獣になれない私たち 感想

けもなれ、全部ひっくるめての感想です。すごく、毎回いいなと思って見ていたのですが、いいなと思う点が、それぞれすごく個人的な感情に結びついているんじゃないかな、とも思いつつ、見ていました。

この、獣になれない私たちが扱っているテーマってすごく普遍的で、なんだよそんなの、昔から言ってるじゃん、とか思われるテーマでもあると思う。言いたいことが言えなくて、もどかしくて、自分のために生きれないという悩みをただただ、解決する話だから。
でも『フェイクニュース』を観ていた時や、『フェイクニュース』に関するハフポストの野木さんのインタビューなどを読んだ後に、これを観ると、今の時代にこの作品を作るというのは非常に大事なんだな、というのがわかる。

ちょっと間違えた人を徹底的に叩いていたら、誰も生き残らない。誰も幸せにならないと思うんです。

インタビューの中にこういう言葉があって、これが、ほんとに、ほんとに微かだけど繋がっていると思う。

ここからは主観になってしまうが、最近Twitterでは賢く生きる方法があちこちで発信されていると思う。こういうものに縛られないで、こんなもののためにあなたの人生を棒に振る必要はない。というメッセージだ。
それはもちろん、素晴らしいことだけど、徐々にそれもまた圧力となっているんじゃないだろうか。

ブラック企業にいるなら、やめればいいのに。嫌なことがあるなら、言えばいいのに。その辛い気持ちを見て見ぬ振りしたり、我慢するなんて馬鹿だ。という圧力。
今自殺しよう、という人に、死ぬ気があればなんでもできるよ、という言葉が届かないように、そういう正しさの圧力は人を救えない。

「ちょっと間違えた人を徹底的に叩く」というのと、賢い方法があるのにそれを選択できない人を蔑む、には近いものがあると思うのだ。
人間が正しくあれることを盲信する眼差しみたいなものだ。
そんなに、人間はうまくやれない。

だからこそ『獣になれない私たち』がその「獣になれなさ」をゆっくりと描くことに意味があったのだと思う。
それぞれが、それぞれの登場人物と自分の体験を重ねながら、獣になれない自分を見つめながら、このドラマを観たんじゃないかと思う。

そして、獣になれない私たちを救うのは、周囲との関係性だったり、自分の人生を取り返すという気持ちだったりする。
お互いに協力はしあうけど、自分の人生は自分のもので、他人のものではない、という線引きが大切だ。上野くんは社長を前にして晶に加勢をすることができたのも、協力はしても、他人の人生を奪わない態度で、今までの上野くんとはちょっと違う。
9話で晶と恒星さんが関係を持ってしまうのは、お互いに利用する関係で、後悔する関係だったっていうのも、その線引きと同じで、その距離感がきちんと描かれているのが、最高に良かったです。

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