今「Eternally」をフルパフォーマンスするということ
韓国の5人組ボーイズグループ、TOMORROW X TOGETHER(以下、TXT)は7月2日、3日のソウル公演を皮切りに、初のワールドツアー「ACT:LOVE SICK」をスタートさせました。ソウル公演はオンラインでも観ることができましたので、私も含めご自宅などで彼らの旅のスタートを見届けた方も多いかと思います。
ソウル公演のセットリストは彼らがこれまでの活動で一貫して描いてきた、「少年の成長の物語」を改めて辿る内容となっており、VCR、衣装、セットも含め素晴らしい3時間の公演でした。
そんなソウル公演で一際ファンを沸かせたのは初となる「Eternally」のフルパフォーマンスだったのではないでしょうか。
「Eternally」とは
「Eternally」は2020年5月にリリースされたミニアルバム『The Dream Chapter:ETERNITY』の最後に収録されている楽曲です。
2020年6月末に公開されたこちらのMVは以前noteに取り上げたDigipediが制作しています。なんと20分近くあり、MVというよりショートムービーと呼んだ方が良いかもしれません。収録曲にもかかわらず徹底的に作り込まれたこちらのMVは、彼らの物語を理解する上で非常に重要な手がかりを持つ作品です。
「Eternally」自体は昨年10月に無観客で行われた初の単独コンサート「ACT:BOY」で一部パフォーマンスされていましたが、フルでのパフォーマンスは今回のワールドツアーが初めてとなります。
ファンが大盛り上がりだった「Eternally」ですが、なんとYouTubeにソウル公演でのフルパフォーマンス、並びに5人それぞれにフォーカスされた映像が公開されました。
5人の儚げな声とバックグラウンドボーカルの透明感ある声をメインに進行していく「しなやかさ」を感じる部分と、何かが憑依したかのように5人が踊う「狂気」的な部分が交互に繰り返されるのがこの曲の魅力です。
カムバックした2年前でなく、彼らが今、「Eternally」を一番美しく表現できるのは、やはり『The Dream Chapter:ETERNITY』以降のカムバックが非常に重要な役割を担っていると思います。
まず、「しなやかさ」に関しては今年5月リリースの『minisode 2: Thursday's Child』の幕開けを飾る1曲目、「Opening Sequence」が鍵となっています。
別れを表現したこの曲は「悲しみ」「絶望」などの感情を優美で中性的なコンテンポラリースタイルによってパフォーマンスしています。今にも消えてしまいそうな彼らの苦しげな表情も特徴的で、アルバムの収録曲ながらファンから絶大な支持を得ています。
そして「狂気」の部分に関しては、昨年の名盤『The Chaos Chapter:FREEZE』並びにリパッケージアルバム『The Chaos Chapter: FIGHT OR ESCAPE』収録の「Frost」が鍵となっています。この曲は特徴的な歌唱力の部分ではもちろん、一人一人の表情の部分においても狂気を感じる作品です。冒頭のヒュニンカイの高らかな笑い声から一気に引き込まれる構成になっていて、アルバムの中でも異彩を放っています。
この曲で存分に発揮された「狂気」はのちの『minisode 2: Thursday's Child』のタイトル曲「Bood Boy Gone Bad」でも活かされています。
このように、「Eternally」自体はリリースされてから2年以上が経ちましたが、彼らがその後のカムバックを経て自分達のものにしてきた「しなやかさ」と「狂気」を活かした、まさにTXTの真骨頂が今回の「Eternally」フルパフォーマンスであると感じました。
K-POPの世界にはダンス、ラップ、歌唱力、ビジュアル、コンセプト等、どれをとってもレベルの高いグループが本当に多いですが、だからこそそのグループにしかない「唯一無二」の何かがあるかどうかが非常に大切で、その点において、TXTは彼らにしか表現できない世界観、そしてそれを表現するための独自のスタイルをすでに手に入れることができていると今回の「Eternally」を観て改めて思い、誇らしく思いました。
初めてのワールドツアーはまだ始まったばかりですが、この経験からさらにパワーアップした5人の姿を今後見せてくれることを楽しみにしています。最後まで読んでくださりありがとうございました!
サムネイル:[T:TCAM] ‘Eternally’ stage @ ACT : LOVE SICK IN SEOULより
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