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蘇寧業績急減速について(2)グループストラクチャーその2

今回も以下の記事を題材として、蘇寧のグループストラクチャーについてもう少し考察したいと思います。

中国蘇寧、拡大戦略のツケ
スーパー買収やコンビニ攻勢不発 ネットとの融合進まず
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67438120X11C20A2FFJ000

上記記事には、以下の記載があります。

10日に計20億元(約310億円)分の社債を償還し、経営に問題がないことをアピールした。それもつかの間。同日にグループの統括会社、蘇寧控股の全株を担保にし、創業家がアリババから計10億元の融資を受けたことが明らかになった。(日本経済新聞

ここで公開情報等をもとに詳しく見ていくとこんなことがわかります。ここでいう株式の割合は蘇寧易購の全発行株式に対する割合です。

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そうです。張近東さん、及び同氏の支配する会社が持っている蘇寧易購の株式はかなりの割合で担保として差し入れられている状況になっています。

上記の記事では「蘇寧控股の全株」と書いてありますので、ここで更に見ていくと、12月4日に淘宝(中国)软件有限公司(タオバオ中国軟件有限公司、アリババのグループ会社)に対して蘇寧控股の51,000株の担保差入を実施したという登記が確認できます。つまり、蘇寧控股は「自社で保有しているほぼ全ての蘇寧易購の株式が担保に差し入れられており、今回自社の株式も担保になった(=日本経済新聞記事)」ということになります。

ここまで調べていてまた別の情報を発見したのですが、2020年12月4日に張近東さん、苏宁置业集团有限公司(蘇寧置業集団有限公司、主要事業は不動産業)の株式も淘宝(中国)软件有限公司(タオバオ中国軟件有限公司)に担保を差し入れています。

担保については少し長くなりますので次回以降に譲るとして、今回は少し脱線して中国の上場企業(≒大企業)における不動産子会社についてご紹介して終わりにしようと思います。

中国の不動産価格はこれまでずっと上昇基調で推移してきました。その上昇度合いはバブルを経験していない私のような日本人には想像し難いレベルで、たまたま良い場所に土地を持っていただけで、一生暮らすに困らないお金を手に入れた人もたくさんいます。

企業についても同じことが言えます。現在の中国の大企業には、何の業種の会社であっても、不動産を保有する子会社(蘇寧グループでいえば蘇寧置業集団)を有しており、その子会社はたいてい更にたくさんの子会社を抱えています。

以前工場だった場所が、その工場の従業員が周りに住むことで市街化していき立ち退きを要求され、その際に買った時の価格の何倍もの価格で売れたこともあったでしょう。また、何かしら企業として割に合わないビジネスを国から押し付けられたときに見返りとして土地を安く譲り受け、それがその後高く売れたということもあったかもしれません。

いずれにせよ、古くからある中国企業は、土地の値上がりにより得られた利益(資金)を投資に回すことができたのです。銀行からの借入などの外部調達以外に土地の値上がりによって得られた資金があったことが、今日の大企業の成長を支える一因になったということは間違いありません。

そうなると、最近不動産の価格上昇が徐々に緩やかになってきているので、投資に回すお金が無くなってしまうのでは?といった疑問が浮かび上がりますが、それはまた別の機会にでもご紹介したいと思います。

次回は、蘇寧易購の事業の状況について少し詳しく見ていきます。

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