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香港に上場した快手は本当にキラキラ上場なのか?

*本稿は私のTwitterに連投したものに加筆修正したものです。

TikTokのライバル(?)の快手の上場がニュースになっていて株価もまずまずみたいですが、快手が本当に今上場したかったかは少し疑問が残ります。

快手はここ数年大きな赤字を計上しています。しかし、「ベンチャー企業によくある、まずは広告費どんどん使ってユーザーを拡大しよう!そのためには赤字でも仕方ない!」という会社かというとそうでもなさそうです。

ではなんで赤字かというと、快手自身の企業価値が高まっているから赤字になっているのです。

快手は投資家からの資金調達の際に、「優先株」を発行しています。これは、「議決権はない代わりに分配の比率等で優遇される株式」のことです。

これは株式なので純資産に含まれそうなものですが、快手が適用しているIFRSという会計基準では負債となります。なぜなら、優先株は株式上場で売り出すのでなければ、「会社自身が買い取る(=返済する)」必要があるからです。

更に快手にとって問題なのは、IFRSという会計基準では、この「優先株」を「時価評価」しなくてはいけないのです。

快手がユーザーを集めて企業価値を高めれば高めるほど、株式である「優先株」の評価は高まります。しかし「優先株」は「会社自身が買い取る」必要がありますので、「優先株」の価値が高まれば、「優先株」を買い取るときに必要な金額は増えていきます。

この金額の増加分を、IFRSという会計基準では「費用」として認識します。そうすると、「優先株」を発行している場合、企業価値が大きくなればなるほど赤字が拡大することになります。これが、快手がここ数年大きな赤字を計上している要因です。

そして企業価値が大きくなってくると、「優先株」の持ち主は自分の持つ「優先株」の価値が高まってきますので、「もうそろそろ現金にしたいな」と思うようになります。

「優先株」の持ち主は議決権はありませんが意見を言う権利はあります。ですので、「もうそろそろ現金にしたいな」と思う「優先株」の持ち主たちが、快手に対して、「もうそろそろ上場してくれ!そうでなければ今の価値で株式を買い取ってくれ!」と言いはじめるのです。

快手としても、それらの意見を無視することはできません。一方でこれらの今の価値の「優先株」を自己資金で買い取るだけの資金があるわけではありませんから、そうすると上場するしかないわけです。

ゆくゆくは上場を目指している企業でも、早く上場すれば良いという話ではありません。資金をしっかり調達できているのであれば、上場しない方が、自由に経営ができたり、複雑な規制に縛られなかったりと良い面がたくさんあります。

こう考えると、快手は「TikTokより早く上場した!やった!」と思っているというよりは、「優先株の持ち主の意見もうるさいし、そろそろ仕方なく上場するか」と思っていたのでは?というように見ることができるのです。

今後はTwitterでもこういった発信を増やしていきたいと思います。

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