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自動的に運ばれる毎日

電車に乗っていると、身体は自動的に波打ち、運ばれる。 こうして電車に揺られてると、私は、私と周りの乗客、そして電車がまとまって一つの大きな塊になったような感覚に襲われる。 乱れた紙の束を机の上にトン、トンと落とすと綺麗に紙の端が揃うみたいに、車両がレールに沿って揺れるたびに私たちも綺麗に整列して、境目が整う。 私はその感覚をとても心地良いと感じるときもあるし、なんだか声を上げてギャーと叫び出したいときもあるし、私の意識よりも先に、私の肌が生温い涙の温度を感じるときもある。

    • 道路脇に捨てられていた傘のことを考える。 傘のこというより誰がなぜこの傘を捨てたのだろうということを考えている。 定期的に開催される街の清掃活動に参加しゴミ拾いをしていると、道路植栽にビニール傘がひっそりと捨てられていた。 綺麗に折り畳まれボタンもしっかりと留められているその姿は、ゴミにしては傘としての性格を全く忘れていないように見える。 この傘の持ち主はなぜこんなところにこの傘を捨てたのだろう。 朝までお酒を飲み明かした大学生が無敵になった気分で捨てたのだろうか。 交

      • 【不忍池ボート場遭難事件簿】

        「明日天気いいから、ボート乗りたい」 はなちゃんからこんな誘いが来たのは、ちょうど朝のホットコーヒーを飲もうとしていたときだった。 はなちゃんは私をいつも外の世界へと連れ出してくれるプリンスである。 というのも、私は誰かと外で遊ぶのに想いを馳せながら、家で1人コンサート(観客5万人想定)に勤しむ、他力本願塔の上のラプンツェル、誰か!私をこの塔から連れ出して〜!だからである。 加えて、誘いがあると塔から速攻出ていく私は、尻軽塔の上のラプンツェル、誰でもいいから!私を塔から連

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