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いつもそばにいる(上)

人物
宮本由衣 (18)
宮本めぐみ (46)由衣の母
大原博之 (45)めぐみの上司
河合武司 (41)由衣の担任
宮本康史 (48)由衣の父
ラジオパーソナリティ
※下で登場する人物も載せています


○車内 (朝)
車を運転する宮本めぐみ (46)。 助手席には宮本由衣 (18)が乗っている。車内にはラジオが流れている。
ラジオパーソナリティーの声 「今日と明日の二日間で大学入学共通テストが行われます。今年は約五十五万人の学生が受験するそうです。もしかしたら受験生さんもこのラジオも聴いているかもしれませんね。受験生の皆さん頑張ってくださいねー!」
めぐみ 「だって、由衣。頑張ってね」
由衣 「うん。五十五万人も受験するのかぁ。敵多すぎ」
めぐみ 「敵 ? 敵っていうよりは同士じゃない?」
由衣 「そんなポジティブに考えられないよ」
めぐみ 「モノは考えよう、無駄な緊張は記憶力下げるよ」
由衣 「記憶力...、あー見たことない問題が出ませんように」
めぐみ 「大丈夫。由衣が見たことない問題はみんなも見たことない問題。リラックスね」
由衣 「うん 」

○駅のロータリー
めぐみの運転する車がロータリーに入ってくる。

○車内
由衣 「行ってきます」
めぐみ「ハンカチ持った?」
降りようと荷物を持ったところでハッと気づく由衣。
由衣 「あ、忘れた」
めぐみ 「はぁ?家出る時、持たなかったの?出かける時、いつもお母さん聞いてるじゃない。ハンカチ持ったって」
いいながら自分のカバンの中を探りハンカチを出すめぐみ。
めぐみ 「はい」
由衣 「ありがとう、ってこれ渋すぎ」
東海道五拾三次の柄のハンカチを見つめちょっと嫌そうな顔をする由衣。
めぐみ 「持ってないよりはマシでしょ」
由衣 「これ葛飾北斎だっけ?」
めぐみ 「こら、受験生。歌川広重。葛飾北斎との違いはテストに出るかもよ」
由衣 「はーい。電車で時間あったら調べてみるわ。ありがとね」
制服のポケットに入れる由衣。車をおり駅に入っていく。姿が見えなくなるまで見送るめぐみ。

○大学門、試験会場
大学入学共通テスト試験会場の看板がたっている。

○教室
大勢の学生が座り、試験開始の合図を待っている。
試験官 「では始めてください」
一斉に鉛筆を持ち、テストを始める学生達。その中に由衣の姿がある。由衣の制服のポケットにはめぐみのハンカチの端が見えている。

下に続く

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