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人は恋をする、何があっても #1

人生を50年も生きてきて、妻も息子もいる。息子は小学生だ。大会社ではそれなりの地位にいる。稼ぎはそこそこあるから妻は働かない。夜の営みもそれなりに。年老いた両親が近くにいて、郊外の自宅に住む。趣味はこれと言ってない。強いて言えば読書か、家族との旅行。何の変哲もない人生になっていた、気がついたら。

バツイチ。人生の酸いも甘いも味わってきた。前妻との間に高校生の娘がいるが10年以上会っていない。離婚はつらかったけど、人生は離婚という不良債権も返済し、順風漫歩と人は思うだろう。

若いころはデカいバイクでかっとぶのが趣味だった。カワサキの逆車で法定速度を超えるような走り方をしていたこともあった。クルマで夜な夜な峠や大黒埠頭に出かけていた時期もある。

青臭い恋心なんてもはや自分の中では死に絶えた。と思っていた。女性をナンパするとか女性とお出かけして映画を見るとかメシを食う、酒を飲むなんて久しくやっていない。そもそも年下の女性は妹みたいに感じているのが大半だ。守ってあげないといけない対象。年上の女性には興味はない。女性と心トキメく、スリリングな時間を過ごしたのは遠い過去のことであり、接待してくれる飲み屋の女性は化粧が濃くて苦手だ。家でカミさんに気を使うのに酒飲む時まで女の期限を取るなんてありえない。風俗に行かなくはないがそれも枯れはてているようで、友人の武勇伝を聞いても「おー、すごいねえ」でおしまいだ。女を口説く、まるでない。

トキメキ、という言葉は人生から消え失せようとしていた毎日。でも、男は家族のために稼がなければならない。自分は金を稼ぐための機械、子孫を繋ぐ機械だと思い始めていた。

仕事柄、社外のセミナーに行けば名刺交換もする。最近は女性も有能な方が多い。話していても楽しい才色兼備の美人もいる。しかし、若いころみたいなハントするなんて気にはならない。せいぜいが会話がはずめば食事をして会話を楽しんで終わり。たまには酒も飲むがあくまでも紳士で。

しかし、トキメキの予兆というオトコとして大切なものは死に絶えていなかった。そしてそいつは気が付かないうちにこころの中で芽を出して成長を始めた。ある女性に会ってからは。出会いは偶然だ。

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