9月14日(木):「仕掛学」と「ナッジ」の違い
昨日は食品スーパー大手のサミットが開催している「サミットカップ2023」から派生して楽しさを盛り込んで多くの人を巻き込む「EX(エンターテイメントトランスフォーメーション)」、さらには大阪大学大学院教授である松村さんの「仕掛学」の話に及びました。
ここでいうところの仕掛けとは人々が普段なら選択しない行動を魅力的に見せ、行動をそそることで問題解決につなげるアプローチで、そのために必要な事柄は「FAD要件」としての「公平性」「誘因性」「目的の二重性」であることまで説明したと思います。
本日はこの続きをもう少しばかり。
書籍「仕掛学」によれば仕掛けは「行動の選択肢を増やすもの」で、あくまでも行動の選択肢を増やすだけで行動を強要するものではないとしています。
目指しているのは仕掛けによって行動を変えた結果、本人の意図にかかわらず問題が解決される状態です。
その意味でいえば、結果への「直接的」なアプローチではなく、行動を変えるデザインを通じて問題解決につなげる「間接的」なアプローチといえますね。
具体例としてエスカレーターではなく健康のために階段を登ってもらうため、階段にピアノの鍵盤のような白と黒のデザインを施し、なおかつセンサーによって音がでる仕掛けにしたところ、階段の利用者が大きく増えた事例がありました。
また「世界一深いゴミ箱」と称して、ゴミを投函してから底に着くまでの音に時間差を設けたユーモラスな仕掛けでは、それを面白がって一般的なゴミ箱よりも収集量が大幅に増え、周囲のゴミが減った事例など様々なケースが紹介されていました。
「正しさ」を「楽しさ」に変えると、それまで価値を感じていなかった人にも届く可能性が出てくるEXと同様、「頭ではわかっているけど・・・」という正論では行動に移しにくい分野ほど、仕掛学がそれに対処するための代替的アプローチになりえることがわかります。
関連して人の行動を変える類似したアプローチのひとつとして「ナッジ」が挙げられます。
そことの違いとしては以下のように定義がなされています。
・「ナッジ」はあまり考えずに選ばれる「いつもの行動(デフォルトの選択肢)の設計方法」
・「仕掛学」はつい選びたくなる「もう一つの行動(オルタナティブな選択肢)の設計方法」
このような説明を読むと、そのニュアンスとアプローチの違いに対する理解が深まりますね。
そのうえで同書では120事例を調べたところ、「仕掛けの構成要素」は大分類2種類、中分類4種類、小分類16種類の原理の組み合わせで全ての仕掛けを説明できるとしています。
そのあたりの詳細は、また明日に続ける予定です。