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テンセントが83億ドル調達!でも、なんで?

テンセントがオフショアで83億ドル調達するとの記事が出てましたね。

そもそも、テンセントは年間580億ドル程度の売上に対して、2020年9月末時点で270億ドル(約2兆8,000億円)程度の現預金を保有しています。そんなに資金に困っていないように見えますね。

では、なんで今資金を調達する必要があったのでしょうか?あまり細かい情報が出ていない中ですが、想像してみたいと思います。

ドルの金利が安い

まず、ドルの金利が安いことがあると思います。昨年、アメリカは新型コロナウィルスの蔓延による経済の悪化に伴い、政策金利を一気に下げました。

そのことによって、ドルの預金は金利がほとんどつかなくなり、ドルの借入は金利が低くなりました。

アメリカの5年国債の金利推移はこんな感じです。

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ここ数日、「長期金利が上昇している!」と話題になっていますが、長期のトレンドで見るとそれでもかなり低い水準です。

従来、中国での借入の金利は「円<<<<<ドル<人民元」といったイメージだったのですが、ドルの金利が低下したことにより、「円<ドル<<<<人民元」となってきました。

ですので、これまで「人民元で借りてもドルで借りても金利はあまり変わらないよね」と思っていた中国企業が「ドルで借りた方がオトクかも?」と思い始めたことが考えられます。

しかし、金利の問題はあくまで要因の一つと思われます。

ドルが安い

直近、人民元に対してドルがすごく安くなっています。どれくらい安いかというと1994年の中国国内ドル元市場創設以降、最も安い水準です(1994年以前はもっと安いのですが、中国国内にドル元の市場が創設される前ですので無視します)。

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これがどういう影響があるのでしょうか?

今回テンセントが調達した83億ドル、今のレートで人民元にする(1ドル=6.4577元)と約536億元です。

これが、例えば1ドル=7元のとき83億ドルがいくらになるかというと、581億元です。536億元と581億元、日本円にすると733億円くらい違います。

一見、「今調達する(人民元建で約536億元)よりも、1ドル=7元の時に調達する(人民元建で581億元)方が、なんか金額も大きいしいいのでは?」と思われるかもしれませんがそうではありません。

ここからは想像ですが、多分、テンセントはこの83億ドルの調達と同時に、「この83億ドルの借入の返済期日に、83億ドル分、1ドル=6.4577元で両替(*)できる権利」を買うのだと思われます。
*本当は現在1ドル=6.4577元だからといって同じレートで両替できる権利を買えるわけではありませんが、今回は説明を簡単にするために省略します。

このことによって、テンセントは「今83億ドル受け取って、返すときは約536億元支払う」という経済効果が得られることになります。

例えば、1ドル=7元のときは同じことをしても「今83億ドル受け取って、返すときは581億元支払う」という経済効果しか得られないのですから、すごくオトクではないでしょうか?(今後もっとドルが安くなるかもしれませんので、本当にオトクだったかは返済の時にしかわかりませんが)。

また、細かい話になりますが、今回はオフショア(=中国国外、おそらく香港)での借入になります。今回の借入の名目は「運転資金」のようですが、中国大陸と違い(*)、実際は投資等かなり幅広い用途に使えるのではないかと考えられますので、今後投資や借入金の返済に使われていくのではないでしょうか。
*中国大陸では、借入の資金の用途は厳しく管理されているため、「運転資金」と言われたら中国当局が決めた定義の「運転資金」にしか使えませんが、香港で調達する場合はその限りではありません。

おわりに

記事にもあるように、アリババも2月上旬に50億ドル調達するということで、アリババも同じ考え方なのではないかと思われます。

しかもアリババは返済期日が40年後のものもあるということで、期間的にはテンセント以上に気合が入ってます。そのとき本当にレートは大丈夫なんでしょうか?僕にはわかりません。

そんなわけで、今回はお金持ちのテンセントがなぜ83億ドルもの資金を調達したのかについて考えてみました。

疑問、質問、「こんなことについて書いてほしい!」等あればTwitterかコメントでご連絡ください。


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