春に咲いた椿



地面にポトリと自身を落とした夢を見て起きた
そして、また朝が来たのかと思った

みんなは   もういなくなった街の中で 
私だけが   苦笑いを咲かせている

私の咲くはずだった季節はもっと
風がチクチクと痛いのだという

厳しい風に吹かれ   しんしんと降る雪に濡れるこの花が
なんとも  美しく 儚いらしい

でも今、身体にあたる風は 穏やかで温かい
だから    みんな私をまるで桜みたいに扱う

君は幸運だ  恵まれている   めずらしい   そう言いながら
摘み取るのは可哀想だからと 微笑んで水をやる

悪いことじゃないはずだ     幸せなはずだ 
だから幸せに笑わないと   咲かないと      
期待に応えないと     すぐに地面に落とされる気がした

昼に頑張って咲いたって   夜に1人で泣いたって
誰も周りに来てはくれない  幸せな暖かい日差しの中で  

一つだけ 問わせてほしい

いくら寒さで体が軋んでも 雪で濡れても
他のみんなと赤い花を咲かせてる未来は
なぜ私に似合わないのだろう 

望んだのでもない場所で時間の中で
何故生きているのだろうか

“君にしてはネガティブな言い方だ”と 
言いながら褒めてくれるのだろうか 幸せで残酷だ

来年になれば  みんなと同じ季節に  
赤い花を咲かせられるのかなと思いながら

また今日も夜を待つ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?