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我が家の移住物語4 ~ 売買契約締結まで

入居交渉権を獲得し、リノベーションを請けてくれる工務店も決まったことで一安心していた我が家ですが、まさかこんなところに落とし穴があるとは思ってもいませんでした……

落とし穴は仲介業者だった

我が家が入居交渉権を獲得した物件を担当する仲介業者は、地域に本社がある建設会社で、その一機能として仲介もしているという業者です。

我が家がリノベーションを有吉住宅さんにお願いすると決めてから数日経ったころ、仲介業者から電話がありました。

「フカヤさん、リノベーション業者は決まってますか?」

「ええ、決まりました。」

「そうですか。リノベーションはうちに任せてもらえない場合は、売買契約以外の仲介業務は一切お断りしているんですが、それでもよいですか?」

「はい?それはつまり『農地転用』等の業務はそちらでは一切やってもらえないということですか?」

「ええ、そうです。この手のリノベーションは地域の業者に任せてもらうのが通例です。そのための空き家情報バンクですから。お任せいただけない場合は、売買契約以外の仲介業務はこちらでは一切やりませんので、フカヤさんの方でやってください。」

「その結果、我が家が売買契約に至れなかった場合はどうするんですか?仲介業者としてそれでいいんですか?

ええ、それはしょうがないことですので。

この時点で、この仲介業者は地域の定住促進なんてこれっぽちも考えていなくて、自社の利益にならない案件は請ける気がまったくないということに気づきました。
片手どころか指4本にも満たない価格設定の物件ですから、得られる仲介手数料もさほど多いわけではありません。
リノベーションを請けられないのであれば、こんな安い仕事は請けたくないということでしょう。

「地域の業者にリノベーションを任せないと、水道管が破裂した時なんかに地域の業者が緊急対応してくれないとか、そういう事態になりますよ。」

リノベーション、お安くやりますんでどうですか?

とは言え、僕の一存でリノベーション業者の変更なんて決めることはできないので、相談してみますと一旦電話を切りました。
電話を切った次の瞬間に、僕は支所の定住促進担当にクレームを入れました。

基本的には地域の業者を使ってもらうことが前提になるから、そこがそう言うならしょうがない。

困ったような声色で支所の定住促進担当。

本件は後から意図しない所で市役所の定住促進担当に話が伝わり、その際に市役所の定住促進担当に話を聞いたところ、

「この手のリノベーションは地域の業者に任せてもらうのが通例」
「基本的には地域の業者を使ってもらうことが前提になるから、そこがそう言うならしょうがない。」

なんてことは一切なく、そもそも行政が「地域の業者を使って」なんて言えるはずもなく、その様な制限は一切設けていないとのことでした。

本件は市役所的にも由々しき事態であり、後日支所にヒアリングをすると言っていました。
これから豊田市の中山間地域に定住を検討されている方はご安心ください。

分かりましたと電話を切り、今度は有吉住宅さんに連絡です。
有吉住宅さんに事の顛末を説明し、

「有吉住宅さんで、『農地転用』などをサポートしてもらうことはできますか?」

付き合いのある行政書士がいますからできますよ。ただ、うちでいいんですか?その仲介業者にリノベーションも任せるということでも構いませんよ」

ありがとうございますと電話を切り、今度は妻に連絡です。
我が家の妻、事の顛末を聞いてブチ切れてました。
夫婦の方針にブレはありませんでした。

「リノベーション業者は、有吉住宅さん一択。」

僕が妻に連絡したのは、有吉住宅さんでもサポートしてもらえるみたいだから、腑に落ちないが売買契約以外の仲介業務は仲介業者ではなく自分たちで行うことにするという確認のためです。
そもそも、こんな姑息な手段でリノベーション業務を取りに来る業者に、リノベーションを任せようなんて気になるわけがないのです。

それから再度、有吉住宅さんに連絡し、リノベーションとあわせて『農地転用』のサポートをお願いしたい旨を伝えました。

「承知しました。それでは、今分かっている限りの情報が欲しいので、支所もしくは仲介業者さんから物件に関する情報をもらえるようにお願いしてもらえますか?」

早速支所と仲介業者に連絡しましたが、どちらからも

物件概要に出ている以外の情報はないし資料もない

という回答……
仲介業者の「物件概要に出ている以外の情報はないし資料もない」は真っ赤な嘘で、ちゃんと情報を把握していたことは後からわかるのですが、それはまた後程。

情報も資料もない旨を有吉住宅さんに伝え、その状態で行政書士さんに相談してもらいました。

大家さんがこの仲介業者に恩を感じているらしく、仲介業者を変えるという選択肢はありませんでした。

田舎物件あるある

一連の手続きを進めていく中で、様々な『田舎物件あるある』が出てきました。
我が家が購入したい物件の売買契約を締結するためには『農地転用(農地法第5条許可申請)』が必要なわけですが、土地や建物の所有権登記が古いまま大家さんのお父さんの名義のままだった / 相続登記がされていなかった)であったり、そもそも相続登記のための遺産分割協議書が作成されていなかったり……
土地の所有権登記が古いまま = 現所有者を確認できないということなので、そのままだと『農地転用』ができないわけです。
現所有者の確認できないと、できないのは当然ながら『農地転用』だけではなく、物件と併せて購入する予定の994㎡の『農地の売買(農地法第3条申請)』もできませんし、もちろん『売買契約』も締結できません
また、登記されている建物の面積が、実情と合っていないこともわかりました。
大家さん曰く、この場所に建物が建ったのは明治だが、昭和の初めのころに建て替えたとのこと。
つまり、登記されている建物の面積は明治の頃のもので、建て替えしてから『表題変更登記』は行っていないということです。
私の記憶が正しければ、以下の流れで売買契約までもっていくことになりました。

遺産分割協議書作成

相続登記

表題変更登記

所有権保存登記

農地転用(農地法第5条許可申請)
農地売買許可(農地法第3条許可申請)


売買契約締結

そうです、遺産分割協議書の作成と各登記は行政書士ではできませんので、司法書士にも別で依頼をすることになりました。
司法書士も、有吉住宅さんに紹介してもらった人です。

費用については、遺産分割協議書の作成や各登記については大家さん負担、農地転用については我が家の負担となりました。
農地売買許可は、行政書士に相談したところ、さほど難しい許可申請ではないということで、僕が自分で許可申請を出しましたので、費用は特にかかっていません。

この後、994㎡の農地に建物の登記が残っていることが発覚し、『建物滅失登記』もしてもらうことになりました。
この登記が残っていた建物、大家さんはおろか100歳近い大家さんのお母さんでもご存じなかった建物だったので、いつ頃まであったのかもまったく不明な建物でした。

これが全部、『田舎物件あるある』だそうです。
我が家のケースはまだマシな方で、ひどいケースになると遺産分割協議書を作成しようにも、相続対象人で行方不明な人がいたり、遺産分割協議で揉めるなどして分割協議書の作成が進まないなんてこともあるようです。

僕の役割

行政書士、司法書士、有吉住宅さんのタッグチームで売買契約に向けた諸手続きを進めてもらっていたわけですが、主に大家さんとのコミュニケーション面で度々問題が出ました。
当然です。
大家さんは仲介業者に依頼したはずなのに、その仲介業者はまったく出て来ず別の業者が売買契約に向けた諸手続きを始めたのですから。
大家さんには僕からも「仲介業者が売買契約締結以外の業務はそちらでやってほしいと言われたので、売買契約を締結するためにはこの方法しかないのです」とご説明しましたが、主に諸手続きにかかる費用面で納得できないところもあったようです。
行政書士や司法書士が行う業務なんだからどこに頼んでもかかる費用は一緒でしょという話なのですが、件の仲介業者がどういう話をしていたのか……
そこは行間というか空気を読んでください。

そんな中で、件の仲介業者から電話がかかってきました。

「大家さんが困ってるって連絡がありました。ちゃんと手続きは進めてもらってますか?」

「ちゃんと進めてもらってますよ」

仲介業者が大家さんに「うちでリノベーションやってくれない案件なんて知らない」ってちゃんと説明しないからこんなことになってるんだろなんて内心では思いつつ、のらりくらりと仲介業者からの質問をかわしていると、

フカヤさん、有吉住宅さんは地元の人からの紹介だったんですね。相談に乗れることは相談に乗りますよ。

おたくが移住に失敗しようとそんなことは知ったことではない』ぐらいの温度感だった仲介業者からの、まるで手の平を返したかのような申し出
ここからは憶測ですが、この仲介業者、我が家が地域と何のコネクションもないと思っていたところ、有吉住宅さんを紹介してもらったりと地域とそれなりなコネクションがあることに気づき、そのコネクションが影響力のあるコネクションであったことから手の平を返して来たな……と。

そういうことならと仲介業者に愚痴るフリをして物件に関する情報を聞いてみると……

物件概要に出ている以外の情報はないし資料もない

なんて言っていたのに、一連の『田舎物件あるある』を全部把握していたことが発覚。
情報あるんじゃん!」と思いつつも、そこは僕も大人ですから、特に問い詰めるとかそういう無粋なことはせず。

そんなこんなで何とか諸手続きを進めてもらい、無事に農地転用(農地法第5条許可申請)の申請もできました。
そんな矢先、『994㎡の農地に建物の登記が残っている』ことが発覚したと、有吉住宅さんから連絡がありました。

「フカヤさん、大家さんと自分たちの間に入ってもらえませんか」

ただでさえ費用面でご納得いただけていなかった大家さんに、更に追加で費用がかかる『建物滅失登記』の話をしなければならない。
これ以上は有吉住宅さんからでは荷が重いということで、大家さんともコミュニケーションが取りやすい当事者の僕に白羽の矢が立ちました。

その頃、我が家は第三子が生まれるタイミングだったので、それに伴って取得する予定だった育休期間の間に、諸々の問題を解決することにしました。

大家さんと僕

ご縁』というものはあるんだなと感じる瞬間があります。
大家さんと僕にも、そんな『ご縁』を感じる瞬間がありました。
大家さんがお住まいの家(大家さんはもう少し街の方に家がある)の近所に、僕が働く会社の取引先の事務員さんが住んでいたのです。
『地域面談』で僕の仕事の話をした時に、大家さんがその取引先の名前を出した時は驚きました。
僕の仕事は、けしてメジャーな仕事ではないからです。
共通の知人がいると、距離感がグッと縮まる感じがします
この広い世界で、いくら豊田市の中の話とは言えども42万人が暮らしているわけです。
その中の1人とお互いが面識があるというのは、なかなかの確率です。

※そういう意味では件の仲介業者ともそういう『ご縁』があるのですが……『ご縁』があればうまくいくとは限らないってことですね……(笑)

そんな『ご縁』もあってか、大家さんと僕の関係は良好でした。
一歩間違えたらご破談になる可能性があった今回の仲介トラブルも、そんな『ご縁』と大家さんの人柄で乗り切ることができました。

豊田市の移住・定住に関する補助・支援制度

豊田市には、豊田市中山間地域に移住・定住をする人に向けた補助・支援制度があります。
我が家が使ったのは『農地取得の制限緩和特例』と『豊田市山村地域等定住応援補助金』です。

農地取得の制限緩和特例

農地取得の制限緩和特例』は、空き家情報バンク等で空き家を買う場合に限り、1アール以上10アール未満の空き家に付随する農地を取得することができる制度です。
1アールは100㎡ですので、10アールですと1000㎡です。

通常、農地は農家でないと取得することができません
農家になるには『農家資格』が必要で、豊田市では約5年の耕作実績があると、農業委員会より農家として認められ『農家資格』を得ることができます

我が家は、物件に隣接していた994㎡の農地をこの特例で物件と一緒に取得し、現在は耕作実績を積んでいる状態です。
耕作実績が認められ、無事に『農家資格』を得ることができれば、大家さんとの間で使用貸借権を設定している残りの約3,600㎡の農地についても取得できるようになります

この特例は農地取得に関連する特例ですので、農地売買許可(農地法第3条許可申請)を申請する際の許可申請書に、特例を利用する旨を記載することになります。
また、農地売買許可(農地法第3条許可申請)の申請にあたっては、許可申請前に農業委員会との面談も必要になります。
許可申請書の書き方は、この面談の際に農業委員会の方が親切丁寧に教えてくれますし、申請書提出前に申請書の添削もしてくれますので、僕は自分で許可申請をすることができました。

この『農業委員会との面談』、支所の定住促進担当が日程を調整してくれるのですが、我が家の場合は定住促進担当がその調整を失念し、結局その面談が行われたのは売買契約締結前日だったという……

豊田市山村地域等定住応援補助金

豊田市山村地域等定住応援補助金』は、豊田市の中山間地域に地域活動への参加を前提に定住するための住宅を取得した場合に、住宅取得に要する費用の一部を補助してもらえる制度です。

詳細は上記リンクから確認してもらうのが確実ですが、補助金額は『住宅:取得費の10分の1以内(限度額50万円)』、『住宅用地:取得費の10分の1以内(限度額50万円)』です。

補助には下記の条件を満たす必要があります。

定住するために新たに住宅を取得し、自治区などの地域活動に参加する意思があること』

取得した住宅に居住し、住民票を異動すること』

市町村税を滞納していないこと』

当該建物の住宅取得に伴う登記を行い、所有権を2分の1以上有すること』

山村地域等に、新築又は購入するもの(ただし、増築は対象外)』

契約日(住宅の建築工事請負契約日または売買契約日の前事前申請を行うこと』

補助の交付申請時に、義務教育終了前の子どもと同居していること、又は申請者若しくはその配偶者の年齢が40歳未満であること(この条件に該当しない場合は、限度額が変わります)』

上記の通り、『契約日(住宅の建築工事請負契約日または売買契約日)』の前事前申請を行う必要があります。
また、住宅完成後に、『住宅の取得に伴う登記の日または、住民票を異動した日から1年以内』に、交付申請兼実績報告を行う必要もあります。

我が家は、物件の取得額がそもそも片手にも満たない金額でしたので、補助も限度額までいかず、おおよそ『農地転用(農地法第5条許可申請)』で行政書士さんに支払うぐらいの金額でした。

ちなみに、『豊田市山村地域等定住応援補助金』は空き家情報バンクの利用有無を問わず申請できます

豊田市山村地域等空き家再生事業補助金 【空き家改修補助金】

我が家が物件を購入した時は、売買契約には使えなかった補助金ですが、この投稿のために再度情報を調べたら売買契約時でも使えるようになっていました……
こっちの補助金の方が、『豊田市山村地域等定住応援補助金』よりも補助上限が高いので、こっちが使いたかった……

豊田市山村地域等空き家再生事業補助金 【空き家改修補助金】』は、空き家情報バンクにより、賃貸借契約又は売買契約が成立した空き家に対し、改修に必要な経費の一部を補助するという制度です。

補助金額は『改修費の10分の8(上限100万円)』、『豊田市山村地域等定住応援補助金』よりも50万円も上限が高い……

ただし、この補助金には落とし穴があります
この補助金、その物件が過去にこの補助金を受けていた場合当該物件はもう補助を受けることができません
過去にこの補助を受けた者が交付対象外となるのではなく、過去にこの補助を受けた物件が交付対象外となります
このパターンはではありますが、ないというわけではないので、注意しておいた方が良いポイントです。

売買契約締結

2018年11月上旬には農地転用(農地法第5条許可申請)の申請もでき、12月上旬~中旬には転用許可が下りる見込みだったため、大家さんと件の仲介業者と調整の結果、売買契約の締結は2018年12月19日に決まりました。

この調整の中で、支所の定住促進担当が農地売買許可(農地法第3条許可申請)の申請に際する許可申請前の農業委員会との面談を調整するのを失念していたことが発覚したわけですが……

前述の通り、許可申請前の農業委員会との面談は売買契約締結日の前日でしたので、売買契約締結時点で農地売買許可は下りていませんでした。
ちなみに、12月上旬~中旬には転用許可が下りる見込みだった農地転用(農地法第5条許可申請)も、この年は県での処理に時間がかかり過ぎて売買契約締結時点で下りていませんでした。
もう笑うしかない状況です(笑)
その為、売買契約書には特記事項として『農地転用許可と農地売買許可が下りたら有効』という旨が記されていました。

そんな状況下にも関わらず我が家、売買契約締結当日に、売買代金を、現金で、一括払い、しました。
まぁ、大家さんとの関係は良好でしたし、農地転用(農地法第5条許可申請)農地売買許可(農地法第3条許可申請)も許可が下りる自信がありましたし。
何よりも、2019年3月末に転居するには、ここで売買契約を締結してしまわないと、リノベーションに着手できないという問題がありましたから。

長かった4カ月

『地域面談』から約4カ月、こうして我が家は無事に売買契約を締結することができました。
色々ありしたが、大家さんの一家とは今もいい関係を続けています。

件の仲介業者はその後、「重要事項説明書に記載漏れがあったから訂正したい」と言ってきました。
今後、もしその物件を売却することになった時に記載漏れがあると困るから」というもっともらしい理由をつけていましたが、そもそも重要事項説明書の記載漏れは『重要事項説明義務違反(宅地建物取引業法第35条違反)』です。
既に売買契約が成立し、特に瑕疵もなかった取引において、今後我が家がもし家を売却することになった場合、改めて記載漏れした内容も含めた重要事項説明書を作成することになるでしょうから、現時点で記載漏れがあって困るのは『重要事項説明義務違反(宅地建物取引業法第35条違反)』を犯した仲介業者の方です。
にも係わらず、その仲介業者は反省の色がまったく見られない態度なんですよね……
なので、重要事項説明書の訂正はしていません
この仲介業者とは、できることなら2度と関わりたくないと思っているので、「重要事項説明書を家まで取りに来て」とも言いたくないですし、こちらで送料を負担して送るのもバカバカしいですし……

※「いやいやいやいや重要事項説明書は訂正しないとあかんやろ」ってことでしたら訂正してもらうので、ご意見くださいませ(笑)

誤解のないように言っておきますが、この仲介業者とのやり取りを除いては、我が家の移住物語はバラ色ですし、定住後もバラ色です。

次回は『我が家の移住物語』を締めくくる、売買契約後の話。
引越までをお話しします。
と言っても、もうこんな波乱はありませんので、読み応えがあるのは今回までかもしれませんが(笑)

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