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人は恋をする、何があっても #8

よく幼稚園の子供の性別を揶揄するときに、「男子はゴム動力」「女子はゼンマイ仕掛け」というらしい。オトコは単純で分かりやすく、オンナは複雑で理解できない精密な部分があるということを言いたいようである。自分に言わせれば仕事に関してはオトコは最新鋭の兵器のようになるところまで進化するが、恋愛や感情はいくつになってもゴム動力のままであると思う。オンナに関しては姉妹はいないし、身近にいる妻にはもっと直球が投げられる。だから妙齢な女性にどう接していけばいいか知らない。ティーンの頃のようなひた向きさもとうに失われている。

とはいえ、啖呵切った手前、フェイドアウトも失礼だし前回の銀座から10日もたたないうちにあの女性(ひと)にお誘いメールを書いた。

「高木様、先日はありがとうございました。お選びの店は美味しかったです。お約束を果たすべく、マイベストスリーの美味しいお店をお知らせいたしますので、お好みでお選びください。苦手なものがあればそれも教えてください。お会いできる日時の候は下記のとおりです」

女性をお食事に連れ出すとは思えない、ムードのないメールである。我ながらゴム動力だの、と思うが、お約束を果すふりしていいだろこの店、とやりたい気持ちが抑えられないのも確か。下心なく年下の女性にいいとこ見せたい。だから「あなたが忘れられません」などというところまで思い入れはないし、妙な誤解やハラスメントを防ぐにはあのくらいしか書けない文才だから仕方がない。

正直言えばお断りか返事が来なければいいとさえ思っていた。

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