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落ち着いたシュウペイとぺこぱの現在地

 最近テレビでぺこぱを観るとシュウペイをよく観てしまう。

 出方は突飛なキャラクターだった。M-1グランプリで「突っ込まない漫才」という新しい形を披露してブレイクしたぺこぱは、その突っ込まない側の松陰寺にスポットが当たり、シュウペイは言ってしまえば“じゃない方芸人”だった。

 「あいつやばいタイプのキャラだな」とM-1後は失礼ながらキャラクターの出方を間違えているんじゃないかと思って見ていた。フューチャーされる相方の横でなんとか爪痕を残そうと“そういう”キャラクターを無理してやっているように見えた。

 しかし、そんな心配も杞憂に終わる。最近シュウペイが落ち着いているのだ。M-1から8ヶ月、だんだん自分もあのキャラクターを受け入れられるようになってきた矢先のことだ。そんなシュウペイを見ていてかまいたちの濱家みたいな寂しさを覚えた。その真意についてこの前の『ロンドンハーツ』でこんなことを言っていた。「(松陰寺の)調子が悪くなってきたことで、早めに僕が出てくることになっちゃって僕が考えてたことと違う」とシュウペイはぺこぱの現状について話していた。

 ロンハーでも松陰寺へ向けたドッキリを敢行したがシュウペイのリアクションが面白いからとシュウペイにチェンジしていた。それでいて松陰寺の突っ込まないツッコミをバラエティで求められて松陰寺がツッコミを出せないというシーンはよく見受けられる。

 ただこの突っ込まないツッコミのシステム、かなり難しいことをしていると思う。実際ツッコミは間違っているものを正す役割で、松陰寺が求められていることは間違っていることに対して間違ってても大丈夫だよと許容することである。

 極端な例で言えば横断歩道を赤信号なのに渡った人に対して「赤信号だから渡るな」とか「青信号になったら渡れ」といえばツッコミになるものを「赤信号で渡っても良いじゃないか」と許容しなければならない。赤信号なのに渡っていいわけがない。

 オードリーの若林正恭がM-1直後のオールナイトニッポンで本来のツッコミに「多様性(ボケ)を受け入れることに対して相性が悪い」と話した上で、それを受け入れながら漫才に昇華したぺこぱに称賛の言葉を送っていた。

 そうやって相性が悪いことをうまく受け入れながらツッコミにする“突っ込まないツッコミ”は念入りに考え構築した上で出来上がったもの。それをバラエティの世界で使うことはさらに相性が悪い。というか諸刃の剣にもなってしまう。それを求められてそれで戦わなければいけない松陰寺はかなり大変なことをしている。

 その光景を一番近くで見ている相方のシュウペイが落ち着き始めたのだ。先日の『オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。』に出演したぺこぱはオードリーに最近の悩みを告白した。そこで松陰寺がこのツッコミのせいでMCがしづらいという悩みを吐露。そこでシュウペイが「松陰寺さんがそれを全部やらなければいけないので、僕は今後MCをやりたいと思っている」と話すとオードリーは驚き、笑っていた。確かに今までのシュウペイだったら、あのキャラクターでMCかよと同じように笑っていたかもしれない。でも最近見せているシュウペイの落ち着き、そして松陰寺の突っ込まないツッコミという武器。それを活かすにはシュウペイがMCをやるのが一番なのではないかと感じていた。

 シュウペイの真面目とキャラクターが融合された瞬間がバラエティ番組ではない『サッカーアース』からも見えた。元サッカー部で小林悠や太田宏介とチームメイトだったシュウペイはチャンピオンズリーグのハイライトに対して大真面目にプレーを解説。とても楽しいと笑顔を見せてサッカーへのリスペクトを表しつつ旧友の小林悠とオンラインで会話をしてボケるなど真面目な素の部分とボケるキャラの部分とうまく使い分けていた。
自分はこのサッカーアースを観たあとに前述したロンハーやオドぜひを観たので、これが今後シュウペイが作っていく独自の路線なのではないかと感じた。

 ロンハーのシュウペイを観て「シュウペイが天狗になっている?」という意見もいくつか観た。だけど、きっと違う。松陰寺がもっと伸び伸びとツッコミができるようにキャラクターの補正をしている。そんなふうに見受けられる。

 前述したオドぜひで若林は春日のキャラクターに対して「4、5年目が一番キツかった」と評した。松陰寺もきっといまその入り口に立っている。そこでシュウペイの立ち位置が重要になっていく。あのキャラクターと真面目な素の一面。今、彼はどちらもうまく使い分けられる途中の段階で模索しているのではないかと思う。

 ロンハーで出てこなかったシュウペイのキャラクターがなくなってしまうことはないだろう。オドぜひでシュウペイは「シュウペイでーす(登場時にやるあれ)は死ぬまでやりたいと思っている。あれで覚えてもらったので」と話していた。おじいちゃんになってもやりたいと言っていたギャグをそんな簡単に放棄しないはずだ。

 素のシュウペイがMCで回しながら、雛壇のボケに対して松陰寺が突っ込まないツッコミをして受け入れる。そして垣間見えるシュウペイの突飛なキャラクター。これがぺこぱの理想系かもしれない。そんな未来へ向かって突っ込まないツッコミという武器を最大限に活かそうと尽力する松陰寺とキャラクターと真面目な部分のハイブリッドを目指して落ち着き始めたシュウペイの試行錯誤するぺこぱの2人から目が離せない。

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