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大吉より素敵な二人と夏

オリンピックで日本人選手が喜びを爆発させている瞬間が眩しすぎる。あれ程スポーツで感情があふれ出した瞬間がないので、ちょっとだけ羨ましく見えました。でも剣道はスポーツじゃないからな。柔道とJUDOは違うって言われているけれど出場している種目は一緒だし、選手は特に言及していないから外野がどうこう言うのはねって感じです。

二個上の先輩二人に半年ぶりに会うことができました。先輩なんだけれど半分友達みたいな、そんな距離感を許してくれる不思議なお二人です。昨年の年末に一回会ってたんですけど、春休みに会えなかったことをなぜかずっと言われてたので、じゃあ夏に三人でドライブ行くかみたいな流れで事が決まりました。

駅で全員合流して、先輩の運転でかき氷屋に行くことになりました。お二人が前の座席でBTSのこの曲はマイナーすぎるとか、イケメンはキックボードに飲酒した状態で警察に見つかっても愛くるしいとか、女子だなーって会話で盛り上がっていました。うるさい姉貴らを一歩引いて見てる弟ってこんな感じなのかも。会話にも参加するけど、ラジオみたいにほとんど聞いているだけ。横の座席に座っていたミニオンの人形を抱えていたんですけど、あまりにも可愛すぎた。なんかかき氷が嫌いって設定になってたけれど、僕はそんなに好きじゃないってだけでしたよ。

醤油の蔵みたいな面構えのかき氷屋は、後から調べたらすごく有名そうでした。初めて四桁のかき氷を食べたんですけど、さすがにおいしかったです。全く頭がキーンとならなくて、氷が縦に細いというか、舌に触れる表面積が多いからスーッと溶けていく感じがすごく新鮮でした。ざらざらしてないかき氷は初めてで、「そんなに好きじゃない」から「普通」ぐらいにランクアップしたような、とにかくおいしかったです。お二人はずっと写真を撮っていたけれど、これも女子だなーって感じでした。四桁のかき氷はアマチュアとプロ野球ぐらい別格なのかもしれない。

また車に戻ってからは、滝を見に行くぞーって決まりました。かき氷屋からはかなり遠い距離にあったのですが、先輩が運転を頑張ってくれました。滝に着いて駐車場でお手洗いを済ませて「日焼け止め塗る?」って聞かれたけど、持ってるから大丈夫って言ったら驚いていました。後、折り畳み傘を日傘替わりにしようと思って傘を差していたら「美容男子じゃん!」ってお二人がはしゃいでいました。全然、美容男子じゃないから。暑すぎるのを少しでも回避しようとしてただけってことを説明したけれど、一応ここにも記しておこうと思います。まあ、僕が差してた傘の影はお二人に奪われてましたけど。

滝に着くと、物凄い水量で圧巻でした。東洋のナイアガラってあだ名は伊達じゃなかった。滝の勢いが良すぎて白い泡がきめ細かすぎた。落差のある滝があちらこちらにあって、水しぶきが天然のミストみたいになって風に乗って肌に触れた瞬間は最高に涼しかったです。岩をくりぬいた洞窟みたいなトンネルを抜けて一番端に着くと、もう飛び込めるくらいの距離まで川に近づけました。岩場に降りて右手を突っ込んだら、思ったよりも冷たくなかったけど、でかすぎるコンクリートの橋の下で涼しかったです。途中の洞窟みたいなところでの先輩は、宮崎駿の世界から飛び出してきたのかなってぐらいはしゃいでいたのでだいぶ幼く見えてびっくりしました。

途中で敷地内に縁結びの神社があって、皆スルーするのかなって思ってたら結局行きました。お二人は何を願ったのか知らないですけど、僕は財布を探すのに手間取って慌てて10円を投げ入れたから、願うという行為を忘れていました。神社で何も願わなかった人間は僕が一人目かもしれません。恋みくじというのも初めてやりました。僕は大吉で、お二人は中吉と小吉でした。一瞬気まずい空気が漂ってたけど、それはそれで面白かったな。その後に野草料理のお店でご飯を食べました。お茶も天ぷらもピザもうどんも野草で溢れていたけど、貴重な機会になりました。おいしかった。

このドライブが決まる前に「なにかしたいことある?」って聞かれてて、半分冗談で「海でペヤング食べたい!」って言ったらお二人がその夢を叶えてくれました。「海でペヤング食べたい!」って僕が言ったのは、シンガーソングライターのみらんさんと作家の小原晩さんのエッセイを読んでて、お二人がペヤングを食べているシーンにすごく憧れたから。道中でなかなかペヤングが見つからなかったり、コンビニでお湯を入れていたら地震が起きてお湯が揺れたり。海へと続く道ってどうしてあんなに走り出したくなるんだろうな。いろいろ苦労と迷惑をかけて、ついに海に着きました。海に行くのは高1以来かもしれない。

海はきらきら光っていた。きらきらきらきら。さらわれる。目も心も。全部が透き通っていた。透明すぎる砂浜と青と白の絵具じゃ足りないぐらいの海。うっすら笑っているかもしれない。何もかもさらわれたような感覚。ずっと海に来たかったから。はあ、やっと海に来れたんだなぁ。

お湯を流してからだいぶ時間が経ったペヤングは、麺がちょっと固まっていてソースと薬味がうまく馴染まない。ずっとかき混ぜていたのをちょっと馬鹿にされたけど、それすらももうすごく楽しかった。

地震の影響で津波が来るかもしれないから気を付けてねと言われていたけど、お二人がずっと自撮りをしていて暇だったので波打ち際まで近づいてみました。砂浜の上で小さなカニが慌ただしく動いていて、彼らなりに何か感じ取っていたのかもしれません。すごく綺麗に見えていた海も厳かな雰囲気でしたが、自然の怖さというのも同時に感じました。人は死んだときにほのかに海のにおいがするらしい。それは人類は程遠い昔に海から上がってきた生命体から進化してきたからだとか。それでも、生と死が共存する海はやっぱり綺麗で、しばらく見惚れていました。

「砂浜に何書いてたの?」と聞かれて、答えてたと思いますが一応もう一回書いときます。「バカ」と「元気」と「生」です。特にメッセージ性はないけど、これさえあれば大丈夫だと思います。それなりに元気で、時にはバカになって、何があっても生きていれば大丈夫。また会うときまで、元気でいてください。

「好きな女子の名前とか書いてたんだろどうせ~」とか言ってましたよね。書くわけないでしょ。仮に、砂浜に名前を書いて波に名前を消されたらなんかよくなさそうでしょ。それぐらいわかってほしかったな。

地震の影響で電車が止まりそうという情報を見てかなり焦ったけど、結果無事に帰れて本当によかったです。先輩のお二人ともいろんな話ができたり、僕の悩みとまではいかないけど些細な現在の心境とか聞いていただいてすごく充実した一日を過ごすことができました。”楽しかった”という表現だけでは足りないくらい満足できて、はしゃげて、笑って、本当に最高でした。ずっと運転していただいたり、気を遣っていただいたり、食事代も奢ってくださって、感謝しかないです。いつか、お二人にお返しをすることができるように僕もこの一年、さらに一年と頑張っていこうと思います。本当にありがとうございました。

22歳の誕生日に決めたやりたいこと3個のうちの1個の「海でペヤング食べる」が達成できてよかったです。あと2個は「花瓶を買って花を飾る」と「冬の夜の砂浜で花火をする」なので、何とか達成できたらいいな。



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