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いるはずのない細い足。

今日はちょっとテイストを変えて怖い話を書いてみようかと思う。
というのも、ワイは怖い話が大好物なのだがその実、心霊体験というものを40年近く生きてきてほとんどした事がなかった。
なので今日話すことも実体験とは言い難いが一応その場にいたという点に置いてワイの数少ない心霊体験の1つといえる。
お手柔らかにお聞きいただければ幸いである。

あれは弟が野球に熱中していた頃だから多分ワイが中学生の時だったと思う。
ワイには2人の弟がいて、年子の弟と5歳年下の弟、そして野球に熱中していたのは2人目の当時小学4年生の弟だった。

ネコ美ファミリー

カナカナカナとひぐらしが鳴く夏の日の夕方、ワイの地元栃木は夏になると2日にいっぺんは雷を伴う夕立が降るが、お父さんと弟が外でキャッチボールをしていたのだからその日は夕立の来ない日だったのだろう。
夕立がこないと暑さが和らがないのがデメリットではあるが、田舎だからか温暖化がそこまで進んでいなかったからなのか時折秋めいた涼しい風が頬を撫でる。
ワイの実家は至って普通の一軒家でお父さんと弟がいる庭先からはリビングの掃き出し窓が見えた。当時その窓はカーテンではなくブラインドを設置しており、床から30センチくらい開いていた。

家を背にしてお父さんが立ち、弟の方からは少しだけ間の空いた掃き出し窓が見える。
ちなみにお母さんは外にある物干し竿から乾いた洗濯物を同じ敷地にあるばあちゃんちの縁側に置いたカゴに放り込んでいた。

つまり、この時点でお母さん、お父さん、弟2は外にいたということである。

お父さんの暴投を受け損じた弟が、さくらんぼの木の下までコロコロと転げたボールを拾いにいき、投げ返そうとしたその時だ。ブラインドの上げてある30センチの隙間に子供のような細い足が見えた。

あれ?誰の足だろう?

そんなことが頭をよぎったがお父さんがボールを催促してくるのでとりあえず力いっぱい投げ返す。そしてもう一度窓を見てみるとその足は消えていた。

キャッチボールに疲れた弟とお父さんはその後間もなく家に入りエアコンの効いた部屋でお父さんはあずきバー、弟はガリガリ君を食べていた。お母さんも夕飯の準備のためキッチンに立つ。

ワイはというと、そんな一連の出来事の間中ずっと昼寝をしており、夕飯の匂いにおびき出される形で2階の自室から這い出しリビングに合流した。

そこで先程の細い足の話を弟から聞いたのである。
最初弟はワイの足だと思っていたらしいが前述の通り寝ていたのでそれはない。
じゃあ随分前から姿の見えない弟1の足だろうとお父さんが言って、弟もそれに同意しかけたその時。

ガチャリと玄関のドアが開く音がした。そして出掛けていた弟1が友達から貰ったというインコの入った箱を抱えてリビングに入ってきた。

心霊オカルトホラー大好きお母さん、ワイ、弟1と違い弟2は物心つく幼稚園の頃からアンビリバボーの心霊特集が始まると自室に戻ってしまうというくらいそれらを毛嫌いしていた。

もしかしたら弟2には我々には見えない何かが見えていたのかもしれない。

ちなみにお父さんは心霊特番を嬉々として見る我々3人を横目に「そんなの見てるとバカになんぞ」なんて言いながら珍好プレーにチャンネルを変えるので、心霊特番と珍好プレーどっちがバカかな?なんてことを思いながら、ワイはお父さんのその行為を苦虫を噛み潰したような顔でじっと堪えていた。

我が家のチャンネル権のドラフト1位はお父さんなのである。

おしまい(   ᐕ)

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