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2月読んだもの観たもの

『須賀敦子全集』1巻
エッセイ。ちょっと先月読み残しがあったので完走。読めば読むほど、私の中でミラノの像が濃さを増していく。貴族というもののあり方や戦後のイタリアの様子、イタリアの各地域ごとの差など、いろいろなことを感じる。私はヨーロッパに行ったことがないので、架空のヨーロッパだけれど。
それから、さまざまな知人や友人を中心にエピソードが語られ、その時間的位置がさまざまで、年表的な進み方で作者の人生が説明されることもないので、幾つものエッセイが重なり合っていくことでようやく、ぼんやりと須賀さんの人生のあらましが見えていき、友人たちのつながりが見えてくる。
あと、全然海外に行きたいとか、海外に住みたいという欲を持ったことがなかったけれど、これを読むとむくむくその欲が湧いてくる。でもやっぱり須賀さんで、この時代で、さまざまな偶然が重なってこんな時間があったんだろうと思うので、結局それは憧れでしかないなと思いつつ、イタリアに行ってみたくなったな。
このエッセイは、須賀さんがイタリアで過ごした日々のかなり後に書かれたものなので、登場する人は結構な人数が亡くなっていて、それだからずっと失われたものについて書かれているのだが、なぜかそこにずっしりとした著者の佇まいがあって安心するので、いつか自分が大切な人を亡くしたとしても、この本がお守りになってくれるだろうなという感じがする。

ミハイル・バフチン『ドストエフスキーの詩学』
書籍。よみやすい! 読みやすいけど、こりゃすごい!メモ取らなきゃ!というよくまとまった文章が多過ぎてずっとメモ取っててなかなか読み進まない。
なんとなく自分がなぜドストエフスキーを面白いと感じたかがわかってきた気がする。前半マジで苦労しながら読むと後半に山がきて濁流に飲まれるように面白くなる流れとかもなんとなく納得がいった。まだ読んでない長編が読みたくなる(あの渦に飲まれる快感が忘れられないのであんまり短編に興味なかったけど、ドストエフスキーという人の作品全体に興味が出てきたな)。
あと、カラマーゾフはキャラ読みでいける、という話を冗談まじりに大学時代にしていたけど、そんな冗談でもないな〜とこれ読んで思った(関係ないが、ドミートリイが1番好き)。
後半は実例を挙げながらの説明が多いので、実際に自分で作品を読みたいな、という気持ちが先行してなかなか読み進まなかった。1人の長い台詞の中に、他者の声があるということの説明部分が面白かったな。

近藤聡乃『ニューヨークで考え中』
エッセイ漫画。本屋で返品される瀬戸際だったので、そんなならば私がおうちに引き取って帰るわ!!とおもって3冊まとめて購入した。やあやあ、よくきたね、と心の中でニヤニヤ呟きながら読む。
ぱっかーんと開くタイプの(コデックス装とかいうやつみたいな)閉じ方をされていて、漫画としては珍しい!と思う。ペーパーバックみたいな軽い紙に印刷されていて、それが意外とエッセイのトーンと合っていていい。

みんなで川に行きたい
集団創作の会。楽しかった。なんだなんだ〜〜?!って、感じでとても楽しかった。えへへ、でへへへ、というトーンでずっとリラックスして、最後にはみんなで川に行った。荒川やっぱりでかい。
友達が途中で離脱したのだけが心残りだったけれど、今度2人で川に行きたい。帰りに観に来ていた知らない人と2人で電車でおしゃべりして楽しかった。また、どこかに演劇を見に行った時に、偶然出会えるといいな〜。

丸山真男 加藤周一『翻訳と日本の近代』
書籍。翻訳はやっぱり日本の近代を考えるのに欠かせないので…と思ってタイトルで読んだ。所々わかるけどエッセンスというよりはよりは枝葉っぽい感じがあって、幹が欲しくなる。軽く読んだ。

近藤聡乃『ニューヨークで考え中』2.3
エッセイ漫画。紙を細長く切って緩衝材にするタイプの、緩衝材で高級な葡萄とかを優しく包んでいる紙には、特徴的な匂いがあると思っていて、その匂いと同じ匂いの紙が使われている、とおもう。なんとなく甘い匂いで、読みながら思わずずっと鼻でふんふんと嗅いでしまう。
それで、内容は1巻に引き続き、とても面白かった。プロローグとエピローグの大きな絵が凄くて、うわぁ〜ってなる、近藤さんの他の作品も見てみたい。個展とか行きたい。それにA子さんも読み直したいなと思った。
これも凄く大切な作品になるな!これから、と思う。うっすらゾッとする怖さについての話は繰り返して読みたい。一緒に生きていくマンガだな〜と思う。

はじまりから、いま。アーティゾン美術館の軌跡
美術展。面白かった。初めてアーティゾン美術館行ったけど、結構良かったなー。どちらかというと敷地がデカくてデカさ故に引いてみたとき平たくみえる美術館の方が好きなんだけど(横浜美術館とか、東京都現代美術館とか)、縦長の割にすき。展示も面白かった。どの時期に何を考えてどういう作品を集めたか、という展示で、コレクションってそうかこうやって集めるんだな、みたいな面白さ。最近ようやくなんとなく、美術館が何を所蔵してて、何を常設展に飾るかとかの重要性がわかったというか、それに近いものがあった。
作品はザオ・ウーキーの黄緑色の無題のやつがよかった。
あと、この美術館の代表的な作品の「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」がふてぶてしすぎて最高と盛り上がり、同行者とグッズ売り場できゃっきゃした。冷蔵庫に貼るやつ買えばよかったかもな。わたしは、カンディンスキーのトレーナーが売ってて、わーめっちゃいい!と買ってしまった。かわいい。またいきたい。

恋せぬふたり
ドラマ。録画4本溜めてたのでみ始めたら止まらず(気になるところで終わるし予告も気になる仕立てのタイプ)、ずだだだっと見る。我がふりを見返し反省もする。
とても面白いので、毎週ちまちま楽しみにしてみると思う。

古井由吉『野川』
小説。仕事の方が圧を増していてぐったりしてきていたので、評論じゃなくて小説が読みたい…と息切れしており、嬉しい短編集だ!というきもちで読み始める。1つ目の『埴輪の馬』から、時間の層が重なっていてあたふたする。書かれたのは晩年近くかな…?少なくとも後半の作風だな、とぼんやり思う。『石の地蔵さん』は会話の軽妙さと、パッキリとわかりやすい時間のジャンプ(ある意味この回想と連想のジャンプは映画っぽい)が面白い。次の『野川』で、あ、これ連作短編じゃん、と気づく。連作だと読み方の心構えが変わる。『白暗淵』とテーマや書き方は似ているけれど1つ1つの濃度が『白暗淵』の方が高いので、『野川』はどちらかというと、さらさら読める。
深く内面での話が連綿と続いているはずなのに、どこにもかしこにも身体の存在感が染み渡っていて、それが独特なのが特徴なのかもという気がする。
(次、古井由吉の何読もうかな〜と思って、amazonでパラパラ見てたら『仮往生伝試文』のレビューうっかり読んでしまって、悪文だ、ってこき下ろしている人みてしまった。ちょっと元気がなくなった。ぱっとは分かりにくいものに対する怒りがすごい。分かりにくいだけの何かは無害なのに)。

プルースト『失われた時を求めて』1巻
小説。岩波で読んでる。読み始めたけど全然すらすら読めるし面白いな、と感じているので、案外全巻さら〜っと読めちゃうかもな……(希望的観測)と思う。多分途中で、味変したいな〜みたいな飽きがくるだろうと思うけど、思ったより薄味なので、結構いけそう。あと感覚も似てる。ずぶずぶ調子良く潜れれば2〜3時間くらいお腹も空かずにぐいぐい読めるかも。少なくとも1巻を読んでいる途中でずぶずぶもぐっずぶずぶ潜っていく感覚は何度か訪れた。
須賀敦子のエッセイを読んだ時も思ったけど、貴族というものの存在に馴染みがないので、貴族の社交や常識や感覚ってこんな感じなんだ、と、その辺はよちよち読んでいる。

堀越耕平『僕のヒーローアカデミア』33巻
漫画。よすぎる……。まじにまじにまじに、感動ポイント友情努力勝利すぎる、練度がめちゃめちゃに高い友情努力勝利すぎるので、この作品を読んでいられるという幸運さと、話の内容との2重で泣かざるを得ず、乾涸びた。あと、前からそうなのですが、大人がまじでちゃんと大人なのと、みんなちゃんと己のダメだったところを振り返って落ち込むのがすごい。キャラが自分に正面切って向かい合い、きちんと落ち込むシーンって、作者がちゃんとそこを書くという気合いがないと書けないと思うので、まじですごい。語彙が死んでいる……。よすぎて…。

フレンチ・ディスパッチ
映画。よかったな〜。なんとなく、わかしょ文庫さんのことを思い出した。代わりに読む人の冊子に寄せていたわかしょ文庫さんの、小説ぽい作品と、語りの雰囲気が似ていたからだと思う。淡々としていてホッとする。淡々とした語りはずーっと聴ける。

名付けようのない踊り
映画。フレンチ・ディスパッチから梯子。シャンテからヒューマントラストシネマ。
有楽町のヒューマントラストシネマに何かを見に行ったときに、偶然大学の友達に会って、その友達は1人でシアターから出てきて、涙を流していて、ちょっと2人でびっくりしてそそくさと別れて、わたしはこれから映画を見るためにシアターに入った、という一連を思い出した(まじ余談)。
すごいいい映画だった。うずうずした。
古井由吉の『杳子』の、冒頭の山の中のシーンを思い出していた。内側に渦巻くものが炸裂しないでずっと抑えられているような感じ、似てるなーと思う。
身体性の有無って現実的には筋肉の動きやそのコントロールなどに関わっていると思うけれども、なんとなく「中腰感」なのでは、という感覚があり、中腰の状態にとどまれる肉体と精神がなければ身体性は炸裂しない!って感じする。

みつちよ丸/佐藤祐紀『生者の更新』
漫画。ジャンプラのジャンケンにお薦めされて朝だらだら一気に読んでしまった。
引力の強いストーリーラインに引っ張られながら読み進められるやつだった。こういうのなんだかんだ読んでしまう。あと、こういう悪意の混ざった話でも、作品の根本的な方針が爽やかなので結構心地よく読める。

ジャン=フィリップ・トゥーサン『浴室』
小説。図書館で借りたら、真ん中あたりがシワシワになっていて、浴室ってタイトルだからって、風呂で読んだ人がいたのだろうか、と思う。
浴室といえば、『フラニーとズーイー』でズーイーが入ってたな、と思うけど、想像上の間取りは、サリンジャーの方とは少々違うイメージ。映画の『イン・ザ・スープ』でブシェミが美味しくなさそうなご飯食べたり、電話していたりしたバスタブのイメージに近い感じ。
読みやすくてぼんやりした感じ。なんとなく全体の雰囲気は『ドリーマーズ』みたいだな。映画っぽいのかもしれない。
1段落ずつに番号が振られて、その段落が島のようにわかたれて、紙の上に配置されているちょっと変わった形式で、それが読みやすい。よく売れたのはそのせいかもと思う。べったりと緻密な現実の描写をすると、端折ったり大きく場所を変えるような話の展開が難しいと思うけど、この形式だと脈絡なくジャンプできて、物語を構成できるんだな〜と思う。あと、映画っぽいのはそのせいかも。段落が変わることが、ショットやシークエンスの切り替わりっぽい。
たぶん、『文学部唯野教授』に出てきたから読んだのだと思うがもう、何が話題にされていたのか思い出せず…。

細野晴臣 星野源『地平線の相談』
対談。昨日の夜、おんがくこうろんを見たばかりだったので、図書館であー、と思って手にとった。でも他のものを上限冊数の中で借りたい気分だったので、時間もあったしそのまま図書館で一気に読んでしまった。
ぬるぅ〜としていてぐだ〜となる。ほんと音楽好きなんだなぁすごいなぁと思う、私は音楽についてほとんど何も知らない。音楽できたら面白そうだなとは思う。
星野源のエッセイなんかでは、あまり両親の話は出てこないのだけれど、この対談にはちらほら出てきていて、そんな感じなんだ、とおもしろかった。
"男同士の話"みたいな感じもあって、くたっとする気持ちになる時もあるけどまぁこんなもんか〜と思う。

古井由吉『聖』
小説。初期の方なので、また全然違う。
最近読んでいた古井作品より明確に筋があって(長編なのもありそう)楽に読める。そしてしっとりして艶がある。たしかに『円陣を組む女たち』収録の作品はこんなだった、と思う。晩年に近い作品はもっとさっぱりな感じがある。
薄ーく張った緊張の糸は初期の方が強い感じがする。文章の隅々まで緊張が行き届いていて生き生きしている感じがある。

シマ・シンヤ『ロスト・ラッド・ロンドン』
漫画。ゔぁ!おもしろい!続きが気になる。
絵と言葉のテンポが海外の漫画だ、という感じがする。話が面白い。

読んだ記事
realsoundの古井由吉追悼記事
平野啓一郎の古井由吉追悼記事
平野啓一郎は三島vs東大全共闘の映画で色々解説をしていて、それをみて、この人の名前知っていたけど全く作品は読んでいないんだよな、思い至り、作品読みたいなぁとぼんやり思っていたが、この記事でより読みたくなった。
しかし、読めば読むほど知れば知るほど、古井由吉への興味が湧く。

黒田夏子『組曲 わすれこうじ』
小説。『abさんご』を読んだ時、てっきり私小説だと思って読んだけれど、思った以上に創作であった可能性が高いな……と、こちらを読んで思った。
文体がとても変わっているので(ひらがな多め横書き、句点がカンマ、固有名詞が出てこない)、『abさんご』以外の物語がこの文体の上にどう乗るのかイメージできていなかったけど、意外に違うことが書けるんだ〜というのが面白かった。この文体が私と作者との間で共有はされてなくて、作者の中で使いこなされた特殊な文体特有の面白い感覚かも。
この文体は、過去回想の形式とは切っても切り離せないという感覚や、老年の未来とかまではありそうだけど30〜40歳が自分の現在を語るイメージは持てないな…と思う。

鶴谷香央理『メタモルフォーゼの縁側』1巻、2巻
漫画。おばあさんの雑さと逞しさがリアルな感じがしていい。身近なおばあさんって祖母しかいないので、これが本当にリアルなのかわからないけど、綺麗すぎない感じが落ち着く。

松木いっか『日本三國』1〜5話
漫画。友達にオススメしてもらったやつ。めっちゃ面白い!! まだ始まったばかりでワクワク読める。

小山聡子・松本健太郎編『幽霊の歴史文化学』
書籍。田代慶一郎の『夢幻能』が気になるな……。
一通りざっと読んで、幽霊に興味が湧く気がするなぁ〜と思って、幽霊系のもの読むと、そんなに好きではないっぽいな……?と、何回かなっている気がする。
落語とか講談の幽霊が出てくる話は好きなんだけどな。物語に出てくる幽霊をもっと色々読んで見てからのほうがいいのかも。そしたら、あぁああいう幽霊ね、とか、あーあの幽霊のルーツはこれか、とかなるかな…?
ゾンビを専門にしている人が寄稿してて、そのゾンビ表象の歴史は面白かった。ヴードゥー人気だな!っていうのと!走るゾンビの誕生が思ったより最近だったり、いかにロメロがエポックメイキングだったかを誤認してた、めちゃ偉大やん、など学びが深かった。

『ちょっと思い出しただけ』
映画。なんか久々の邦画の気分。
伊藤沙莉ちゃんも好きだし、池松壮亮も好きなんだけど、どハマりまで行かなかった。帰りしな友達と女性の描き方の解像度がちょっと低かったかもね、って話をした(めっちゃ気になるとかではない)。

ラルフ・ジェームズ・サヴァリーズ『嗅ぐ文学、動く言葉、感じる読書』
書籍。サブタイトルは自閉症者と小説を読む。結構面白そうだな!って思って借りたけど読むモードにあんまりなれなくて、スッと図書館に帰してしまった。人と本が1セットになって語られるんだけど、その本が読んでないものだと結構難しくて、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』の人のだけ読んだ。

わかしょ文庫『うろん紀行』
書籍(紀行文)。ある人のnoteから、フヅクエを知り、阿久津さんの『読書日記』を辿って、柿内さんの『プルーストを読む生活』を知り、柿内さんのPodcastからわかしょ文庫さんにたどり着いた。フヅクエに行ったことがないし、読書日記もプルーストを読む生活も読み終わっていないけど、わかしょ文庫さんを読み始める。よくあるやつ(他二つの本がでかいのと、読むと読みたい本が増えそうで怯えているのもある)。
面白かった。読んでみたいけどちょっと読んでない本と行きたいけど行ったことない場所が結構取り上げられていて、読んだり行ったりしたい気がする……と思う。
全部通して読んでみて、とても素敵な本だった。通して読んでわかしょ文庫さんと生で相対してみたいなと思う。全然、会話したいとかではなくて、本を買う、見たいなワンオブゼムになりたいだけなのだけれど、文フリとかに行けば会えるかも。

『小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇』伊坂幸太郎編
短編集。伊坂幸太郎による短編のセレクション。全部まじで面白い。伊坂幸太郎はエッセイを含め、作品も、作者自身の人柄や考え方も、紙と文章を通して知る限りとても好きな人で、その人が選んだ人にウケる面白い小説は、やっぱめちゃ面白いな!!!って、久々に気持ちがスパークした。まえがきとあとがきもよかった。作品もよかった。ちょっと落ち込んでいたけど、フィクションが素晴らしくて、元気が出た。
眉村卓「賭けの天才」
こういう軽くって小気味良い短編とてもいい。短編集の導入部にふさわしい。
井伏鱒二「休憩時間」
井伏鱒二って初めて読んだぞ!と思うけど、確かに山椒魚書く人って(読んでないけど内容は知ってる)こういうものを書きそうかも、とふふっと内心思った。この人の娯楽小説面白そう、と改めて今更思ったので『ジョン万次郎漂流記』読もうかな。
谷川俊太郎「コカコーラ・レッスン」
まさに、詩についての文章で、谷川俊太郎の背後に流れる太い川の一部であるのがわかるような作品でとても好きだった。外側ではなく内側について書くことの難しさは確実にあるので、その内側への触れ方がやはりすごい……と嘆息する。
町田康「工夫の減さん」
落語みたいなタイトルでわらける。何気に未読の作家。文体に癖があるっていうけどこういうことね!と思いながら結構好きなリズムだ、すてきだ、と、くねくね捩れる気持ちで読む。面白かった。
泡坂妻夫「煙の殺意」
かの有名な「しあわせの書」を読んで以来。久々にミステリ読んだけどやっぱいいな〜と思う。デパートや死体の奇妙さが本当に心地いい。
佐藤哲也「Plan B」
中間で小休止。こういうのも好き。この人の他のやつ読んでみたいな! なんとなくだけど、牧野修とか読みたい気持ちに近いのではないかという気配。
芥川龍之介「杜子春」
急に正統派だ、と思いつつ名作枠かな?と思って読む。読みながら、あ、わたし鼻しか読んでないか?記憶にないぞこの話、と思う。なんとなく池のほとりのイメージはあるけど、鼻も池かなんか似たような景色が出てきたような記憶。2回目の贅沢のシーンでの、以下同文です、という語り口なんか、めちゃくちゃ面白い書き方なんだな、としみじみ味わって読んだ。
一條次郎「ヘルメット・オブ・アイアン」
さっきの杜子春を真剣に読んだわたしの気持ちを返せよ!!!と爆笑した。よすぎる。バカSFが観たくなる。B級SF映画みたいなテイスト。タクシー運転手がモヒカンになるのもいい加減にしろよって感じで、めちゃウケます。気分的には映画の「コンスタンティン」とか「フィフス・エレメント」とか。
古井由吉「先導獣の話」
これはやっぱり入れとかないと、と伊坂幸太郎が入れただけあるメチャほんとやっぱすげぇ小説!!!!と途中から凄すぎてテンションがぶち上がってしまった。短編なのに密度がすごい。つい最近『円陣を組む女たち』の中にあって読んだばかりだったけれど、あまりに全短編の密度が高くて読みきれてなかったんだな、と思った(詩歌の類が余白を大量に取って紙の上に組まれるように、物理的に余白を設けないと追いつけないくらい濃い文章なのだ)。他の人たちの作品の中にスッと入ってくると、ゆっくり息切れせずに読めてこの圧縮された密度の隅々まで味わい尽くすことができる。スティルライフの選評として「しかし宇宙からの無限の目は、救いとなる前にまず、往来を歩くことすら困難にさせるものなのではないか」という言葉を寄せているだけある短編で、そういうところが本当に好きで読んでいる。
宮部みゆき「サボテンの花」
とにかく文体が落ち着く。中学の時に熱心に読んだ作家だからか、めちゃくちゃ落ち着く。どこかとぼけてさらっとした印象のあるキャラクター、いたずらっぽさや茶目っ気。読んでいるうちになんだかこれは、知っているぞ……と思って奥付付近を見てみたら『我らが隣人の犯罪』に収録されている短編だった、あー!読んでる!最高の話だ〜〜。ほんととても好きな作品だ……。

国立民俗博物館
2年越しの!!って感じ。めちゃ歩いた。
かなり楽しかった。自分はこれをみたい!とか、この地域のことを知りたい!とか、そういう目的が明確だとまた楽しめそうだなーとか、特別展示だとコンセプトがぎゅっと絞られて、あれだけの膨大な資料の中から何か面白いものを見られるのだ!というワクワク感がありそうだー、とか思った。とても元気になった(足は疲れた)。

EXPO'70パビリオン
万博近づいているので、なんとなく2年前に行った時より万博記念公園がうずうずしている感じというか、おしゃれになってた気がする(あの意味わからんお土産屋兼ビレバンがなくなっていた)が、前回行けなかったパビリオンに行ってみたら昔の万博についてめちゃ学べた、嬉しい。
実は先日、『日本万国博覧会公式記録写真集』というものを買って、いろいろ予習していたので、あーーこれがこう!とか、へーーそんなことが、みたいなことがちらほらあり、楽しかった。万博のプロデューサーやアーティスト、デザイナー、映像陣などの名前も、へーーっていうのがあって面白かったな。

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