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【照寿司】「何者でもない自分」から「世界一有名な寿司屋」へ。苦節を経て今に至る大将の話

「戸畑から世界へ」「世界に呼ばれる寿司屋」などなど、近年の照寿司さんの世界を股に掛けた活躍ぶりは有名です。それも東京など大都会にある寿司屋ではなく、北九州市の戸畑という町の寿司屋なのです。

「照寿司」が所有するビル 

ちょっと怖い顔をして鮨を手渡しする大将、渡邉貴義氏の決めポーズも、他の寿司屋で真似する職人さえいるほど知られるものとなりました。

今やニューヨークやドバイ、ヨーロッパでもお呼びがかかる人気者で、自分は「世界一有名な寿司屋」だと大将は自信に満ち溢れています。

それが、7~8年前までは900円位の寿司セットを売っていた時代もあったという「照寿司」。小さな町の寿司屋の三代目として「何者でもない自分」にコンプレックスを持ち続けてきた苦節の時代があったのです。「オヤジに負けたくない」一心で新しいことを考えてきたそう。自分と照寿司が売れるように、そこから脱却していくための努力は並大抵のことではなかったはず。


お店が変わる発端は、それまで考えもしなかったネタの仕入れ先で、たまたま立ち寄った地元の「梅吉丸」という魚屋さんとの出会いでした。豊前海や大分の魚を仕入れていて、驚くほど新鮮で素晴らしいものだったそうです。最初は利益度外視で、良いネタを仕入れて使い続けていくうちに、評判がよくなっていったのです。ミシュランでも名前が載って、Facebookでも広まっていったとか。

ニューヨークタイムズに載った時の記事と一緒に。
これは撮影用のかっこいい包丁(笑)

今では昼も夜も38500円のコース1本ですが、東京などからはるばる来てくれるゲストがほとんどという人気ぶり。

大将は都会の名店などで修業することなく、このお店だけで自分で勉強を重ねてやってきたことで、むしろ伝統に縛られず好きなことをするようになったのです。そうして作り込んだ「照寿司」のショーをオペラと称して日々演じ続けているのです。

大将の約束事は「皆さんをお腹をいっぱいにすること」そして「スマホの画像を私で満タンにすること(笑)」だそうです。確かに料理は品数も量もかなりたくさん出て、予想していたものの私は途中でいくつかパスしたほど。

ひと口では厳しいくらい大きい!
1番美味しかったマグロと雲丹とキャビアの前菜


食材も豪華で雲丹やキャビアが最初からどんどん出ます。合わせるものが濃厚すぎて、一つ一つの美味しさがわかりにくくなってしまう気もしました。でもネタの良さ、その出し方はさすがに抜群のオリジナリティがあります。

味付けも美味しいものの中に何品かは私には濃すぎるものも多かったです。煮ダコも塩分が強すぎて、一緒に付け合わせた雲丹の味がしないほど。それぞれは美味しく良いネタなので、取り合わせを替えればよかったかもしれません。

大将は自分愛が強く自分が今いかに有名かのアピールのため宣伝文句が多いというのも印象的。ゲストがお店にいる間中それが続くので、高いお金を出して大将を褒め称えに来たのか、とちょっと鼻に付く人もいるかもしれません。でも考えてみれば、大将はここまで来れたことが本当に嬉しいんだ!と思い至りました。

そもそもビッグマウスと呼ばれるほど大口をたたくのも、「実は繊細でビビリ」だから、自分にプレッシャーをかけるためなんだそうです。

行ってみてわかりました。大将はカウンターの隅々まで常に気を配り、お客さんの反応をすごく気にしていることも。家族でさらっと漏らした会話にも聞き耳を立てて参加してくるとは、半端な気配りではありません

最後には大将と照寿司に不思議な親近感が沸いてきて、応援する気持ちの私がいました。



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