【後編】顧客視点を用いた、ファン化を起こすブランディング戦略思考
この記事では、今やキッチンカー事業で必須となっているブランディング戦略に顧客視点を用いた新たな戦略思考を解説していきます。
後半では、競合についてやコストなどのお金の話、そして、ブランディングにあたり誰もが通る山場と、その乗り越え方について解説していきます。
こちらの記事は【後編】となっておりますので、まだ前編をご覧になっていない方はまずこちらをどうぞ
顧客視点はブランディング戦略のどこに必要か
前編では6Cの
Circumstances 環境
Company 自社分析
Customer 顧客分析
Competitors 競合分析
Channel 流通分析
Costing コスト分析
のうち、上の3つを解説しました。
後編では、残る3つを解説していきます。
Competitors競合分析
他に必要なものの中で、忘れてはいけないのが、競合分析です。
競合は、あなたが戦うキッチンカーや他の企業、店などです。
自分が事業をする上で、競合について下調べし、把握しておくことは非常に大切です。
主な確認項目は以下のとおりです。
・どれくらいの競合がいるのか
・どれくらい人気を持っているのか
・収益性はどれくらいありそうか
・自社分析の競合バージョンを考える
・自身が市場に入った時の競合の予測される反応は何か(その時の対策をあらかじめ考えておく)
・競合が多いか少ないか
競合分析で大切なのは、自社分析と同じ内容を競合でもやっておくことです。
競合が何を得意にし、何を不得意にしているのか、何に強みがあるのかなどをしっかりデータを取り、分析することで、自分が何をするべきで、何を避けるべきなのかがわかります。
例えば、仮にクレープのキッチカーが10台、焼きそばのキッチンカーが1台だとしたらどうでしょうか。既に焼きそばに対してクレープは10倍の参入となり、あなたがクレープのキッチンカーをしようと考えている場合は見直した方が良いでしょう。
顧客視点を用いた場合でも同じです。
顧客側からしてみれば、どのキッチンカーもクレープで、何がどのように違うのかが簡単にはっきり分からなければ、迷いが生じます。迷いが生じると、結局購入そのものをやめることにも繋がります。
これはジャムの法則とも呼ばれ、検討できる選択肢が増えれば増えるほど逆に選択が難しくなるという心理的な法則のことです。
あっちにもこっちにもクレープのキッチンカーがあれば、クレープが食べたくてもジャムの法則によって選択そのものが難しくなります。
顧客はストレスを極端に嫌い、無意識的に避けているため、来店したはいいが購入せずに帰ってしまう可能性が上がることにもなります。
こうなると、周囲の同じメニューのキッチンカーに対してより戦略を練る必要があるので、難易度が高くもなります。
しかし、焼きそばのキッチンカーなら、参入がまだ1台となり、難易度は低くなります。
さて、極端な例で説明しましたが、簡単にいうと、基本的に参入数が多い市場は避ける、ということです。
これが100倍、1000倍など、倍率が上がれば上がるほど、適切にブランディングしてメッセージを届けなければ、顧客は何が違うのかなどがわからずに迷うことになります。
顧客が迷うことで厄介なのが、選択肢が増えれば増えるほど、迷い、結果何もせずに離脱するという可能性さえ高まることです。
また、自分が市場に入った時の競合の予測される反応でも、気をつけるべき点があります。
あなたが競合からヒントを得るように、競合もまたあなたからヒントを得ることもあります。自身が市場に入った時、競合があなたのメニューや提供方法を真似してきたり、さらに戦略を練ってくることもあります。
自身が市場に入ることで、何が起こるかもしれないのか、競合が何を考え、どのように動くのかなどを考えておく必要があります。
同時に、競合が何をしているのか、そしてそれば自分のキッチンカーとかぶっていないのかなどを分析することは非常に重要です。
仮に、激戦となる市場とわかっていてもあえて突入したいと思う場合は、それに対抗できるほどの技術力などが自分にあるのは必須ですが、既に人気を博しているキッチンカーと戦うことになるので、難易度は非常に高いと考えられます。
競合はどんな相手で、何を得意としていて、自身が市場に入ったらどんな化学反応が起こるのかを考えると同時に、その様子を見た顧客がどのように感じ、どのような選択をしようとするのか、一つ一つを考え、繋げていくことが大切です。
Channel 流通分析
流通分析は、簡単に説明すると、主にどのようなチャネルを用いて販売や仕入れなどを行っていくのかといった内容となります。
しかし、キッチンカーでは仕入れを自身がされることが多く、販売も自身が出向いて行うため、そこまでの必要性はありません。
6Cのうちの一つということで紹介し、ここも本来なら考えるべきでもありますが、この項目は企業が主にBtoBにおいて考える項目でもあるため、割愛します。
Costing コスト分析
事業を行う上で絶対に見逃せないのが、コスト分析です。
ここでのチェック項目は以下のとおりです。
①原材料はどこから調達するのか
ここでは、原産国や国際的な事情なども含め、今後も安定的に仕入れが可能なのか、将来的に調達が困難になったり、限界が来る可能性はあるのかどうかを検討していきます。
②調達先がホワイトであるか
つまり、人道、倫理に反することがなく、真っ当に安定的なサービスを行っている場所なのかということです。
仮に調達先が真っ当な商売からズレたことをしていた場合です。顧客視点から見た時、今は問題なくても、今後反発が起こる可能性があります。
反発の影響は、不買運動や、印象悪化などで、顧客と敵対することとなり、不利な状況になってしまうため注意が必要です。
③原材料の調達はどのように行うのか
・定期的に配達してもらうのか
・自身で買い付けにいくのか
・自身で買い付けにいく場合は今後も安定的に仕入れられるのか
・時間的、人件費交通費も含めた経済的な負担はどれほどか
・赤字分の費用の回収が可能なのか
などを考える必要があります。
④利益率や原価率はどうなのか、それに対して、今後も収益は見込めるのか自身が仕入れをする上で、利益率、原価率がどれくらいの割合になっているのか、それによって、今後どれくらいの収益が見込め、どれくらいの余裕を持って事業ができるのかが大切です。
⑤プライシングをどうするのか
コスト管理によって、売値も考えなければなりません。変動費や固定費はもちろん、どれくらいの利益を得られるのかも考える必要があります。損益分岐点を計算し、1ヶ月に最低何人の来店者がいなければならないのかを考えた時に、決定したプライシングで問題ないのかなどを考えていくことも重要です。
プライシングとは、価格設定のことを言います。
このプライシングが実は非常に重要な意味をなしてきます。
安すぎるプライシングだと、売っても売っても赤字から抜けられない可能性もありますし、高すぎると売れないデメリットがあります。
相場がこれくらいだから、と簡単に決めてしまうことは避けるべきです。
安くするならまだしも、価格を上げることは非常に難しく、価格を下げるよりも上げる方が何倍も難しいと、企業が四苦八苦している背景もあります。
仮に、儲けも十分ある絶妙なプライシングをしたとしても、赤字になってしまうこともあります。
実際にあったのは、その日売れ切れまで売ることに成功したにも関わらず、もっと売れると考えて急遽いつもと違うところで仕入れを行い、提供した時でした。
これによって通常で仕入れているよりも高く仕入れたことになり、材料費などの変動費が上がったことによって、結果として黒字が赤字になってしまったのです。
しかし赤字に気づいたのは、その日の営業が終わってから売上計算をした時でした。
売れ切れの時点で止めていれば大きく黒字になっていたにも関わらず、コストとプライシングの関係性を熟考することなく、売れば売っただけ儲かると考えていたからこそ発生したミスでした。
これは、固定費や変動費、損益分岐点の考え方をしっかりと持つことで未然に防ぐことができた例であり、今後事業を継続し、利益を得るためには非常に重要になってくるのです。
ここに加え、コストが全体としてどれくらいかかり、儲けがどれくらいあるのか、それはもちろん事業主の方自身の人件費も考えなければなりません。
人を雇っていないから人件費はゼロということはなく、そこで働いているからには自身の人件費は必ず考えるべきです。
さて、たくさん挙げてきましたが、開業するまでには最低でもこの項目の情報や分析、思考が必要となってきます。
ここまでできて初めて、自身と、自身を取り巻く状況を把握することができ、戦略思考へと踏み出すことができるのです。
現状分析と顧客視点
今回の現状分析で大切なのは、顧客視点をどううまく活かせるのか、です。
注意すべきなのは、まず現状分析と顧客視点をそれぞれ挙げ、両者が整理する。その次に、両者を繋げたり、両者の関係性を考えることが大切ということです。
それぞれを別で考えないと、各観点に混ざってしまい、結局顧客視点だったのか、現状の事実を挙げているのかが判別できなくなったり、再度考え直す二度手間になったりします。
開業するなら、基本は現在の自分自身と、自身を取り巻く環境全体を客観的に把握することが大切です。
特に、顧客のニーズはリサーチが重要となります。
中でも、顧客のニーズ調査には客観的なデータが必要となり、そこから分析する必要があります。
どんなに努力しても、バイアスはかかってしまうものです。
そうすることによって、自分のバイアスがかかった顧客のニーズではなく、客観的な顧客視点でのデータを得ることができるのです。
ここに対して、顧客が実際どのように動くのか、どんな感情を抱き、どのような心理状態になるのかなどを重ねて考える必要があります。
顧客視点で考えた時、顧客が反発したり、ストレスを感じると考えられることは、基本的に避けるのが無難です。
例えば、ファミリー層が多い住宅街での大声の呼び込みは、ようやく寝ついた赤ちゃんが起きるきっかけとなり、多くの親達に悪い印象を与えてしまいます。
そして、マイナスの印象はネガティビティバイアスと呼ばれる、ネガティブな情報に敏感になってしまう人間の本質によって、一気に拡散されてしまいます。
つまり、ネガティブな口コミが一気に広がり、事業主は不利な状況へと追い込まれてしまうのです。
全ての事業は顧客があってこそであり、そのためには顧客が何に対して不満を感じるのかも把握することは大切です。
自分がどんなふうにやりたいのか、ではなく、まず顧客が何に対して心を動かすのかを考えます。
次に、それに対して、自分の好きや得意をどのように活かすことができるのかを考えるのが順番としても正しいものになります。
徳川家康の言葉に、このようなものがあります。
「最も多くの人を喜ばせたものが、最も大きく栄える」
その言葉通り、顧客に寄り添い、顧客を喜ばせた企業やキッチンカーほど評価され、リピーターが増えます。
さらに、顧客が喜びリピートする背景には、顧客満足度が高いことは必須。
結果、何年も事業を続けることができているのです。
また、顧客に寄り添うことで、新たな市場を発見・開拓できる可能性もあります。
顧客に喜んでもらうことは、お金を呼び込むだけではなく、新たなチャンスを呼び込むことにも繋がってるのです。
顧客を優先することで、自分がしたいことができない、と考えるのではなく、あくまで顧客のニーズに自分の得意や好きなことをどのように活かすことができるのかを考えることが重要です。
ブランディングでの注意点
ブランディングで特に大切なのが、ブランドの禁忌を決めておくことです。
ブランドのコンセプトに反することや、イメージを崩すと考えられることは何かを予め考え、今後絶対に行わないように徹底する必要があります。
なぜならブランディングでは一貫性を維持・継続することが大切だからです。
一貫性とは、ブランディングに矛盾がないことです。矛盾が生じると、ブランドは一気に崩壊するか、維持できなくなってしまいます。
例えば、メガ盛りクレープのキッチンカーとしてブランディングしているにも関わらず、新メニューが全く関係ない焼きそばとなると、顧客は「結局このキッチンカーはクレープなのか、焼きそばなのか」と迷うようになります。
顧客は迷った時、考え決断すること自体に体力がいるため、無意識的に最も楽な選択である「離脱」に流れる可能性が非常に高いです。
だからこそ、ブランドの禁忌を決めておくことは、今後ブランディング戦略やブランド戦略を練る上で矛盾を防ぎ、顧客の迷いや離脱を防ぐメリットがあるのです。
ブランド形成し、一度確固たる基盤を作り上げ、そのブランドめがけてやってきてくれる顧客へと育てていくことで、根強いファン形成になるのです。
ブランディングは顧客を獲得し、ファンへと育てていくための基盤作りでもあります。
基盤作りは、昨日やったから今日結果が出るのではなく、継続して少しずつ結果が出始めます。
それまでの間、一貫性を保ちながら継続する必要があるのです。
ブランディングの維持に生じる不安
ブランド形成時、つまり、ブランディングでの最も大きな敵とは、湧き起こる「自身の決定への不安」です。
ブランディングで必要なのは「結果が出るまで耐え、結果が出るように改善し、継続すること」だと先ほどお伝えしました。
結果が出るまで、一貫性を守りながら結果がどうすれば出るのかを常に考え、試行錯誤しながら継続する、イテレーションの考え方が重要です。
勘違いが多いのが、
・努力したら成功する
・頑張れば結果は出る
・継続さえしていれば結果が出る
といった考えですが、これらは全く違います。
努力したから、頑張ったから、維持したから結果が出るのではなく、どうすれば結果が出るのかを常に考え、試行錯誤を繰り返し、結果が出るように戦略を立てて行動に移していくからこそ、ようやく結果が出るのです。
野球のバットをただ闇雲に振り回し続けても、そもそも打つ時にボールにさえ届いていなければ当たることはないのです。
なぜさっきの球は当たらなかったのか、どうしたら当たるのかと考えながら振っていれば、徐々に成功確率が高まり、やがて当たります。
これと同じように、結果を出せるような方法を常日頃考え、試行錯誤を繰り返し続けることこそが大切なのです。そして、ボールがバットに当たった時、なぜ当たったのか、何が成功要因と考えられるのかなどを考えることも同じく大切です。
キッチンカーで言うなら、どんな戦略を立てたのか、成功をさらに分析して、良かったところへと方向を修正していけば必ず次も当てることができ、成功の循環を生み出すことができるのです。
ここで大切なのが、結果が出るまでの間、愚直に継続することです。
さらに顧客視点を加え、この戦略は「このブランドらしい行動」なのかを考える必要があります。メガ盛りクレープのキッチンカーで焼きそばを新メニューとして出してもいいのかと考えた時、顧客視点を活かします。
顧客視点から見た時、まさにこのブランドらしいことをしているのか、それともブランドに矛盾が生じてしまうのかが判断できます。
顧客視点から見た時、一言で「~のキッチンカー」と言えることが、ブランディングとしては最低限必要なことなのです。
※例えば、「ここは、メガ盛りクレープのキッチンカー」といったように。
このように、顧客視点を活かして揺るがない一貫性のある強いブランドへと成長させていくことが求められます。この時、本当に自分が正しいのかと不安が生じますが、ここに先ほどの禁忌と、顧客視点を用いることで、二重の根拠を持つことができるのです。
より多くの顧客が喜ぶことを追求し、顧客視点を適切に持っていれば、かえって自身が迷った時に道を示してくれるものでもあります。
だからこそ、顧客視点は自分の考えではなく、客観的なデータを持つ必要性があるのです。
ブランディングに顧客視点を活かすには、顧客視点を正しく持つ必要がある
ブランディングに顧客視点を活かすためには、より客観的な顧客視点を持つ必要があります。
ここで絶対に間違えてはいけないのが、「自分だったらこうするからニーズがある」という考え方です。
例えば、「このクレープは自分が顧客なら食べたいから、イベントで見かけたら直行するに違いない」と考え、顧客も同様に提供予定のクレープ目掛けてきてくれると考えるのは非常に危険です。
これは、実は多くの人が知らない間に陥ってしまっている、「顧客満足のない、自身の満足だけを追う」という行動でもあります。
自分のやりたいことや夢が大きくはっきりしているほど、顧客のニーズを生み出してしまい、より自分が満足できる状況へと認識を歪めて進めてしまうことがあるのです。
顧客視点が自分視点にならないためには、適切な顧客視点を持つことが大切です。
その顧客視点を得るために必要なのが、リサーチです。
同時に、ここで忘れてはいけないのが、顧客満足度です。
顧客満足度が高いと、再購入率が高まり、ファン化を起こす可能性を高めることができます。
このように、1点のみから顧客視点を持つのではなく、あくまでリサーチや顧客満足などの多角的な視点を持つことによって、バイアスを取り除き、適切な顧客視点を持つことができます。
多角的視点は、今、自身が構築しようとしているブランドや製品に本当のニーズがあるのかを把握することに繋がり、より正しい認識を得るために必要なのです。
適切な顧客視点を持てることは、キッチンカー事業での売上や事業継続に直結するため、外せません。
多角的に見ることでブランディングは適切に機能できる
ブランディングをする上で、顧客行動全体を見ることは重要です。
顧客行動全体に対して、自分がどのようなタッチポイントを作り、ブランドを運営していくのかを考える必要があります。
そうして、イベント出店以外の戦略を立てることも大切です。
自身の負担を極力減らしながら、より早く提供できるように開発されたメニューを開発することも大切です。
このように、キッチンカー事業では、ありとあらゆる知識が必要となり、様々な観点から多角的に見て戦略を練る必要があります。
それは、キッチンカー事業主が小さな経営者であり、経営者は時に主観的に、時に客観的に状況や方針を見て戦略を練る必要があるため、結果として多角的な視点を求められるからでもあります。
僕達FIVE DESIGNSでは、サービスデザインの考え方や方法を活かし、マーケティング、ブランディング、マネジメントなど、多角的に見て今後の戦略を立てることで、キッチンカー事業主が開業したり、飲食店経営に繋げるフォローをしたりしています。
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