が相談すると毎回機嫌悪くなるし、最近は家にもあんま来ないし」
「家くんの!?生徒会長が!?」
「隣同士だから普通だろ?で、こないだもさ」
「普通じゃねえよ!よく考えたら家が隣同士だったら普通距離とるんだよ!気まずいから!」
「え?何お前それ?文学?」
「ラブコメの反対は文学じゃねえよ!」
「こないだもミユキがやたら睨んできたから何かと思ったらさ、俺がその好きな女の子と一緒に家で勉強会するって言ったらあいつも来るって言うんだよ」
「お前そりゃ行くよ、ミユキちゃんじゃなくても行くよそこは」
「その子すげー勉強できるから教えてもらったりしてさ、ミユキはあれで成績良くないから」
「えっ?ミユキちゃんは生徒会長なのに勉強できないの?」
「あいつはそういうとこあんだよな、勉強できないくせに責任感だけはあるから」
「ミユキちゃん…」
「芯が強くて頑固で、でも人一倍自分に厳しくて、いつも誰かのことを考えてる」
「ミユキ………」
「悪いやつじゃないっていうか、もっと素直になんないと恋人できないぞ!ってこないだも言ってやったよ」
「お前!!!!!」
「なんだよ」
「ミユキちゃんと!!いや、ミユキちゃんを幸せにしろ!!!!!」
「ば、ばかお前なんだよ急に」
「お前にはミユキちゃんが必要だろ!!」
「ミユキは…俺のことなんか…」
「お前ミユキちゃんの気持ちわかってんのか!!ミユキちゃんは、お前のことを、お前みたいな」

「わかってるよ!!!」
「え…?」
「だからお前に相談してるんだよ」
「ちょっと待て、それって」
「俺の友達はすごく身体の弱い女の子でな」
「ん?だって、これはお前の話じゃ」
「すごく勉強ができる子なんだ」
「ま、まさか」
「体育倉庫の一件は、本当にただの偶然だった」
「お前の言ってた友達って…」
「責任感が強くて、努力家で、不器用で芯が強い。俺とその友達は、同じ人のことを好きになったんだ」
「お前…でも、ミユキちゃんの気持ちは…」
「長い付き合いだからな」
「いいのかよ!お前はそれで!」
「さあな」
「でも、このままじゃ、お前もその友達も、ミユキちゃんも…」
「だから相談してるんだよ。俺はどうすればいい?」
「全員だ」
「全員」
「2人ともお前が幸せにしろ!」
「無茶言うなよ」
「無茶じゃない!お前なら絶対できる!」
「でもそれってハーレムもののラブコメみたいじゃない?」
「いや純文学だろ!いい加減にしろ」

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