シェア
蛙太郎
2022年11月29日 05:25
さよならの途中で土砂降りになって中断した夜は、万華鏡みたく変幻し、なにひとつ確かなものがない。首都高速に川が流れて、古都の桜を狂い咲かせた。あの道をまっすぐ行って、赤信号をそそくさ渡ったところに、かつて螺旋階段が聳えていた。一段飛ばしで駆け上がった。穴の空いた靴下を早く脱ぎたかった。極彩色のその靴下は、いつかの街の光をすべて内包していた。綻びから零れる光が眩しいうちに風に預けた。今その片足がタ