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「今日から副業禁止です」社員が猛反発。就業規則の新設による労使間トラブルを回避するための心得

設立したての若い会社では、バックオフィスや社内制度が整備されておらず、社員の副業は「暗黙の了解」となっている場合が多いです。会社の成長に伴い、経営側が「就業規則」を定めるにあたり、暗黙の了解であったはずの副業を明確に「禁止」と打ち出したため、社員とのトラブルに発展したケースがありました。このようなトラブルを回避するにはどのようなことができるでしょうか。

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小規模の会社で「暗黙の了解」だった副業

Cさんは2018年4月に創業されたフィンテックスタートアップの創業メンバーです。経営側ではなく、正社員として雇用契約を締結しています。参画当時は5名程度のメンバーしかおらず、設立して間もないため給与がそこまで高くないことから、Cさんは収入の足しにするために副業をしていました。

データサイエンティストとしての技能を生かして、2018年10月頃から現在まで、大手IT機器メーカーから、IoT製品のデータマイニング業務を受託しています。契約形態は業務委託契約です。

Cさんが副業していることは本業先の経営陣も知っていました。その当時は、副業に関する決まりはおろか就業規則すら定められていない状態で、Cさんの副業は周囲の暗黙のうちに認められてました。

新しく制定した「就業規則」が社員の猛反発を買う

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Cさんの本業先は、会社と事業の成長に伴い、2019年11月に「就業規則」を定めました。それまで扱いがあいまいだった副業に関しては明確に「禁止」の方針を打ち出します。

これにCさんは猛反発をしました。「自分が副業をしていることを知っているはずなのに、禁止にするとは何かの当てつけか!」

Cさんは創業メンバーでもあり、データサイエンティストとして会社に欠かすことができない幹部人材となっていました。本業先は、事業規模も多くなり、社員も30名程度になりました。支払える報酬額も増えてきたので、Cさんに本業に専念してほしいとの思いで「副業を禁止」とした就業規則を打ち出しました。

これに、Cさんだけでなく、まわりの社員も反発します。Cさんに触発され、副業に取り組む社員が大勢いました。会社のコアメンバーでもあるCさんを中心に、副業容認を求める有志の社内組織が作られ、就業規則を巡り、労使間で喧々諤々の論争となります。

「副業を容認しなければ会社を辞める」Cさんを中心としたグループの一言がきっかけとなり、結果として本業側が折れることになりました。本業の就業規則で、副業の扱いは「禁止」から「届出制」に変更。加えて、代表が社員に公式に謝罪をすることになり、労使間に信頼関係を損ねてしまうことに。

就業規則の新設や変更は慎重に。事前に社員との合意形成を。

スタートアップなどの若い会社が、新しく就業規則を制定する際に、既存メンバーとのトラブルを起こす事例は多いです。今回の場合、社員への事前のヒアリングや話し合いもなく、経営側が一方的に就労規則を打ち出してしまったことが、トラブルの原因の1つといえます。

2018年1月に厚生労働省は「モデル就業規則」で副業を原則禁止から原則容認としました。その上で、副業や兼業を「届出制」とすることを推奨しています。モデル就業規則68条を見てみましょう。

(副業・兼業)
第68条
労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
1.労務提供上の支障がある場合
2.企業秘密が漏洩する場合
3.会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
4.競業により、企業の利益を害する場合

副業を「禁止」にしてしまうと、会社に黙って副業を行う「伏業」がかえって増加してしまいます。副業を「届出制」にすることで、モデル就業規則上「労務提供上の支障がある場合」「企業秘密が漏洩する場合」「会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合」「競業により企業の利益を害する場合」の4つに該当する場合は、副業を禁止や制限できるので、会社を守ることにつながります。

「副業」に関する規定を新設したり変更したりする場合、労基法に定められている従業員過半数代表の意見を聞くだけでなく、誤ったメッセージの伝達や意図しないトラブルを防ぐためにも、事前の社員コミュニケーションや、コア社員を中心とした合意形成をしておくことが重要です。

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これにより会社を守るだけでなく、労働時間の適切な管理や反社チェック機能などを通じて副業をする社員を守ることにもつながり、より労使間の信頼関係を強めた職場環境づくりにつながります。

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取材・執筆: 石塚 健朗 (いしづか たけろう)
学生時代よりVC等でスタートアップや大手企業の新規事業創出支援。面白法人カヤックを経てマーケティングブティック「KIUAS」創業。サウナと北欧が心の故郷。
Twitter: @Takeroishi


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