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【#9】疲労とパフォーマンスとリカバリー

S&Cコーチはトレーニングの専門家です。
トレーニングやコンディショニングメニューを駆使して選手のパフォーマンスを高めることが役割です。

ただ、トレーニングをするだけでパフォーマンスを向上することができるかというと、そんなに簡単ではありません。(簡単だったらいいのに、、、)

今回は疲労とパフォーマンスの関係性に触れつつ、リカバリーについての自分の考えをまとめていきたいと思います。


疲労とパフォーマンスの関係性

汎適応症候群

人間の体には、汎適応症候群と呼ばれる、さまざまストレスに晒されたのちに、その刺激に適応し、そのストレスに耐えうる状態まで回復するといった機能が備わっています。

例えばトレーニングでいうと、初めは100kgの重りが持てなくとも、60・70・80と徐々に重量というストレスを高めていくことで、体が徐々に重さに適応し、最終的に100kg(というストレス)も持てる(適応できる)ようになりますよね。

この考え方をもとに、構築された理論が、
『超回復理論』と『フィットネス疲労理論』という考え方です。

超回復理論

超回復理論とは、『トレーニングなどにより体に負荷が与えられることとその負荷による疲労が回復する過程の中でパフォーマンスが決定する』という考え方です。

超回復理論

超回復理論では、パフォーマンスを決定する因子がトレーニングでの負荷による体の反応のみのため、その時のパフォーマンスをうまく表すことできない場合が多いです。
例えばトレーニングをした直後は、扱える重量が下がることはなんとなくわかると思いますが、体の疲労が回復しきるまで扱える重量が下がったままかというと、そんなことはないと思います。


フィットネス疲労理論

フィットネス疲労理論とは、『パフォーマンスは体力要素と疲労要素を掛け合わせたもので決定する』という考え方です。

フィットネス疲労理論。
※フィットネス=体力要素、準備性=パフォーマンス

フィットネス疲労理論では、体力要素と疲労要素を掛け合わせることでパフォーマンスを表すことができます。
トレーニングをすると体力要素は徐々に上がっていきますが、同時に疲労も高まるためパフォーマンス自体は一時的に低下します。
その状態からトレーニングとリカバリーを駆使し、体力要素を高めた状態で疲労を抑えていくことで、パフォーマンスの高い状態を実現することが可能です。

超回復理論と比較すると、パフォーマンスを決定する因子が”体力要素”と”疲労”の2つになるため、違った見え方になるのがわかるかと思います。

スポーツ現場において

結論から言うと、スポーツ現場における選手のパフォーマンス管理においては、フィットネス疲労理論をもとに考慮されることが多いです。その方がより正確にパフォーマンス管理が可能です。

超回復理論でシーズンのピリオダイゼーションを考えようとしても、試合や練習、トレーニングが重なるなかで、パフォーマンスを維持しながら負荷を調節していくことは難しいです。

その点、フィットネス疲労理論で考えると、試合までの期間である程度体力要素を高めていき、試合が近づくにつれて負荷を調節し疲労を軽減させていく(=テーパリング)を行うことでパフォーマンスの準備を行いやすくなります。

もちろん私もフィットネス疲労理論から、シーズンスケジュール(練習日、試合日など)を考慮してトレーニングメニュー等を作成しています。

※フィットネス疲労理論に関しては、ここではひとまずトレーニングによる体力の状態と疲労の状態が合わさってパフォーマンスが決定すると考えてもらえれば大丈夫です。(この理論に関してはまた別で記事にしたいと思います。)

つまり、何が言いたいかというと、
疲労の管理(トレーニングからのリカバリー)が、パフォーマンスに関係が深いということです。

リカバリー

基本的なことできてますか?

疲労とパフォーマンスの関係性に触れた上で、
リカバリーについての私の考え方のベースですが、

結論から言うと、『ちゃんと食べて、ちゃんと寝ること』と選手に伝えています。

そんなことかい。とツッコまれるかもしれませんが、大事だとわかっていながらも、これができていない選手が多いです。学生だと特に。

もちろん、他にも様々なアプローチは取ります。

・練習後のストレッチ
・練習後のプロテインやケータリングによる補食の準備
・アイシングやアイスバス
・治療家さんによる施術
・試合後のアクティブレスト

などなど。

上記はある程度指示をしたり、強制したり、チームで時間を取ることで実行できる場合が多いです。

しかし、食事や睡眠はプライベートな生活も関わるため、なかなか全て管理することが行き届かず、ある程度は選手に任せることになるかと思います。

特に学生の場合だと、チーム活動のみならず、学校の課題やアルバイトに追われる場合もあるため、日頃から食事・睡眠の重要性を説かなければ、それらが後回しになってしまうことも起きかねません。

私はことあるごとに食事・睡眠の重要性を選手に説き続けたり、睡眠や食事について簡単な資料などを掲示することで浸透することを狙っています。

食事と睡眠がリカバリーの根幹と考え、選手に重要であると認識してもらい、日常でいかに実践してもらえるかを考えてアプローチいきたいと思っています。

まとめ

今回の記事では、疲労とパフォーマンスの関係から、リカバリーについて書いてみまして。

書いていく中で、自分自身が物事の根幹を捉えて行動することの重要性を再認識しています。

細かな事象に目を向けてそこを改善していくことも重要ですが、それよりもまず根幹となるものをより良いものにしていく方が成功への近道となることが多いと感じています。

今回はリカバリーについてでしたが、トレーニングや競技練習でも同じことは言えるはずです。特に、ネットやSNSの普及で情報が得やすくなっている昨今、自分で情報を見極めなければならない時代です。

様々な場面で見えてくる(SNSでの目新しい情報などの)枝葉の部分にこだわりすぎて、根幹を見失うことがないよう注意したいものです。

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