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キレイじゃなくとも美しいデザイン!? オーストラリアの街頭サイネージ

こんにちは、「Experience×Technology(体験×技術)」の岡田です。
近頃はデジタルサイネージなどを利用した、動きやインタラクティブ要素のある広告も多く、新宿某ビル看板の巨大猫など、魅力的で印象深い演出に出会う機会も増えてきましたよね。

今回とりあげさせていただくのはそんな街頭サイネージの海外事例なのですが、「ワクワクできる体験×技術」からは少し逸れてデザイン寄りのお話、そして人によってはゾワゾワするかもしれない事例です。

オーストラリアの街中に置かれたサイネージ(動画から抜粋)

シンプルで、必要十分

紹介するのはオーストラリアで行われたキャンペーンです。
さっそく動画をご覧ください。

ご覧いただければ分かる通りサイネージはシンプルな構成で、
モヤモヤとうごめく黒い何か」と、その横に「小さな端末」。
モヤモヤの上には「メラノーマの拡散ストップ」、
端末の下には「$1.99寄付するにはタップしてください」の文のみ。

このサイネージはメラノーマとの戦いを支援するための寄付や、その認知を目的として設置されました。
メラノーマ(悪性黒色腫)は、黒色のシミや腫瘤を特徴とする皮膚ガンの一種です。
黒いモヤモヤはメラノーマを表現しており、横の端末にクレジットカードをかざせば寄付が行われ、モヤモヤが縮小するシステムになっています。

アニメーション生成方法や反映情報、決済システムの仕組み、セキュリティなど技術面も興味深いですが、そこはさておきまして。
今回はデザイン面に注目していただければと思います。

余白のあるデザイン

強い紫外線が降り注ぐオーストラリアでは皮膚がん患者が非常に多く、
6時間に1人が亡くなるのだそうです。
重く、ショッキングな事実ですよね。

サイネージ内でうごめく黒いモヤモヤ、どのように感じますか?

増殖するメラノーマの表現(動画から抜粋)

じわじわと増殖するさまは不穏で心地よくはありませんが、寄付によってすぐに縮小されることもあり、目を背けたくなるほど不愉快ではないかと思います。
よく見れば「黒」の中にもカラスの濡羽のように、多彩な深みを感じられるかもしれません。

公共の空間に置かれるものとして、過度に不快感・トラウマを植え付けるようなデザインは当然よろしくありませんよね。
コンテンツへの嫌悪感がまわりまわって関係者たちへ悪影響を及ぼすような可能性も、絶対に避けなければなりません。

かといって、万人が親しみやすいような柔らかすぎる表現では、深刻な状況への理解や寄付というアクションにも結びつかないかもしれない、バランスの難しさ。

サイネージに反応する人々(動画から抜粋)

エンタメ要素を加えて楽しく寄付&ハッピーエンドを演出することも、逆にもっと危機感を煽る味付けや詳しい解説を盛り込むことも可能だったと思います。
けれどこのサイネージは淡々としています。

寄付が行われるとメラノーマは小さく抑制されますが、それでも完全に消え去りはしません。
伝えるべきを伝えつつも余計な説明は控え、演出はあくまでフラットです。
だからこそ見る人ごとに解釈を深められる余白があり、そうやって考えさせられることで記憶に残ります。

意匠と設計

「デザイン」はよく「意匠」や「設計」と訳されます。
この事例は、意匠としては少しおぞましいかもしれません。
けれど印象深く、関心と認知を広め、支援の意思を引き出せる良い設計だなぁ、と感じました。
キレイで心躍るコンテンツとは違いますが、無駄のない構成でキャンペーンの本懐を遂げる、とても美しいデザイン事例ではないでしょうか。

おわりに

今後も気になる「体験×技術」を紹介していければと思いますので、どうぞよろしくお願いします!
最後までお読みいただきありがとうございました。


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