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偶然という名の人生

人生は偶然の繰り返しでできていると思う。
あの時にあそこであれがなければ今こうはならなかっただろうし、あの道を曲がらなければこの人とは会わなかったかもしれない。そんな偶然が重なり合って世の中が形成されているんだと思う。

自分は植木等が好きだ。
植木等は1960年代にクレイジーキャッツとして人気を博すと俳優、コメディアン、ミュージシャンとマルチに活躍していた方だ。スーダラ節に代表されるような男くささみたいなものは2019年の現代においても、自分の中で光り輝いて見えている。
1960年代なんて当然何も知らないし、植木等を知った頃には随分なお爺ちゃんだった。96年生まれの自分にとっては生まれる30年も前の話だ。でも小さい頃に興味を持ち始め、多くのジャンルで活躍しながら「無責任男」なんて呼ばれて画面の中で大笑いしている植木等が大好きだった。

そして星野源も好きだ。
初めて彼を知ったのはSAKEROCKというバンドだ。あくまでもバンドの一員という形で覚えていたのは事実だが、当時から星野源名義で出していたソロでの音楽もすごく好きだった。
もちろんSAKEROCKもめちゃくちゃ好きだったけど。星野源を役者として本格的に興味を持ち始めたのは映画『地獄でなぜ悪い』を見た時だ。狂気的な役を演じた星野源が次々と人を切り殺していくさまを見てこの人すごいなと思った。正直音楽の人としか認識していなかったので、そこまで星野源が出ている舞台とか映画には興味がなかった。それからは他の出演作品も見るようになったし、文筆家として書いていたエッセイ本もしっかり読んだ。音楽の人間という型にはめていた星野源のマルチな才能を身体に浴びていた。

そんな星野源の憧れの人が植木等だったのだ。
SAKEROCKがカバーしたスーダラ節を聴いてその事実を知った。それを初めて知った時は衝撃が走る。全く異なる境遇で好きになった人たちがそういったところで繋がっていく。幼い頃から大好きだった植木等の『だまって俺について来い』は幼い頃の星野源の耳にも流れていたのだ。その時に偶然というものの存在価値を知ることになる。

偶然という歯車は1つがかみ合うと面白いように多くがかみ合っていく。2013年、1964年以来となる夏季オリンピックが東京に決まる。すると当然のごとく60年代の映像がテレビで流れ始める。時を同じくして星野源は音楽やドラマをきっかけに誰しもが知るスターへと駆け上がっていく。その2つの偶然が重なり合いあるCMができる。
60年代の映像に星野源の曲が使われるというものだ。全く異なる境遇で好きになった2つの人間が年代を超えて共演している。星野源が自分の中の時空をすべて繋いでくれた。ちなみにCMに使われている曲は『hello song』というものだ。

「いつかあなたに出会う未来」
「笑顔で会いましょう」

と歌われている。個人の勝手な妄想をすると星野源が植木等に向けて言っているのではないかと思うのだ。直接会うことはできないかもしれない。でも、もし会うことができたら笑顔で会いましょうと語りかけている。また個人の勝手な思い込みを恥ずかしげもなく話すと、いつか自分も何らかの形で星野源に会って肩を並べるようになるために聴く曲なのかなと自分に言い聞かせた。俳優とかになる予定はないけど、いつか仕事で出会うことができたら笑顔で会いたい。それも何かの偶然が絡み合って実現したらいいし、その偶然を絡み合わせる努力をこれからしていきたい。

もう1つ偶然のお話をすると、とある事情で自分は東洋大学に進学することになるのだが、植木等は東洋大学のOBでもあった。好きとはいえ学歴には興味なかったので、知らなかった。入った後に知ることとなって、これもきっと偶然の付加価値なんだろうなって感動した。ちなみに昨年大学で行われていた植木等展には誘えそうな人もいないので1人でこっそり行ったけれど、同年代の人はほとんどいなかった。でもそんな空間が居心地良かったりする。


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