転職にあたりまとめた「事業主にいるマーケターとしてあるべき10個のスタンス」
どうも、フクパンマンです。
SNSでは発表しましたが、この度2021年9月1日かキラメックス株式会社というEdtechを牽引する企業に転職し、オンラインスクールのマーケティングを担当させていただくことになりました。転職話はまた別の機会で書かせていただきます。
ベンダー側として7年勤めた後、事業主側として6年勤めて様々なことを経験してきましたが、退職の際に忘備録もかねて私なりに感じた「事業主にいるマーケターとしてあるべき10個のスタンス」としてまとめて社内でプレゼンさせていただきました。
ぜひ皆さんにも、と思いnoteにまとめました。どちらかというと事業主の若い方向けですが、もしかしたら年代問わず、もしくは受託側の方にも一つ二つは参考にしていただけるかもしれないので、僭越すぎますが大それた題名のままいかせていただきます。
ちなみに、あくまでスタンスであり、マーケティングの勉強はきちんと別にしてください。以下、参考記事です。(下記だけ読んでも勉強になります)
それではどうぞ。(以下内容的に口語体にしています)
1.3つの愛を持て
「事業主もベンダーも代理店も「愛」を語り合おう」という連載でも書かせてもらったことなのだが、とにかく一番大事なスタンスとして常に「3つの愛」を意識して仕事している。
①サービスへの愛:
自社のサービスや商品なのに、自分の関係があることしか知らないことが多い。徹底的に勉強、研究しよう。そして家族や友達に自信をもって推薦できるところを見つけよう。それができなければ、そもそも"消費者の生活にサービス・商品を置いてくる"、いわばブランディングが成立していないはずだ。「今いる会社のサービスや商品は誇らしい」―それを認めて愛そう。隣のチーム、別の部署のことをもっと知ろう。まずは、そこからだ。
②ベンダー・代理店・業務委託先への愛:
受発注して金銭をやり取りするだけの仲ではない。プロジェクトを成功させる仲間だ。徹底的な情報提供を行い、期待や不満を「文句」ではなく「具体的な内容」で示し、常にプロジェクトをうまくいかせる工夫を忘れずに。そして成功して、苦楽を共にし合い喜びを分かち合おう。
③ユーザーへの愛:
決して隠さない。嘘をつかない。ユーザーになりきって、「本当にこの表現はわかりやすいのか?」を考える習慣を。また、サービスの隠れた魅力があるとすれば、伝えきれていないことは責務を果たせていないことと危機感をもつ。サービスの対価として金銭を受け取っているのだ、それに対する対価が十分かを常に意識しよう。
僕は特に②を大事にしていて、ベンダーや代理店の方に「ひけらかし勉強会」を定期的に開催していた。自社のサービスや商品、キャンペーンや制度を紹介するため1,2時間くらい時間をもらって情報をアップデートする会だ。これをやることで自分で常に情報をアップデートしないといけないし、結果ユーザーへの情報提供も効率化され、上記①~③のすべてを達成できるのだ。
2.代理店・ベンダー・業務委託先は受発注先ではなく「パートナー」
前述の項目の②「ベンダー・代理店・業務委託先への愛」をさらに深く考えてみよう。どうしてか事業主は、発注先を下に見たがる。それによって謎の上下関係が発生してしまい、プロジェクトが円滑に回らなくなる。その時点でプロジェクトは失敗に終わる可能性が高いし、成功してもつまらない。
受託側、発注側両方にいた経験から、プロジェクトを円滑に回し成功に導くスタンスを五つまとめてみた。
2-1.下請けではなくパートナー。お金を払っているのは会社で、あなたではない。上下ではなく横並びと考えよう。
2-2.時間や対価に対してお金を払っている。発注先の人月・人日単価を意識しよう。無駄な仕事を頼んでないか、逆に検収物のクオリティは保たれているかしっかりチェックしたか?
2-3.情報共有はリアルタイムに惜しげなく。NDAを結んでいる意味。情報を出す責任と覚悟、そして情報をもらう責任と覚悟。
2-4.プロジェクトリーダーは現場とばかり話さない。視座が低くなる。今のプロジェクトを施策ベースだけで会話しない。ビジネス課題を定期的に話せるよう、上席同士の会話量を増やす、もしくは自身が上席との会話量を増やす。
2-5.率直に言うことこそ礼儀。回りくどく言って得するのはその場だけ。そして仁義を重んじよ(嘘をつかない)。
これは、何も事業主だけにいうことではない。逆にそうしてもらえるようにベンダーや代理店はプロとしてのスタンスを示さないといけない。
3.今を疑い、視座を高めろ
1つのプロジェクトや今やっている施策の成功だけでなく、会社としてあるべき姿を考えよう。「マーケティング」の理想はプロモーションしなくても売れる仕組みを作ること。ブランディングは消費者の生活に商品サービスを置いてくること。それが、単なる短期的なKPIをおいかけることになってないだろうか。
今やっていることはマーケティング全体においてどういう役割を果たすのか。ただの作業ではなくマーケティングプロセスの一環であることを常に意識すべき。しかし、プロジェクトを長くやっていくと「部分最適」することがすべてになってしまう。
3-1.プロジェクトの元々の目的・ゴールを常に意識する。必ずどんどんずれていく。
3-2.小さい話にまとまってないか?議論している部分を改善したとて、実際全体への影響は高いのか?を意識する。どんなに頑張っても成果が1件しか増えないのに、一生懸命時間をかけて議論してしまっていることは本当によくある。
事業主の立場としてだけでなく、ベンダーとして、代理店としても、全員が常にこれを意識しよう。受託側としてこれを発言するのは勇気がいることだが、プロとしての発言は信頼にしかつながらない。プライドと信念と勇気をもってぜひ発言してほしい。
4.天使のシナリオ、悪魔のシナリオ
~徹底的なユーザー視点でのあらゆるクリエイティブ/プランを疑う姿勢~
これは中途で来られた、元代理店でマネージメントをしていた方から教わった教訓。非常に刺激的で大事な内容だったのでご紹介させていただく。
「新しく考えているプロダクトやサービス・機能を出すだけで市場のポジションが獲れると錯覚してしまう」というのが【天使のシナリオ】。たいていの会社が、プロダクトアウトの文化が浸透してしまっておりこの天使のシナリオに盲目的に陥ってしまう。
一方、「それだけでは市場のポジションが取れない、ワーストシナリオを常に考えて、それの対策を考える」のが【悪魔のシナリオ】。この悪魔のシナリオにいかに立てるのがマーケターとしての資質だとも思う。
・STPを常に意識する。
・劣後していることを前提とする。
・徹底的に一般消費者の視点に立ち返る。
この3つだけ意識すればいいのだが、それがまた難しい。消費者の本音に向き合う覚悟があるか。描いたカスタマージャーニーは都合のいいものになっていないか(たいてい都合よく作ってしまう)。斜に構える必要はないが、常に悪魔のシナリオを意識しよう。
5.インプット&アウトプットしか成長しない
「成長したい」「新しいことをやりたい」と言っているのに一切インプットとアウトプットをしない。言っていることとやっていることが違う典型的な例だ。
『好奇心を持つことだけは教えることはできない』 by 𠮷野家伊東氏
常に好奇心をもっているのは思ったより難しい。この伊東氏の言葉はすごく刺激的だ。
さらに、インプットするのは時間が要るが、それをアウトプットするのはもっと労力がかかる。
プリファードネットワークスCMOの富永氏と面談させていただいたときも、「常に言語化することが大事」というアドバイスをいただいたが、それはアウトプットしないと言語化できないからだ。私がわざわざnoteを書くのもこれだ。
そのため、私は以下のようなことを数年やり続けてきていた。
・月に数件は必ず、今取引が無い、もしくは新しいベンダーや代理店との話を聞く
・取引があるベンダー・代理店・委託先とも必ず1,2か月に一回は話をする
・セミナーに参加する。本を読む。
・ブログやレポートや施策案など、とにかくアウトプットする。とりあえずパクる。聞いただけでは全く力にならない。
言い訳せずにやろう。
6.公私混同しない、仕事は仕事。しかし常にマーケティング視点で。
「残業するな」ということではない。プライベートでもだらだら仕事のことを考えないということで、やるときはやる、やらない時は一切やらないという割り切りができないと精神的にしんどくなる。
これは人によりけりで、僕の場合は仕事が趣味みたいなところがあるので混同してもノーストレスなのだが、全員がそういうわけではない(というか普通は逆)。マネジメントする際は意識したいところだ。
6-1.無駄に遅く残っても意味なし。切り上げる時間を毎日決める。
6-2.帰り道や空き時間では、なるべく仕事のチャットやメールは見ない。
6-3.グループに連絡をとるときは勤務時間外はしない。来ても見ない。
特に6-1が大事で、例えば22時まで今日は残ってやろう!でも明日はその分18時に帰ろう!といったメリハリが必要だ。
しかし、ここからはまったく逆のことを言う。一方で常にマーケティング視点で生活していることは非常に大事だ。このCMはどういう狙いなんだろうか?この他社の施策はどういう意図なんだろうか?自社のサービスはこのタイミングでインプットしたらブランディングがうまくいくのではないだろうか?こういった日々の積み重ねが、仕事にも必ず生きてくる。
この相反する二つをいかに両立させるか、これこそメリハリ。
7.世の中を驚かすアウトプット(社内の賞、事例化、登壇、市場価値の向上)
私は何かプロジェクトをはじめるとき、常にプロジェクトメンバー全員にこの話をしていたし、今後も必ずそうする。
7-1.社内でベストプラクティス案件として表彰される、社長賞を取ることを目指そう。(自分の評価を上げることへのコミット)
7-2.対外的に事例掲載、セミナーに登壇、執筆できるような、世の中を驚かせるようなプロジェクトを目指そう。(世の中へのインパクトにコミット)
何も、賞や名誉を求めているわけではない。しかし、これを目指すことで視座がぐっと高まるのだ。ただ当初掲げたKPIを達成するだけのプロジェクトだとしよう。そこには工夫が無くなる。工夫がなければ100%以上の達成はできなくなるだろう。そして何より、楽しさが無くなってしまうだろう。
もちろん、社内での評価は大事だ。なぜなら勝手に孤立してやっていても、評価につながらないことをやっていてもなんの意味もないし継続性もない。
現状維持のプロジェクトでは何も達成できない。何か新しいものを、新しい視点を、圧倒的な結果を目指せるようになる。常に上を目指そう。
8.ミーティング一つにも礼儀・作法を。
当たり前の話なのだが、想像以上にできていない一つ一つのミーティングの作法。「長くても30分」「ミーティング前に必ずアジェンダ送付と内容理解の上のぞむ」などのテクニックはもちろんあるのだが、個人的にはミーティングに臨む際の以下四つのスタンスの方が大事だと感じている。
8-1.人の時間をとるということはお金がかかっているという認識を持つ。必要なメンバー、必要な人、必要な時間のみにしよう。
8-2.参加するなら必ず一言はコメントする。コメントできそうもないなら勉強や気持ち不足。恥ずかしいことと思うべき。
8-3.ミーティングには遅れない。当たり前だが。積み重なるとルーズな印象、心象が悪くなる。社内外限らず。
8-4.ミーティング参加の依頼は口頭で、もしくはチャットでもいいのでできるだけやろう。
特に大事なのは8-1,8-2。働く時間は有限、自分や参加者の時間を使っているのだから一つ一つのミーティングでのアウトプットを徹底的に意識しよう。
できないなら、ミーティングには参加しなくていい。そんな人がいても意味がないから。別の場所で、別の仕事をしていればよい。
9.歌うように資料を作れ
ちょっとふざけた見出しに思われるかもしれないが、かなり意識していたことの一つ。
歌には大半がメッセージを込めて作られている。また、ただ歌うだけではなく、ストーリーやメロディーに乗せて、心地よく伝わるように工夫されている。一方方向に伝えようとする場合、その人の趣味や立場や感情に合わせないと、聞いてもらえないからだ。
社会風刺だったらラップが多いし、恋愛だったらバラードだし、元気づけたいならポップス。といった具合。
しかし、資料作成やプレゼンテーションの際、自分の言いたいことを伝えようとしてしまい、聞き手の状況やタイミングや思いを考えずに一方通行に話してしまうことが多い。そこで、「歌うように資料を作ることが大事」。改めて歌を作るときの整理をすると、
<歌(資料)の整理>
【ターゲット】誰に伝えたいのか。
【そもそも】歌は必要なのか。
【尺・クオリティ】5分要るのか。10秒でいいのか。さらっとでいいのに変にクオリティを追い求めてないか。
【物語のオチ】どんな物語なのか。最終どんなことを伝えたいのか、何のために伝えるのか。
【メロディーライン】いきなりサビ?曲調はROCK?クラシック?ラップ?
どれも大事にしないといけないが、忘れがちなのがメロディーライン。淡々と伝えてしまい強弱がない曲は退屈だが、ほとんどの資料にはメロディーがない。
資料全体での盛り上がり、そして一枚一枚、一章一章での盛り上がりも考えるとよりよくなる。
あと、歌わんでもいいのに歌うことは必要ない。そもそも資料作成自体意味がないことが大半であるからだ。まずは「そもそも」と「尺・クオリティ」も意識しよう。
コツは、資料をいきなり作らないこと。そして資料全体を作った後にしっかり編曲すること。
あなたのその資料はどんな歌を奏でていますか?
10.常に楽しさを追い求めよ。常に想いを込めよ。
与えられたどんな仕事でも意義を見出す。すべては自分次第。つまらない仕事も工夫を突き詰めれば楽しくなる。
エクセルの作業も、マクロにしたら効率化できる。ルーティンのバナー制作、精算作業、レポート作成、一通のメールでさえも必ず工夫したら一つ一つが最適化・レベルアップできる。それを考え、実施することで成長できる。そして、その工程で楽しさが生まれる。
これには、どんな仕事にも「自分を出す」「組織や社会に尽くす」という貪欲さ・想いが必要。
あなたは、今の仕事に全力で楽しさを見出しているだろうか。あなたは、今の「つまらない仕事」に想いをどれだけ込められているだろうか。つまらないのはあなたがつまらなくしているだけなのかもしれない。
今一度、自問自答してほしい。
どれも大事な10個のスタンス。
つらつらと10個書いてきましたが、一項目でも参考になれば幸いです。私自身、改めて書いてみてどれも大事だなと実感しました。
ベンチャーだとそもそもやってないこともたくさんあるでしょう。一方、どんな会社規模でも参考になる部分もあるんじゃないかなぁという希望的観測で終わります。笑
それでは、んちゃ。