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人は恋をする、何があっても #2

今回、恋という名の心理状態は忍びやかにやってきた。本人さえ気がつかないうちに。

毎年、定期的に行われているシステムに関するお祭りのようなミーティングが熱海で春に開催される。そこには電機メーカーの人、システムインテグレーターの人、公安関係の人、防衛関係の人、様々な業種、業界の人がやってくる。話題は様々だ。自分の仕事で体験したことを発表したり議論したりする。参加資格に制限はない。

バツイチになった頃、仕事を変えたい、ということで、内部監査の認定資格を取得した。その資格は米国での認定資格なので試験にパスして実務経験を証明しなければならない。そこで初めて公認された資格となる。ステータスはある。外資でも国内企業でも引く手あまたに近い。もともとシステムと経理、内部統制を英語でやっていたから、資格は試験にとってすぐに認定された。その時にミーティングの存在を知って参加を始めた。まあ、外の世界を知らないと仕事は変えられないと思ったから。

参加を初めて3年が経とうかというある回で海上自衛隊の偉い人と意気投合してミーティングのあと、呑み明かした。その人は面白い人で自衛隊の海外派兵(ジブチ)で現地での米軍との調整官(リエゾンオフィサー)を務めていたそうだ。国際法の解釈をめぐっての議論は現場経験者とはとても面白い。なぜなら自分は大学の修士課程で国際関係法の専攻だったからである。

毎年オフィサー氏とは会っているが、2年目以降彼の脇には毎年、お酒もそれほど飲めないのにお供してくる年齢不詳の女性がいる。聞けばIPOの時の事前調査の仕事をやっているという。海自の偉い人とはこのミーティングで知り合っていつもお供しているとのこと。仕事柄いろいろな人を調べるせいか、なかなか鋭いメンタル領域にスーッと入ってくる話し方をする。面白い女性だなあ、と思った。管理職なのか若い部下を連れて紹介された時もあった。正直言えば自分のレーダーレンジスコープでは、うっすらとした輝点がついたような気がするかな、くらいの関心しか持ちえないのであった。知人の面白いそのまた知人。縛りもなく、後ろめたさもなく知的な話がたまたまできる女性(ひと)。名刺も交換したら霞が関と御成門というお互いの会社の立地であった。

自分「会社、近いですね」

女性「そうですね。偶然でなくてもお会いするかもしれませんね」

オフィサー氏「そうでしょう。でも意外と機会は揃えないと他人さまとは会えないものですよ。袖擦り合うも何かの縁といいますよ。でも会いたくない人には会っちゃうけどね」

一同「わはは、そうですよねえ」


まだ恋の気配なんてなんにもないじゃないか。


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