ミッドサマー雑記

Twitterでミッドサマーの感想見てたら、Filmarksの感想以上に書きたくなってきてしまったので雑記。

みんな、自分の興味関心に引き寄せて物語を理解しているな〜〜というのが面白くなってきたので、わたしも存分に自分の好きなテーマに引き寄せて感想書いとこ、Twitterでもいいけどネタバレを含むから、エチケットとして回避可能なところに、というわけでnoteです。
以下ネタバレ含みます。

一部ではセラピー系と言われている本作、わたしは全然セラピー系と思わないよ宣言、なのだけれど、問題は村の持つ共感性を良いものと捉えるか悪いものと捉えるか、なんだろうなと思う。

わたしはこの作品の結末を、ハッピーエンド、というか爽快なエンド、と捉えるけれど、それはFilmarksに書いた通りこの作品は「なんでわたしの気持ちがわからないの!! わからないやつ全員死ね!」映画、なので、その形式にのっとれば、「やったあ死んだ!!」という爽快なエンドだからだ。

物語的には大正解で、あそこでクリスチャンを選ばなかったら、おいおい何してるんだよ……!って怒ってしまうと思う。
だから、ラストシーンの笑みをみて、いや〜〜よかったね〜〜おめでと〜〜ははは〜〜って思う。

共感の足りないクリスチャンと、共感してくれるカルト村があって、クリスチャンを捨てハッピーエンド! なわけだが、別に私はカルト村の共感をセラピー系だとはおもっていなくて、Twitterにミッドサマーは全体主義の危険性を表現している、といっていた人がいたけど、それに近い感想を持っている。

私がこの作品を引き寄せようとしたテーマは、みんな1つになっちゃえばいいのにSFで、強引なネーミングだけど、要はエヴァの人類補完化計画です。
人類が個の体という垣根をなくして1つのものとなろうとするSFと、その近似概念に対して、なぜか執着があるので(noteにも結構書いてる)、私はミッドサマーをそれに引き寄せながら観た。

ちなみに、このみんな1つになっちゃえばいいのにSFの、身体の垣根をなくし人類全体が溶け合う作品というのは、一応複数作品観測できてるのだけれど、その概念が出てくること自体が作品の致命的なネタバレになるので、あまり大手を振って言えない(でも人類が1つに溶け合う作品コレクションしてるので、知ってる人こっそり教えてください)。
なので、エヴァならもうネタバレしてもいいっしょと思って人類補完化計画みたいなもんよ!って呼んでいる。

この概念はディストピアの概念だと思っていて、人と人とが諍いを起こすのならば、1つになって仕舞えば良い、という考えが大体背後にあるのだけれど、基本的に物語はそれにnoを突きつけ、痛みはあるかもしれないが、個人は身体を持ち個別の存在であることを選ぶ。
不老不死を選ぶと不幸になる、のルールとかと同じ。欲望されるが、良いものではない。

身体は溶けないが、個体の特徴が限りなく削られていくことで(例えば同一の思想の強要や、制服の着用の強要)、集団全体が1つのもののようになる、のもその概念のバリエーションの1つで、管理社会系のSFにある(イメージ)。
全体主義を揶揄するディストピア、ユートピアものとか。

わたしは、みんなで喘ぐシーンと、みんなで慟哭シーンをみて、こ、これは!みんな1つになっちゃえばいいのにSFだ!!!! となったわけです。命は村内で循環するから、自死することは喜びなのです、という世界観だし、皆同じ服を着用しているし、まさにみんなで1つになる集団。

全体主義的な同一化は、支配のしやすさにポイントがあると思うけど、みんな1つになっちゃえばいいのに、は、コミュニケーションの不和が原因なので、ミッドサマーはより後者に近い。
彼氏との不和が原因で、自分の範囲を拡大したくなっちゃう同一化だ。
(まぁでも、全体主義も頂点に立つ支配者の自分の範囲の拡大による同一化ではあるか)

トランス状態の中言葉が通じないはずなのに言葉が通じる、みたいなのも同化の一種かもしれない。

そういうわけで、このみんな1つになっちゃえばいいのにSFの文脈で言えば、ミッドサマーの結末はそんなの選んじゃダメ!! なんだけれど(闇落ちだよ)、この村は全人類ではないし、そもそもカルトな村であり、この村は奇妙なもの(というかもはや滑稽)という描かれ方をしているので、この選択を物語がしても、問題はない、と思う。ホラーだし。

と、思ったのでした。

余談だけど、『ジョーカー』なんかで、妄想についても話題になったように、この映画も相手への怒りを元に考えた仕返しの妄想みたいなもの、という感覚があり、「くっそぉ、あいつなんてもう大嫌いだ、なんだってできるなら、こんな風にあいつを痛めつけるのに……」を2時間に閉じ込めた感がある。『五月の蝿』だよね。

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