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【前編】キッチンカーの新規顧客をファン変える、顧客視点の戦略思考

顧客視点の考え方は様々です。
人気キッチンカーや飲食店へと成長したキッチンカーは、何が共通していたのでしょうか。
そして、赤字や売上低迷に悩まされ、やがて廃業するキッチンカーには何が足りなかったのでしょうか。

自分がこれから開業しようと考える方、今売上の低迷に悩まされている方にはぜひ考えていただきたいのが「顧客視点の考え方」です。

今回の記事では、マーケティングの中の考え方である「顧客満足」に焦点を当て、顧客満足の観点から顧客視点を掘り下げた戦略思考を解説していきます。


顧客満足とは

顧客満足とは、マーケティングの中に出てくる考え方の一種です。
ここでの顧客満足は、あくまで顧客がサービスを受けた時に満足感を抱くという意味でお話ししていきます。

顧客はサービスや商品に対して常に各々「期待値」を持っています。その期待値を下回ると不満になり、上回れば感動になるのが特徴です。

例えば、あなたが一泊10万円もするホテルに泊まったとします。部屋にはアメニティは一切なく、ベッドのシーツは布団の上に置かれて自分で敷く必要があり、シャワーはなく、近所の銭湯への案内が書かれていたとしたらどうでしょうか。

10万円も払ったのにこれ?と思われるのではないでしょうか。

10万円も払っているのだから、シャワールームはもちろん完備され、アメニティも充実し、布団は一泊1万円の部屋に比べてふわふわで感動するに違いない。
この考えや期待こそが、「期待値」です。

そして、この期待値を下回ったことで、10万円も払ったのにも関わらずこれもない、お金の無駄だった、と不満を感じているのです。

逆に、カーテンを開ければ海が広がり、部屋は広々とし、布団は想像を超えてふわふわで、シャワールームどころか専用の露天風呂がつき、温泉やスパが完備され、食事も高級なコース料理が用意されていたとしたら、10万円の価値はあると、満足感が得られるのではないでしょうか。

これは、各々が持っていた期待値以上だったことから起こる「感動」の瞬間です。
感動は、顧客満足度だけを考えた時、最も良い状態と言えるでしょう。

これが、期待値と、不満と、感動の関係です。

しかし、ここで注意すべきなのは「上回った状態は長く続かない」ということです。

人は幸せや感動などに対して簡単に慣れてしまうことがわかっています。
そのため、最初得られた喜びや感動は慣れてしまい、「当たり前」になってしまいます。

最初はホテルの部屋にアメニティが充実しているだけで感動していたのが、次に来るとアメニティがあるのは当たり前になり、より期待値を上げた状態になってしまうのです。

そのため、一時の感動だけを考えて、あの手この手で大きな感動を呼びすぎると、その後が辛くなってしまいます。少しずつ、積み上げるイメージでレベルアップしていくのが良いですね。

レベルアップ戦略はあらゆるところで実践されています。

例えば、会員制度で買えば買うほどよりお得な商品券がもらえるようになったり、待遇そのものが変わったりすることもあります。

「いつもの」が通じるのもこの良い例ですね。
店員に顔を知ってもらえる、自分は他の客よりも優遇されているという喜びが、さらに期待値を上回り、顧客の感動を与えているのです。

ここまで来ると、店側にとっても顧客はただの顧客ではなくなります。
売上により貢献してくれ、サービスやブランドに信頼を寄せてくれる「ロイヤル顧客」となるのです。

それは顧客満足か自己満足か

顧客満足度を高めようと考える一方で、かえって顧客満足度を低下させている例も数多く見かけます。例をお話しします。

SNS投稿の例

SNSで見かけるのが、キッチンカー宣伝用のアカウントにも関わらず、事業主のプライベートを載せている場合です。

期待値を下回る「不満」の状態にしてしまっている状態です。

顧客が知りたいのはキッチンカーの情報です。

顧客が知りたいのは、次はどこに出店するのか、新メニューはあるのか、気に入ったメニューを再購入できそうか、など、事業主自身ではなく、キッチンカーの情報なのです。

これが事業主自身に焦点を当てたパーソナルブランディングをしているのならまだしも、普通はキッチンカー事業そのものをブランディングします。

適切にブランディングすることによって、顧客に自分のキッチンカーでのメリットやコンセプトを正しく、迅速に伝え、購入意欲を掻き立てるのです。

この時点で、顧客の注意は「キッチンカー」であり、「事業主」ではありません。

そのため、事業主が今日食べたものや、普段の考え方などを投稿してしまうと、求めている情報の中に興味関心の無い情報が混じり、不快感に繋がります。

顧客側は「キッチンカーの情報が投稿されているだろう。それを見て楽しい気分になれるだろう」などの期待値を持って投稿を確認します。

その時に自分が興味関心のない情報が混ざり、不快感を抱くと、顧客満足度は低下していきます。メリットが上回っている時は多少我慢をしてくれますが、顧客満足がさらに下がると、「もういいや」と離脱してしまうのです。

興味関心のない情報が混じったり、不快感が多いなどの顧客満足度の低いSNSになると、フォロワー減少に直結します。それだけではなく、せっかくのファンさえも離脱させてしまう要因にもなってしまうのです。

「でも、有名人の日常は需要があるじゃないか」と思われることもあるかと思います。

有名人の日常が好感を呼ぶのは、有名人個人に対して興味関心を持っているからです。

興味関心があるからこそ、情報を受け取る準備が整っています。有名人が個人のブログやSNSを始めた際、「今まで知らなかった別の一面が知れるかもしれない」という期待値があり、それが満たされることで顧客満足が起こります。

つまり、この状態であれば、需要と供給が成り立っているのです。

一方で、キッチンカーの場合、顧客の興味関心の対象はあくまで「キッチンカー」であるため、キッチンカーの情報を受け取る準備はできています。

しかし、事業主自身の情報を受け取る準備ができていないギャップが生まれます。興味関心のない事業主の日常投稿が知りたい情報の中に混ざってくると不快感が生じてしまうのです。

非常に残念な事実ではありますが、顧客にとって事業主のことは「基本的に無関心」と考えるべきです。
それはあなたのせいではなく、そもそも人間が周囲のことをそこまで注意して見ていないからです。

人は案外周りを見ていません。バスや電車で長時間隣にいた人の服さえも僕達は覚えていないのです。そしてそれが普通なのです。

自分のことを覚えてくれていると思っていても、顧客は案外覚えてくれておらず、そのため事業主と顧客の間で認識のギャップが生じてしまうのです。

そして、もう一つ、顧客の深層にある考えがこれです。
あなたのキッチンカーでなくても、別のキッチンカーがある。

あなたのキッチンカーにこだわる理由がなく、不快感ばかりがあれば、驚くほど簡単に顧客は離脱してしまいます。

事業主のパーソナルなことを投稿するのは、あくまで事業主個人のパーソナルブランディングが完成し、顧客の中に浸透してからです。

「牛マークのキッチンカーの寺本さん面白いよね!知ってる知ってる!」と事業主個人のことを多くの人が口を揃えて言うようになって初めて、「牛マークがトレードマーク、寺本の日常」といったコンテンツも多くの人に求められるようになるのです。

戦略を練らない例

自分は美味しい物を作っているから、いずれ自分の作るものが好きな人に必ず届く。
そう言って、マーケティング戦略などを一切取らない方もおられます。

しかし、マーケティングの根本を考えた時、本当に何もしなくて良いのでしょうか。

マーケティングは顧客とのコミュニケーションを生み出したり維持することです。

それを怠ることは、顧客に対して無関心であることと同じことでもあります。

自分はそんな卑怯な手は使わない。味で勝負する。
そう言っても、本当にそのサービスや商品を求めている人がいるにも関わらず認知できる状態を作らないのは、本来顧客になるはずだった人は機会そのものを失います。

これは顧客満足をそもそも得ることはできなくなるどころか、事業主自身も機会そのものを失っています。

顧客が出会う機会そのものを生み出すことなく、気づいて来てくれる誰かを待つ受け身の姿勢で居続けることは、自己満足で終わってしまうことに加え、顧客も事業主も共に損をしている状態になるのです。

本当の顧客満足とは

顧客満足とは、顧客がサービスを受けた時に満足感を抱くことです。

それは、知りたい情報がすぐに手に入り、欲しいものを発見でき、よりスムーズに購入できる、など挙げればキリがありません。

しかし、共通して言えるのは、自分がやりたいことではなく、それを通じて顧客がどう感じたかであることです。

自分の得意や好きを貫いて「楽しみなさい」というのではなく、顧客が嬉しいと感じ、喜んでお金を支払ってくれることに、自分の得意や好きを活かしていくのです。

にも関わらず、大体の事業主が「自分の好きなことをしたい」「自分の好きなことにはニーズがある」と、おっしゃいます。

もちろん自信を持つことは良いことなのですが、そうおっしゃる方ほど、ブランディングができていなかったり、顧客満足ではなく自分の満足を追い求めた結果、廃業を余儀なくされます。

なぜなら、顧客は自分のニーズを満たすためにお金を支払うので、顧客満足やニーズを考えられていないサービスからは離れていってしまい、売上は低迷し、結果として廃業になってしまうのです。

自分の夢や願望、希望的観測ではなく、そこに本当に顧客のニーズと顧客満足はあるでしょうか。

顧客はどのキッチンカーを選ぶこともできます。
その中であなたのキッチンカーを選ぶ理由はきちんと存在しているでしょうか。
それがしっかりと伝わった時、顧客はあなたを初めて選んでくれるのです。

FIVE DESIGNSでは、マーケティングだけではなく、サービスデザインを用いたマネジメント、ブランディングなどの幅広い知識を用いてキッチンカー製作から事業フォロー、飲食店開業のためのキッチンカー開業フォローなど、幅広く行なっています。

毎月セミナーも行っておりますので是非ご活用ください。

顧客を誘導することは騙すことか

先ほどの戦略を練らない例で、「自分は美味しい物を作っているから、いずれ自分の作るものが好きな人に必ず届く」と、マーケティング戦略などを一切取らない方の話をしました。

なぜこういうことが起こるのかというと、根底に「顧客を誘導するなんて、人を騙すような汚いことはしたくない」という想いがあることが多いです。

自分はそんな卑怯なことはせず、正々堂々と自分の腕で戦いたい。

そう思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もちろんその意気込みや想いや素晴らしいと思います。

ですが、まず前提として、マーケティングは本当に人を騙しているのでしょうか。
顧客をうまく誘導することはそもそもよくないことなのでしょうか。

マーケティングと、顧客の誘導について、順にお話ししていきます。

マーケティングとは

日本マーケティング協会によるマーケティングの概要を見ると、こう書かれています。

“マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である”

日本マーケティング協会

また、
顧客の欲求や満足を探り、創造し、伝え、提供することにより、その成果として利益を得ること
とも解説されています。

キッチンカー事業の戦略で考えてみましょう。

例えば、キッチンカーを開業する時に、仕事終わりのサラリーマンが通る駅までの道があったとします。そこに唐揚げのキッチンカーを出店しようと考えたとしましょう。

「仕事終わりのサラリーマンは疲れてお腹も減っているに違いない。なら、少し小腹を満たせるものがあると嬉しいのではないか」とキッチンカー事業主が考える(顧客の欲求と満足を探り、創造する)

キッチンカー事業主がのぼりを立て、ビラを配ったり、キッチンカーに大きな唐揚げの写真を塗装することによって、サラリーマンに伝えます(伝える)

実際に晩ごはんまでにちょっと食べたいというサラリーマンが唐揚げを購入することで、事業主は提供します(提供する)

この時、対価としてお金を受け取ります(その成果として利益を得る)

これは果たして人を騙していると言えるのでしょうか。

騙しているというよりも、むしろ、誰かの「食べたいけど店がなくて食べられない」という不満を解消し、ニーズに応えています。

これがマーケティングなのです。


顧客を誘導するとは

では、顧客を誘導することは良くないことなのでしょうか。

誘導の最もわかりやすい例は、サインです。
百貨店にエレベーターやエスカレーターがどこにあるのか、天井から吊り下がり、ピクトグラムや矢印などを使って希望の場所へと誘導しています。

他にも、人が利用するあらゆる場所では「動線」が考えられています。

顧客がどう動き、どう出ていくのか、どこで目を惹かれ、どこで感動し、どういう経路でレジを発見し、購入するのか。

人がどのように店の中を動くのかをあらかじめ計算し、どこでどのように流れができるのかを綿密に計算することで、スムーズで快適な買い物ができるようになっています。

一方で、誘導しなければどうなるでしょうか。
レジやトイレの場所はおろか、どこを見れば営業時間や出店先を知れるのかも分からない。
買いたいのにオンラインショップで肝心の会計ボタンが見当たらないといったことが発生します。

顧客が自身のニーズを満たすためのプロセス一つ一つに時間がかかり、すごくストレスに感じませんか?

こうなると、適切に誘導してくれる店やサービスへと簡単に乗り換えてしまう、つまり、顧客離脱が起こるのです。

顧客をうまく誘導することで、不要な混乱や迷いを防ぐことで、顧客は不要なストレスを感じる必要がなくなり、顧客の満足度は高くなるのです。

顧客を誘導することは、迷う人を作らない優しさでもあるのです。

常に顧客満足を優先して考える

本来満たしたかったものを満たせないと、顧客満足度は非常に低くなります。
しかし、顧客は不満を口にしてくれません。ただ、不満を抱いてその場を去るのです。

マーケティングをしないとは、自分の考えだけではありません。

自身のニーズに気づいていない顧客にまでアプローチすることで、顧客は新たな出会いを獲得でき、さらに発見した新たなニーズを満たし、満足することもできるのです。

これはビジネス全体、もちろんキッチンカー事業にも共通していますが、顧客はあなたにこだわる理由がありません。

少しでもわかりづらい、購入しづらい、行きづらいなどがあれば、すぐにあなたの顧客から離脱してしまいます。

そうならないためには、少しずつ、丁寧に顧客との信頼関係を構築する必要があります。

キッチンカー事業では特に多くこの現象が見受けられます。

顧客は常に他のキッチンカーが選択肢にあります。

にも関わらず、
・何を売っているのか分かりづらい
・何が強みなのかが分からない
・何にどんなメリットが得られるのかが分からない
・同じメニューの他のキッチンカーと、どこが違うのかが分からない
といったことが日々起こっているのです。

もちろん、これはほんの一部ではあります。

しかし、たったこれだけでも改善がなければ確実に顧客は迷います。
結局レジを見つけられないのと同じように、顧客が知りたいことを見つけられないままに諦め、離脱してしまうのです。

キッチンカーの場合は特に、イベント出店などでせっかく出会えた顧客と今生の別れになりかねません。

これを防ぐためにはブランディングはもちろん必要ですが、今回は顧客満足の視点に絞るためブランディングに関しては割愛します。

ブランディングの必要性やブランド構築の仕方に関してはこちらをご覧ください。

顧客満足の視点から言えるのは、顧客がどう感じるのかを考え、そのために何が必要なのかを考えることです。

自分がこういうことをしたくない、ではなく、あくまで顧客が誘導されることによって快適さを感じ、よりストレスなくいられるのならそれで良いのです。

マーケティングや顧客の誘導を見て、あなたもそれらが決して悪いものではないと思っていただけたと思います。

もちろん、顧客の心理をうまく誘導して詐欺行為を働くことは許せないことです。

しかし、詐欺行為と、ビジネスにおける顧客の誘導は全くの別物です。

常に顧客がサービスやその前後の動線そのものにストレスを感じることなく、快適に楽しめたり、満足できるように考えることが、顧客満足に重点を置いた「顧客視点」なのです。

逆に、自分はこういうことをしたくない、こんな考え方ややり方は嫌だと思っているうちは自然と主語が「自分は」になっています。

主語が「自分」で、頑なに主張している間は顧客視点ではなく自分視点になっているのです。

現在FIVE DESIGNSでは、キッチンカー製作現場に実際に入っており、実際に事業主の方から「自分はこれが夢だった」とお話を聞くことも多いのが現状です。

もちろん自分の思いを貫くこと全てが悪いとは言いません。
しかし、自分の思いを貫いた先に、顧客は本当にいるでしょうか。
顧客のニーズが客観的に見て存在しているのでしょうか。

ビジネスにおいて、キッチンカー事業を含む企業の存在意義とは、顧客のニーズを満たし、利益を得ることです。

顧客にこう感じて欲しい。
顧客にここで接点を作る。
顧客がサービスを受け、喜んで欲しい。

そうやって、現在だけではなく、未来の顧客のニーズを満たし、日々事業主自身が顧客のニーズを常に考え、成長し、満足感を与えることそのものが、キッチンカー事業を含め、多くの企業の目的でもあるのです。

ビジネスや仕事とは、常に顧客満足を考えることを優先します。
逆に、自分がしたいことを最優先するのは、趣味なのです。

あなたは顧客視点でしょうか、自分視点でしょうか。
今やっていることは仕事でしょうか、
それとも、あなたの趣味なのでしょうか。

しっかり向き合い、考えることで、本当の顧客視点を身につけ、行動に移し、継続することができた時、あなたは初めてその他大勢から人気キッチンカーになることができるのです。

顧客がいかにストレスなく動くことができるのか

人は誘導がなければ前の人の行動を真似する

顧客を誘導することは決して悪いことではなく、むしろ顧客のストレスを省き、顧客視点になれることだとお伝えしました。

例えば、イベント出店する時、左右から同時に話しかけてきたらどうでしょう。
2組くらいだから問題ないとこのままにしておくと、次に来店した人は「自由に話しかけるスタイル」に誘導されます。

話しかけることに抵抗がない人ほど、「これちょうだい」「これもちょうだい」と声をかけ、話しかけることに勇気が必要な人ほど「この人の後に購入しよう」と、口を閉じます。

これが何度も起これば、顧客目線で見た時に注文できそうなタイミングで次々に話しかけてくることになります。

そんなこと起こらないと思われるかもしれません。
しかし、実例として、販売窓口が大きなキッチンカーでイベントに出店した時にこのようなことが起こりました。

前の人を真似することによって混乱した実例

このキッチンカーでは、来店者数がそこまで多くなかったことから、並んでもらう案内をすることなく、購入メニューが決まった人からバラバラに注文を聞いていました。

同時に、このキッチンカーでは、販売窓口の左右に持ち帰りできる商品を置き、販売窓口のすぐそばに価格表やSNSなどの案内を貼り付けていました。

この2つの条件が揃ったことにより、結果として混乱を引き起こしてしまいました。

まず、販売窓口のすぐそばに「案内」を集中させたことによって、
商品を手に取りたい人、
メニューを見たい人、
SNSのQRコードを見たい人、
などで販売窓口に人が集中してしまったのです。

販売窓口に人が集中すると、購入がしづらくなり時間がかかり、キッチンカーの周りは混んできてしまいます。

こうなると、最大まで大きくしていた販売窓口のデメリットが残念にも発揮されてしまうのです。

販売窓口を最大まで大きくしていたため、左側から注文を受け、必要なものをとりに右側へ移動すると、右側にいた顧客から注文されます。待ってて欲しいと言って左側へ戻れば、事情を知らない左側の人がまた注文をします。

左右に動けば、その度に注文を受ける状況が生まれてしまい、現場は混乱状態になりました。

この時、中にはお金を突き出すように持ち、「この持ち帰り用の商品が欲しいだけだから。はい、お金」と、強引に渡そうとしてくることさえありました。

この状況になると、販売窓口に購入希望者、購入検討者、SNS登録者が集中し、購入希望者は列ができていないことから先着順、発言した者勝ちの状況へと変わってしまいます。

秩序が消え、順番を待とうとしたり、落ち着いて注文したい真面目で素直な人ほど損をしてしまうのです。

イベント出店時には混んだり、空いたり、と人の流れにムラがあることが非常に多いです。

今回のように一気に混んだ時、顧客が感じるのは待つ楽しみでしょうか。それとも待たされた不満でしょうか。

私が見ていた限りでも、商品を高々と上げ、自分は購入希望だとアピールしていても、後から来て販売窓口に近かった人に順番を抜かされ、その度に口を閉じ、我慢強く待っていた人がいました。

彼らが感じたのは購入できる喜びでしょうか。
いえ、この大半は「また抜かされた」という落胆やストレスなのです。

この時さらに問題なのは、多くの顧客を逃している点です。

実際に、商品を持っていたにも関わらず、購入のしづらさから購入をやめて去っていく人がいました。

そして、この様子を見ていた人は、仮にこのキッチンカーに興味を持ったとしても購入ストレスを考えてそもそも来店をやめる可能性も高いです。

こうなると、事業主は顧客になるはずだった人をみすみす逃し、顧客満足度を下げ、ストレスを露見させることでさらなる新規顧客も逃してしまう最悪の状況を生み出してしまうのです。

顧客のストレスを取り除くのがサービスの最低限の条件である

先ほどの実例でも、
商品を見る人は左側で、
購入希望者は右側に並んでもらい、
列のさらに右側へQRコードを配置するなど、
顧客の動きを誘導していれば当然避けられたことでした。

購入希望者は左側にまとまって置かれている商品を見るため足を止め、
購入商品を決定して右手を見れば「ここに一列に並んでください」と案内が見え、
列に並べば列から少し離れた右手には大きなSNS登録のQRコードが見え、
購入後に落ち着いて登録し、そのまま去ることができる。

このように、顧客にはどのように見えるのか、顧客はその後どのように動くのかなど、スムーズに購入できるよう誘導してあげることとは、購入しづらいというストレスを取り除いたことになります。

もちろんこれは実際の顧客の動きだけではありません。

次の出店先がどこなのか、何時から何時まで営業しているのかなどのコンテンツを作成することは、顧客が知りたい情報を探す時間やストレスをなくしてあげることになります。

面倒臭い、地味なことはやりたくないなどの最終的に自分がどう思うかではなく、顧客がストレスなく、サービスに満足できているのかが大切です。

また、顧客のストレスを取り除くことを最低条件とし、そこにどれだけのプラスを顧客に与えられるのかも、また重要なことです。

購入前に何を見て出会い、それによってどんな感情を持ち、どこを読んで購入意欲が掻き立てられるのか

どこからどんな風に見て、どのように興味を持ち、どのような感情を抱いて買いたくなるのか

購入直後でどんな気分で去っていくのか

購入した後はどのようにさらなる情報を発見できるのか

こういった、顧客行動全体に視野を広げ、それぞれに生じているストレスを取り除くことが重要です。

それだけではなく、期待値を少し上回るような小さな感動と、上質なサービスを与えることで、顧客満足を劇的に向上させることができます。

何度も言うようですが、自分自身がしたいことではなく、あくまでも顧客自身がどのように、どれくらいの満足感を得られるのかを優先して考えることが大切なのです。

後編では、
顧客満足や顧客視点を考える負担を減らす具体的な方法や、
顧客満足にこだわることで得られるメリット、
キッチンカー事業を長く続け、飲食店開業・経営へも繋げられる戦略思考などを解説しています。

後編は近日公開予定です。

是非ご覧ください。