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メガネを洗う余裕が欲しい

小学校高学年の時からずっとメガネをかけている。
今は裸眼だと0.02くらいの視力。
目のカーブが人と違うのと重度のドライアイでコンタクトはできない。

でも、そもそも僕はメガネが好きだ。
初めてメガネをかけた時
「まるでSFかゲームの世界みたいでカッコいい」
と思った。
判然としなかった黒板の文字がはっきり見える。
視界にはフレームが見えていて、その外側はぼんやりとぼけている。
今で言うところのAR【拡張現実】に近い感覚。

携帯ゲーム機の画面に汚れがあると気になるように、メガネの汚れも人一倍気になる体質でメガネ拭きを常備していた。
家には超音波洗浄機を導入しこまめに洗っていた。

しかしここ数ヶ月は全く洗えていない。
不快感よりも体力が尽きる方が早く、誰が見ても脂と埃でレンズが白く濁っていると分かるくらいに汚れてしまっている。
最早メガネ拭きで拭ったところで汚れが広がるだけのレベル。
白くぼやけた視界で毎日を繰り返している。

気になるかならないかと聞かれたら気になるけれど、今の生活で何かをはっきり見る機会も無いから支障はない。
大好きなゲームもほとんど手つかず、モニターに齧りつくほど観たい作品は避けるようになった。
何かを楽しんだり没頭したりする余裕が無い。
今日やらなければいけないこととできなかったことで日々押し潰されていて、作業をしているか外出のために風呂に入っているか最低限の食事をとっているか。あとは体力が尽きて倒れているだけ。

『貧乏暇なし』とはよく言ったもので、お金も無ければ休む暇もない。
急激に減らされたバイトのシフトを補う術を暗中模索している間にも体は刻々と限界を迎えて壊れていく。
収入が減った一方で通院は確実に増えた。
こうなる前に次の道を見つけなければならないと分かっていて確立できなかったのは全て自分の責任だ。

バイトもいよいよ4年目になる。
最初はしんどくてもその内力の抜きどころや慣れで体力の消耗は抑えられると周囲が言っていたのはただの都市伝説だった。
4年目の今でも辛さは変わらない。
むしろマスク必須になってから血中酸素濃度はジリジリと下がっているし、店を回すための人員を半分に減らされてどんどん辛くなっている。
それでも今のバイト先にしがみつかなければ、こんな状況下で精神障害者を雇ってくれる場所なんてない。

辛い。しんどい。だから体も壊れる。
カカオを育てている少年がチョコレートを食べられる日は来ないという現実を日本で体験している感じがする。
周りはこう言う。
「そんなことで体を壊したら元も子もない」
それはとっくに分かってる。分かってても他に手段がないのだから仕方がない。

例えば100円均一に売っている物は100円の価値しかない。
すぐに切れなくなるハサミ、インクが詰まって固まるボールペン。
分かっていても、ちゃんとした値段のハサミやボールペンを買えるだけの余裕は無い。
安物買いの銭失いとはよく言ったものだけれど、安物にしか手を出せない貧乏人の気持ちが今なら分かる。好き好んで安物を買ってるわけじゃないんだよな。

みんなが辛い。みんなが大変。社会は誰も救えない。

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