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12月31日(日):書籍「疲労とはなにか」からの整理③

このところは12月に発売したばかりの書籍「疲労とはなにか(近藤一博著)」を取り上げながら、本書からの学びを自社の事業領域(フィットネスクラブ運営)に沿って整理を進めているところです。

一昨日は前提となる「疲労感」と「疲労」の違いに触れ、疲労の程度は「HHV-6(ヒトヘルペスウイルス6)」によって測定できること、そのうえで疲労は「生理的疲労」と「病的疲労」の2種類に区分されることを記しました。

次いで昨日は生理的疲労が体内の抹消の組織(臓器や筋肉)で炎症が生じた時に細胞から分泌される「炎症性サイトカイン」が、血液脳関門の隙間を通り抜けたり、神経を通ったりして脳内に入ることで疲労を感じます。

この炎症性サイトカインは統合的ストレス応答(ISR)によって産生され、それを引き起こすのがeIF2αのリン酸化であることまで説明を進めてきました。

これら生理的疲労の原因とそのプロセスを整理したうえで、次に出てくる問いが「生理的疲労を回復するには?」という本日の内容です。

私たちフィットネスクラブに直結する部分の結論からいえば適度な運動による疲労が生理的疲労の回復のポイントに挙げられています。

ここからは少し掘り下げた話になりますが、昨日までに記してきたように疲労の原因はISRと呼ばれるストレス応答であり、それを引き起こすのがeIF2αのリン酸化なので、このリン酸化したeIF2αからリン酸を取って脱リン酸化していくことが疲労回復となります。

脱リン酸化を担うのはリン酸化eIF2α脱リン酸化酵素で、この酵素が多いほど生理的疲労から回復する力が強くなり、リン酸化eIF2α脱リン酸化酵素の産生を誘導するのが疲労です。

疲労の原因を辿っていくとeIF2αのリン酸化に行き着くのに、疲労回復としてeIF2αの脱リン酸化をするには疲労をしないといけない、ということになるとメビウスの輪のような無限ループに陥った感覚になりますが、大事なのは疲労と疲労回復のバランスのようです。

そして疲労の回復力を測る指数として書籍内では以下の式で定義をされていました。

疲労回復指数=脱リン酸化の量(GADD34またはCReP)÷リン酸化の量(ATF3)

なお脱リン酸化の定量的な測定としては「GADD34」や「CReP」といった物質があり、リン酸化も「ATF3」の産生量を測定して比率を算出することで、疲労回復力の指標になるのだといいます。

ここでは事柄の整理のために割愛していますが、書籍内ではこれらについても詳しく説明がなされているので、詳細については是非とも書籍を手にとってもらえればと思います。

この疲労回復力について書籍内では被験者に軽い運動を1~3ヶ月ほど続けてもらったあとに疲労回復指標を測定した調査結果が掲載されていましたが、
軽い運動を継続したグループでは疲労回復力が増強された結果が出ていました。

それらの結果により、軽い運動は疲労感を減少させるのではなく、疲労回復力を高めることで生理的疲労そのものを減少させることに寄与しているとの結論です。

こうした研究、考察をふまえると改めて継続的な運動習慣を持つ必要性が、より多面的に意味づけができるようになると思います。

体力要素は「行動体力」と「防衛体力」の2つに区分され、継続的な運動が行動体力(筋力、柔軟性、持久力など)を向上させることはもちろんのこと、防衛体力への影響も非常に大きなものがあります。

人間には外部環境が変化しても内部環境を常に一定に維持しようとする恒常(ホメオスタシス)や外界からの刺激に対してしなやかに適応する適応性、いろいろな病原菌に対する免疫力などが備わっており、これらが防衛体力にあたります。

仕事や運動といった生理的ストレスに対する自動調整能力としての疲労回復力を高めるのは、この防衛体力の向上にほかなりません。

疲れにくい身体であることは、やりたいことが心おきなくできる身体とも言えるので、私たちフィットネス事業者としては年齢を重ねた先でも活力ある状態を保つために定期的な運動習慣を形成していくことの意義を伝え続けていければと思っています。

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